第11話 傘

今日は楽しみにしていたデートなのに、雨。どうしよう・・・二人で動物園へ行こうと思っていた。


去年の文化祭、美術部が展示していた絵画を彼女は結構な時間、見つめていた。テーマは『躍動する動物たち』。俺はそんな彼女を見ていた。

だから、きっと動物が好きなのだろうと思い、

”今回は絶対に動物園だ!!”

って決めていたのに。予定が崩れる。


天気予報、めっちゃはずれだし!スマホの週間天気予報を恨む。朝から不機嫌だった。


朝から急いでパソコンで調べる。


どうしよう・・・どうしよう・・・。時間ない。


しかたない・・・映画にしよう。

最近はやりの映画を調べた。


彼女・・・映画好きかな?ジャンルはどんなんがいいかな?

アニメ流行ってるけど、恋愛ものの方がデートっぽいかな?激し目なアクションもドキドキ感が楽しいよな・・・。

空席は結構あるし、行ってから決めるのもいいかもな。

一人でブツブツ呟きながら予定を決めた。


急がなきゃ!彼女より早くついておきたい。


慌てて支度して家を飛び出す。


「裕翔・・・朝ごはんは?」


母が呼び止めるけど、振り返らず、


「いらない。急いでるから」


すると母が、


「これ」


傘を手渡してくれた

雨、結構降ってるのに、傘も持ってなかった。慌てすぎだ、俺。母の顔を見て、


「ありがとう」


一言。母は嬉しそうに笑って手を振った。

母の過保護が重荷で距離を置いていた。最近、まともに会話してないからな・・・。いつも俺や弟の事に一生懸命で、思ってくれていることはわかるけど、この年齢になるとそれは少し迷惑にすら感じる時もある。勝手だよな・・・。あんな笑顔見せられたら、罪悪感。


そんなことを思いながら歩くと、少し落ち着いてきた。一呼吸、深く深呼吸をして、急ぎ足で歩き始めた。


駅に着く。

周りを見回すけど、まだ彼女は来ていなかった。

胸をなでおろす。


傘をたたんで、入り口付近に立つ。


数分して・・・現れた!


彼女は予想外の雰囲気をしていた。


ミニスカート・・・はくんだ。足・・・色白なことは知ってるけど、めっちゃ綺麗・・・ドキッとした。

目が合わすことが難しいくらい胸がぐっとなる。


「何かおかしいかな?」


彼女が自信なさげに言う。


「かわいい」


そう、一言。勝手に口から出てしまった言葉は、短いけども

うまい言葉なんて考えられなかった。


だって、可愛いから。


ミニスカートが単純に好きだからとかではなかった。俺のまわりにはそんな奴ばかりだから、足見せてくれても今更ドキドキするほど純ではない。

彼女が彼女らしくない、俺にだけに見せてくれたような一面がグッと来た。


「じゃ、行こうか」


そう言って、手をつないだ。

二度目。

だけど、やっぱり緊張する!

彼女は恥ずかしがりやだから、振りほどかれたら・・・と、思うと緊張が増す。


勇気を出して相合傘を申請した。

彼女はちょっと引いていたかも・・・だけど、気にしない。

二人きりの世界観に浸れるチャンス。


少し強引に彼女の左手を掴む様に引き寄せる。


母が渡してくれた父の大き目の傘。紺色の傘はまっるで二人を包む様だった。


この前より近い。胸が高鳴る。


これでちゃんと恋人らしくなった。


彼女は少し困惑していたけど、俺はn単純だから嬉しかった。

そんな気持ちん位浸っていた時だった、


「あれ?裕翔じゃない?」


聞きなれた声にふり返った。

そこには、何故か?双葉と心晴がいた。


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