腕輪

 解放された牛河さんは、お風呂を借りる事となった。

 正直、拘束を解いていいのか分からないが、ミサキさんが「いいんじゃない?」と言うので、ボクは彼女を解放した。


 牛河さんがシャワーを浴びている間、ボクはリビングにミサキさんと二人きり。


「はい。これ、つけておいて」

「なんです、これ?」


 一度、部屋に行き、戻ってきたミサキさんは手に何かを持っていた。

 差し出されたのは、腕輪。

 太めのベルトで、内側には金属板が仕込まれていた。


「つけて」


 言われるがままに腕にハメると、「テストね」と、ミサキさんが何やらリモコンを取り出し、スイッチを押す。


 ――バチンっ。


「い、った!」


 腕の中から破裂音が聞こえ、腕を通して肩にまで電流が走った。

 いきなりのことで、びっくりしたボクは思わず腕輪を外そうとする。


「ちょっと。外さないでよ」

「だって、これ、電気が流れるじゃないですか」

「水野くんのために買ったのよ。それ海外でしか売ってないから。パパに頼んで送ってもらったの」


 海外って、……なんか、危険な香りしかしない。

 クラスメートにも、海外旅行や出張で親が仕事で行っている、という人はいる。小耳に挟んだ程度だが、聞くところによると、変な土産を買ってくることが多いようだ。


「何のために?」

「あいつが暴れたら、あたし水野くんをイジメ抜くから」

「……ど、どうして、ボクを」


 口角を吊り上げ、ミサキさんは笑う。


「あいつ、……水野くんが大事みたいだし」


 邪悪な笑みだった。

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