支配

 目隠しをされて、ボクは窓際に立たされた。


「この汚いものを見せてやりなさい」


 耳元で囁かれながら、ミサキさんの手がボクの体を這い回る。

 局部を撫でられ、胸の周りには爪を立てられる。

 小さなミミズが胸の周りにいるみたいで、くすぐったかった。


「あの、何を……」

「別に。イジメてるだけ」

「イジメてるって」


 後ろからミサキさんに抱きしめられる形となったボクは、柔らかい指先で局部を弄ばれる。


 耳のすぐ傍からは、意地の悪い笑みが聞こえてくる。

 まるでミサキさんに暗闇の中で支配されているみたいだった。


「ん……っ、ぐ」

「気持ち悪い声出さないで」

「で、でも、……その」


 デリケートな部分をしつこく揉まれ、体が反応をしてしまう。

 首筋には吐息が当たり、背中には大きくて柔らかい感触が当たっていた。


 ミサキさんの匂いがボクを包み込み、優しく支配される感覚が変な安心感を与えてくる。


「水野くんって変態なのね」

「そんな……」

「女から一方的に責められて興奮してるじゃない。ほら。ここ」


 ぐりぃっ。

 強めに握られ、ボクは口を押さえた。


「ふ、っ」

「あはっ。なに、その声」

「……や、何でも、……な――」


 ぐり、ぐりぃっ。


 乱暴に揉まれながら、ミサキさんが耳元で囁く。


「揃いも揃って変態ね。でも、滑稽な人間を見るのは好きよ。面白いもの」


 ミサキさんには、何が見えているんだろう。

 誰かに見せつけるようにして、ボクの体を弄り続けた。


 ふと、首筋に生温かい感触が当たった。


「んぇ……ぇ……」


 滑りのある、ざらついた感触だ。

 湿った息が直に当てられ、局部に熱が溜まり、ボクの膝は震えて立っていられなくなる。


「変態」

「ち、ちが……」

「変態。ぇぇ……っ……む……ちる……っ」

「くっ。ミサキさん、や、やめて」

「やめないわよ。無様な姿をさらけ出しなさい」


 首筋に伝うざらついた感触は、他の部位の刺激に加わり、確実にボクを甘く支配していた。少しでも力を抜けば、すぐに心地の良い感覚に呑まれて、膝を折ってしまう。


「あらら。座ったらダメじゃない」

「ご、ごめんなさい」


 でも、ミサキさんは刺激を与え続けてくる。

 ふと、唇に柔らかい感触が当たった。

 柔肉がボクの口を咀嚼し、滑りのある何かが入ってくる。


「ん……」


 初めての感触だった。

 局部を乱暴に揉まれて痛いはずなのに、口の中は水音を立てて撫でまわしてくる。耳の裏も指で撫でられて、気が付けば全身から力が抜けていた。


「あーあ。唇奪っちゃったわ。ふふ」


 ボクは支配された。

 あっという間にミサキさんの与える刺激に逆らえなくなった。

 今のミサキさんは、いつもと違って優しい気がする。


 つい、自分から口をパクつかせると、ミサキさんが頭を撫でて、またボクの口を食べてくれる。


 言葉にできない幸せが、そこにはあった。

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