第17話 姉さん
裕翔とは高校に入って・・・口をきかなくなった。部活も同じなのに不自然だよな。
だけどさ、裕翔とはかつて親友だった。
あの日までは・・・。
三年前の夏
僕の姉が死んだ。
生まれつき心臓に疾患があって、学校へもほとんど行っていなかったから、友達はいなかった。入退院を繰り返していたから、ほとんど自室にいて、本ばかり読んでいたよね。
姉さんに会いに行くのは、家族か、裕翔くらいだったよね。
裕翔は僕と一番仲が良かったから・・・いつも家にいたからさ。
姉さんも裕翔の事も弟みたいに可愛がってくれていたよね。
姉と言っても、血は繋がっていなかった。
9歳も年齢は離れていたけど、幼い人だった。純粋だったからかな?
心がきれいな人だったよね。
父の前妻の連れ子で、前妻も同じ病気で、姉のランドセル姿も見ないまま亡くなったらしい。その人と父がどこで知り合い、どれだけ婚姻生活を共にしたかは知らない。でも短かっただろうと思う。奥さん亡くなって、母と出会って結婚するまではシングルファザーしてたって・・・全く血も繋がっていない子を引き取って・・・。お人よしなんだよ、父さんは・・・。
母さんは、そんな優しさに魅かれたなんて言っていたな・・・。
母さんもお人よしだよ。
だってさ、二人が結婚して、僕が生れて・・・でも同じように姉さんの事を家族しててさ。僕なんかしっかり騙されてたもんな。全く気が付かなかった。血の繋がりがない事なんて・・・。
あの日まで、知らなかった。僕はてっきり、年の離れた姉に、優しい姉に、神秘的にも見える姉に、リスペクトの様な気持ちを抱いていると思っていた。
もっと早くに知っていたら・・・。
血の繋がりがないって知っていたら・・・。
渡さなかった。手放さなかった。
この気持ちにしっかりと気が付けたのは、姉がいなくなってしまってからだった。遅すぎるよ。
僕は姉を愛していた。
愛実・・・愛してたよ。
僕の初恋。
会いたいよ。
会いたくて会いたくて、愛実のいる場所へ行きたくなる時があるんだ。
もしも行けたら、怒るかな?
愛実は優しいから、きっと追い返すだろうね。
全然にあわない怖い顔して・・・。
僕はきっと笑っちゃうけどね。
あっ、そうだ。
愛実に報告するよ。
僕、やっと見つけたんだ。好きになれる人。
菜穂っていうんだ。
愛実に似ていて天然で純粋で、ちょっとぼんやりしているけど、そこが可愛いんだ。菜穂を見ていると、愛実も元気だったらこんな感じだったんだろうなって・・・考えたりするんだ。
あの日、あの時、叶わなかった思いにリベンジしたい。
この恋は、諦めないよ。今度こそ後悔しない。
誓うよ。
もう、愛実のところに行くなんて考えたりしない。
だから、僕を応援してね。愛してたよ・・・姉さん。
そう言って僕は、今まで定期入れに入れていた姉さんとの笑顔の写真を机にしまって鍵をかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます