第38話 田代家とヤン更に今野家の関係


 


 段々見えてくる真実。


 祖父田代卓院長とリンランの息子で双子の片割れ大は、今野家と養子縁組してもらい幸せに暮らしていた。そしてリンランの息子大は、大学時代からの知り合いと結婚して栄治が誕生した。


 だから、リンランと中野の息子ヂ―ミンがヤンの父で、リンランと田代卓の息子が栄治の父大になる、父同士が異父兄弟と言うことになるので、ヤンと栄治はいとこと言うことになる。


 なんという運命の巡り合わせなのか、それとも…偶然のいたずらなのか、血の繋がりのある亡くなった田代理事長の妹夫婦の養子になった栄治。


 過去の詳しい話は全く知らなかった栄治は、まさか田代総合病院の血を引いているとは、栄治自身も全く知らなかった。


 一方の…ヤンは、この田代総合病院の長男隼人と親友である。そして、田代総合病院で田代家の血を引く栄治と一緒に働く事になった。




 やがて祖母リンランの死の全てを知り、2人が共謀して医師資格の無い直系の長男隼人を、長谷川と共謀して追い出しにかかるのは至極当然の事。


 だが、栄治の父大は祖父卓と祖母リンランの双子の片割れで、隼人の父克也と双子の片割れ大和は異母兄弟で、祖父卓と幸子の血が流れている事になる。だから、栄治と隼人は親戚になる。



 そして…問題なのは、実は、母菜々枝はお嬢様育ちで非常におっとりした女性だったが、父親大和?が心臓と肝臓に障害が有り祖父の院長卓が息子可愛いさに臓器移植を行っていたのだが、創設者の院長は、まだあの時代臓器移植は成功例が非常に少なかった。


 ましてや、経験の浅い院長が息子大和可愛いさに、見境なく誰の臓器なのか分からず闇組織から臓器提供してもらっていた。だから…成功するまで何回も行われていたらしい。誰の臓器か分かったものではない。


 臓器は提供者に似てくると言われている。菜々枝は一見おしとやかなおっとりしたお嬢様に映るが、恐ろしい裏の顔が有った。

 

 大和は克也と菜々枝兄妹と20歳近くの年齢差がある事から、年齢的に大和は克也と菜々枝の父と思われがちだが、異母兄妹だった。


 だから、臓器移植手術を受けた大和の遺伝子は菜々枝には受け継がれる事などない。これはひょっとして…北病棟に必要以上にこっそり出入りした結果、菜々枝に異常性が引き起こされているのかも知れない。


 それはそれは恐ろしい病棟。


「嗚呼…ああ…アア…アアアア人を殺したい!嗚呼我慢出来ない!」



 🔶🔷🔶

 大和と克也それに菜々枝の異母兄妹はとても仲良しだった。だが、異母幸子によって兄妹は抜き差しならぬ関係になった。


 義母幸子も院長卓の妻になるまでは、大和を、それはそれは大切に扱っていたが、念願叶って院長夫人になれた途端に豹変してしまった。だが、一見大切にしているように映っていたが、実はその裏では恐ろしい事が?

 

 あの時代は看護師が医者と結婚出来る確率は現在の比ではなかった。ましてや、院長夫人になれるなど夢のまた夢。愛人として田代院長に尽くしていた幸子には克也と菜々枝が相次いで誕生した。こうしてやっと結婚する事が出来た。


 大和は心臓と肝臓に欠陥は有ったが、リンランゆずりの美形で、更には父卓に似て頭脳明晰。


 例え障害が有ろうが、自分の子供より遥かに優秀で、幸子もよく知っている美しいリンランに生き写しの大和が気に食わない。どれだけリンランとの愛の駆け引きに利用されたことか、例えば、リンランの自宅に電話をさせられ中野が出たら友達のふりをさせられ、リンランを呼び出すように支持を出されたり、出会いのマッチングをセッティングさせられたり、その挙げ句まるで欲望の処理をするだけの為に、愛情もないクセして、リンランには手を出さず、性処理はもっぱら幸子で済ませる徹底ぶり。同じ女でもこの扱いの違いに、憤りを通り越して諦めと惨めさで一層リンランを嫌いになった。


 幸子は院長がリンランを心から愛していた事は痛いほど理解していた。そんな中野の妻だと分かっていながら、恋の片棒を担いで2人のキュ―ピット役も買って出ていた幸子。


 それもこれも…いつか中野にバレて恋が壊れた時には、自分に気持ちが傾く時が来るに違いない。そう思えるから出来た事。


 それでも田代院長の気持ちは益々リンランに傾き、のめり込み…自分の入り込む余地など微塵もなくなった。


 そこで思い余って、中野に田代院長とリンランの噂を流したのは誰あろう、この幸子だった。


 そして…やっと田代を自分のものに出来たのも束の間、卓の大和を見る目が異常だと気付いた。それこそホモじゃないのか?と思うほどの熱い眼差しに、一気に大和が憎くなってしまった幸子だった。それだけ、今尚リンランが忘れられないという事だ。



 🔷🔶🔷


 隼人の父元理事長克也と妹菜々枝の父と目されていた臓器移植を先々々代院長田代卓から施されていた大和は実は克也と菜々枝の異母兄だった。


 先々々代卓院長、先々代大和院長、先代克也理事長兼院長、現理事長隼人、現院長長谷川。


 それでは何故双子の片割れ大和は、父親と言われていたのか?


 実は異母兄大和が、父卓の後を継ぐべく副院長として田代総合病院で手腕を奮っていたが、幸子がそれを許さなかった。理事長に卓が就き、いっとき院長となった大和だったが、息子克也可愛いさに大和を追い払った幸子。

 

 幸子の腹の中は我が息子と娘にこの病院をなんとしても継がせたい。一方の異母兄妹達は、母幸子の思惑とは全く別で非常に仲良しだった。


 20歳近くも年の離れた兄妹だったが、非常に仲良し兄妹で、母があんな母なので大和を小さなパパ(チイパパ)と慕ってくっついて歩いていた克也と菜々枝だった。


 母で看護師長幸子によってきちがいに仕立て上げられ、殺人鬼の汚名を着せられ監禁されてしまった大和。それは、母幸子のリンランに対する嫉妬心が生み出した結果だった。


 こうして恐ろしい事態に発展していった。


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