第7話 レベル1も悪くない

 木剣は毎日借りて返す。なので、今日は木剣を借りずにきた。


 昨日の経験値は元に戻しているので、木剣はレベル1から元の状態に戻っている。


 さて、早速新しい武器――――短剣を懐から取り出した。


 街では無暗に振り回さないでしまっておけば怒られないが、まだ僕達Fクラスは木剣しか許されていない。


 一応入る時、先生に許可を取っているので問題ないが。


 早速短剣に経験値を入れてレベルを上げよう。


《武器【エンシェントダガー】を進化させるためには、経験値があと99,900足りません。》


 …………は?


 いやいやいやいや、待ってくれ。昨日は木剣に経験値100を入れたら上がっただろ!


 もう一度試してみる。


《武器【エンシェントダガー】を進化させるためには、経験値があと99,900足りません。》


 …………まさか!


《防具【宮ノ前制服】を進化させるためには、経験値があと9,900足りません。》


 あぁ……そういう……ことか。


 装備品にはきっと【レアリティ】が決められているんだ。


 そのレアリティによって進化レベルアップするのに必要な経験値量が違うんだ。


 木剣は最弱武器だからこそ、最初は経験値100で上げられたけど、他の装備はもっともっと必要なんだ。


 これでどんな装備でも最初のレベルを上げるのに必要な経験値が100ではないことが分かった。


 正直、こんなことになるとは思わなかったけど、早い段階で知ることができて良かった。


 急いで先生の下に行き、木剣をまた借りてきた。


 ジト目をした先生は「もし必要ならずっと借りてていいぞ……?」と言ってくれたので、そのまま暫く借りることにした。


 木剣に経験値100を付与して【木剣Lv.1】にレベルアップさせる。


 ブルースライムをどんどん倒して経験値を貯めていく。


 木剣の必要経験値量は、各レベル経験値100で上がるようだ。


 それから急いでブルースライムを五十体倒した。


 一撃で倒せるので、走りながら斬りつけるだけで倒せたので、走り回るのが大変なだけだった。


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 【木剣Lv.3】

 カテゴリー:武器

 攻撃力+100

 Lv1:攻撃力+49

 Lv3:攻撃力+50

 Lv5:サイズ自由変更

 Lv7:腕力+30、俊敏+30

 Lv9:攻撃力+100

 Lv10:強制ノックバック

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 木剣のレベルが3になり、さらに倍増した。


 以前にも言った通り、魔物に与えるダメージは武器の強さとスキルによる。


 ステータスにある【腕力】はダメージには関係なく、持つために必要な腕力を越えていればいいだけだ。


 まあ、多少叩きつけた時の力は違うので腕力が高いことに越したことはない。素手で殴った時は腕力だけがものをいうしな。


 このまま少し強い魔物に向かいたかったが、ここは一つ経験値稼ぎを繰り返した。


 授業の終わる時間ギリギリのところで木剣のレベルが5になった。


「お疲れ! 今日で最初の一週間は終わりだ。土日はゆっくり休んだり、メンバーで話し合ってダンジョンに潜っても構わないが、その場合は深くはいかないように。命を大事だと思うならな」


「「「「はい! お疲れ様でした!」」」」


 挨拶をして家に帰る。


 木剣は長い専用ケースに入れるように言われ、借りたケースの中に入れたが、すぐに取り出した。


 というのも、レベル5になったおかげで、大きさを自由自在に変えられるらしいので、小さく変えてみた。


 それを内ポケットに入れて持って帰った。


 姉さんは毎日帰ってくるわけではないので、今日も帰ってこなかった。


 ◆


 高校生になって初めての週末。


 朝食を食べ終えてから、早速家を出る。


 向かうのは当然――――ダンジョンだ。


 ちょっと反則だけど、僕が使える装備を全て借りてきた。


 それを使って経験値をガンガン稼いで、装備を強化しようと思う。


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【装備】

 右 手:木剣Lv.5

    (攻撃力+100、サイズ自由変更)

 左 手:

 頭 部:

 胴 体:宮ノ前制服

    (防御力+200)

 脚 部:宮ノ前制服靴

    (身軽さ10%)

 装飾品:怪力の腕輪

    (腕力+30、攻撃力+10)

 装飾品:隼の腕輪

    (俊敏+20、身軽さ10%)

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 怪力の腕輪があれば、腕力が上昇するので、その分重い武器を持つことができる。が、今はそれが目的じゃない。攻撃力を少しでも上げたいからだ。


 昨日探索者の本で読んだ感じだと、どうやら腕力も多少は攻撃力に関与しているらしい。ダイレクトではないが、10ごとに攻撃力+1とかそういう低い数値の上昇だが、今の僕にはその1でも重要だ。


 次に相手するのは、アッシュラット。ブルースライムより一回り大きくて、全長七十センチくらいある巨大なネズミの魔物だ。


 すばしっこい上に、大きな前歯に噛まれると非常に危険だ。


 探索者の最初の壁とも言われている。


 僕に向かって走ってきたアッシュラットを隣に避けながら木剣を叩きつける。


 バーンと大きな音を響かせて、アッシュラットがその場でぐったりして倒れた。が、経験値獲得の表示は出ない。なので、もう一度叩き付けると、びくびくと動いたアッシュラットが倒れた。


《経験値6を獲得しました。》


 うん。予想通りだ。


 それから僕は全力でアッシュラットを狩り続けた。




 探索者が基本四人で組むのには理由がある。


 魔物を倒した時に得られる経験値は、パーティーメンバーで完全分割・・・・獲得となる。


 ブルースライムの本来の経験値は【4】だ。それを四人パーティーで倒した時にそれぞれメンバーが得られる経験値は四分の一の【1】になる。


 人数が少なければ少ない程、一人が獲得できる量は増える。が、戦うのは大変になるという仕組みだ。


 ではわざわざ強い魔物を倒すより、一人でずっとブルースライムを倒し続けた方が得なのでは? と思われるかも知れないけど、それにも事情がある。


 それが【レベル差による経験値獲得量軽減】が存在するからだ。


 簡単に説明すると、


 魔物のレベル10で経験値10だと仮定した場合。


 ①レベル10で経験値10獲得。


 ②レベル11で経験値5獲得。


 ③レベル12で経験値1獲得。(これは十分の一ではなく、強制的に1になる)


 ④レベル13以上で経験値獲得できず。


 つまり、ブルースライムのレベル1だから、自身のレベルが4以上になるとそもそも経験値を得られなくなる。


 その上で、四人パーティーでの狩りだと、そもそも【1】しか獲得できないので、この場合、レベル2になった時点で経験値を獲得できなくなるのだ。


 ということもあるので、最終的には魔物のレベルより3以上高い場合は、もうレベルアップは不可能になる。


 そんなレベルによるデメリットがある中、僕には逆に朗報がある。


 それが――――逆の場合だ。


 魔物のレベル10で経験値10だと仮定した場合。


 ①自分のレベルが9で経験値15獲得。


 ②自分のレベルが8で経験値20獲得。


 つまり、レベルが1低くなるにつれて、経験値が1.5倍ずつ増えていく計算だ。


 レベル10も違うと五倍になる。厳密には基礎値があるから六倍になる。

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