第15話 開発者の事情〜開発者の一人称〜

「まず、貴方の不安を取り除くためにも、私の事情についてお伝えしますね。」


〜カテジナの事情〜

私は、貴方の知っている言葉でいうと転生者で表されます。


といってもあなたの年若い部下が気に入っている本の登場人物とは逆で、異世界からこの日本に転生しています。


私の異世界では文化人類学の学者をしていました。


ちょっと文化人類学上で国の権力者と行き違いになり、一悶着あって、命を落とすことになりました。

と言っても、私はその権力者を恨んではいないのですよ。


まぁ、この世界に転生する際に思考を操作されている可能性は否定できませんが、少なくとも現在は恨んではいません。


転生の際に、神だか何だかわかりませんが、転生執行者を名乗る者に、

別の世界に人間として転生をして、与えられた試練を達成するか、


元の世界で虫として千年間ほど転生を繰り返して贖罪を成すか、


選べと言われたら、誰でも前者を選ぶでしょう。


当然のことながら、私は、前者を選びこの日本という国に転生しました。


その私に与えられた試練は

「人を幸せにすること」でした。

試練という割には大雑把でしょう。


人それぞれ幸せの形は違いますし、何人の人を幸せにすれば良いのか全く分からない。


少なくとも、千年間、虫として生きて贖罪を続けるということと引き換えなのだから、相当に多くの人数にかなりの幸福感を与えなければならないとは思いました。


幸いにも、転生執行者の力なのか、私はある程度の年齢で、老化は止まったので、長い時の中で人の営みを見て、

「人の幸せ」

について考えました。



そこで、私はある一つの考えに行き着きました。


人の幸せとは、人に対して危害を与えるものを排除することが幸せにつながるのではないかと。


いわゆる、「人類の敵」を排除して行けば、人は安寧に暮らしていけて、最終的には、幸せに至る事が出来るという考え至りました。


では、「人類の敵」とは何でしょう。

災害?

病気?

宇宙人?

動物?

寄生虫やウイルス?


最も人に危害を与えるものは何だろう。


長い人の歴史の中でも、人に最も危害を与えるものは、そう、

「人」

だ。


人は過去に多くの戦争を行い、自分たちとは、相容れない、肌や目の色が違う、信じている神が違う、自分達が生きるために、そういった多くの、そして些細な理由で「他人」を攻撃、迫害、差別、殺害をしてきて、今もなお、その攻撃をやめようとはしていない。


私は、その行為を止めさせようと色々な手段を考えました。


人の意識を変える?

見た目を統一させる?

宗教観を変える?

そんな事をしても、人は「自分達が幸せ」と感じるのだろうか?


できるだけ、現在の状況で人の攻撃性だけを解消させる事はできないだろうか?


私は近年になり、VRや仮想空間の技術にヒントを得ました。


人の意識を取り出し、こちらが作り出した仮想空間の中で、経済的欲求や物欲や攻撃性を解消させれば良いのではないか。


現実と仮想空間を行き来きさせれば、現在持っている土地や資産を多く所持している者や現実の世界で評価を得ている者は、現状をある程度維持されて、そんなに持って

いない者は仮想空間で能力を遺憾なく発揮してもらって多くを得てもらう。

そこにはある程度の操作を違和感を与えることなく行う。

そうすれば、全てとはいかないが多くの人に幸福感を与える事ができるのではないか?


一方、仮想空間の中で危害を加えれられた人については、現実の身体や精神にはなんの損傷も与えることなく、しかし、肉体的や精神的な能力の向上などのプラス面については、現実にも干渉できるよう操作を行う。


仮想空間の中で金銭欲や物欲を満足させ、現実もその恩恵に預かれる事ができるようになれば、人は「他人」に危害を加える事がなくなるのではないかと考えたのです。

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