忠義の再会

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 シオー・ヒザキ


 使用可能魔法

 【氷魔法】・Lv5


 異能

 【死の祝福】  総数 1474

  1.命を奪った生物の総数に応じて、権能開放。 374/2000

  

  権能 Lv1 痛覚麻痺 100/100

     Lv2 恐怖克服 1000/1000

 

  2.命を失った友好的な存在の総数に応じて、異能習得。 0/1


 称号

 【屍王】

  神によってその偉業を認められた証。

  魔法成長率に絶大補正。


――――――――――――――


 やっぱり死の祝福の効果は前と全く大差ない。


 まず、100の命を奪った。

 すると次に要求されるのは1000の命。

 そして次は2000。


 俺の足下に積み上がっていく屍の山が、俺を高みに押し上げる。


 前もそうだった。

 悪魔と相対する時に必ず足枷になる痛みと恐怖。それを順に排斥され、いつしか悪魔と対することに慣れていく。


 殺して、殺して、殺して……。


「やめだ……思い出しても意味ねえし」


 パキパキと音を立てる地面を踏みしめながら凍った森を歩く。


 俺の後ろに続く気配を伴いながら、グリフィル樹海最大の大樹の陰で立ち止まる。


「あー……もう出てきていいよ」


 小さな声の囁きは、森に反響することなく積もった雪に吸収される。

 返事はない。

 いや、いるのわかってるって……。


「二人とも出てきてよ……わかってるから」


 またしても返事はない。

 あー、嫌だ! 本当に嫌だ!

 やりたくない。口にしたくない。

 よくもまあ昔の俺はこんな恥ずかしいことノリノリでやってたよ!


 てか君たちも君たちだよ! 恥ずかしくない!?

 恥ずかしくないんだろうな……はあ。



「あぁ……―――――なれら、我が前に誓う戒律を」


「『不妄』」


「『不殺』」


「……ニヴル、ガルム。元気そうで良かったよ」


 大樹の影に紛れるような灰色に身を包んだ二人は、涙ぐんでこっちを見ている。


 白銀の長髪に薄い虹彩、身体を包むオーバーサイズのローブにあっても起伏の富んだスタイル。立ち姿に気品を感じる彼女は、ヘルヘイムの頭脳、ニヴル。


 快活さを窺わせる赤毛と同色の瞳に似合わない泣き顔で、今にも飛び掛かってきそうな小柄な彼女は、一番槍、ガルム。


 二人は決して俺の前には出ようとせず、影に潜みながらその場に膝を付いた。


「し……屍王……なのですよね……っ?」


「ああ」


「お、王……?」


「……そうだよ」


 できればその呼び方はしないで欲しいけど……今ぐらいいいか。

 長い間信じていてくれた部下たちに水を差すのは、何が何でも酷だろう。


 待っててくれた分は、屍王として。


 

「待たせた。屍王はここに――――帰還した」


「…………っ……おかえりなさいませ」


「ぜ、全然待ってないよっ……おかえり、王っ……」


 こっちに伸びるニヴルの手に握られてるのは、二人と同じ灰の外套。

 着ろって? 

 …………わかったよ……正直今でもカッコいいと思ってますよ。


 外套に袖を通し、深めにフードを被る。

 うわぁ、異世界でしかできないなこの格好。

 しっくりくる自分が、本当にもうどうしようもないな……。

 このわざとボロボロにした感じが最高に厨二だ。


 まあでも……やっぱ悪くないんだよなぁ……。


 口調を軽めに戻し、二人に付いて来るように合図を後ろ手で出す。


「じゃ、行こう。俺達の名前を騙ってるやつがいるらしいんだ。――――全部、潰そう」


『――――すべて、我が王の御心に』


「ぐふっ……ぉぉぉぉぉああああ……いってぇぇぇ……それだけはマジで止めてっ! 死んじゃうからっ!」


 不思議そうな目を向けてくる二人の前で、俺はやっぱり悶えることになった。


 二人が悪いわけじゃない、全部俺が悪い……。

 

 全員集まった時、俺死ぬんじゃないかな……ほんとに。


 目を輝かせながら付いて来る二人にいたたまれなくなり、俺はため息を隠した。







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