第5話 覚醒されたスキル

「チィース、国王さん。つまりあんたらが、俺らを誘拐したってことじゃね? それって犯罪じゃん?」


 ハルデは上から目線で言い放つ。

 態度は悪いけど当人としては最もな主張だ。


「ハルデ君の言う通りだぞ! 警察呼ぶぞ、コラァ!」


 何故か奴の腰巾着であるトックも同調し煽っている。


 マーボは「そろそろ筋トレの時間だわい」と至ってマイペースであり、コウキは「何も知らないクズめ……首ちょんぱされちまえ、ククク」とほくそ笑んでいた。


 すると両端にいた騎士達が槍を持ち、一斉に鋭利な切先をハルデとトックの喉元に向けて突き立てる。


「ちょい待てよ! う、嘘だよ~ん! 一応、言ってみたまでだよ~ん!」


「オ、オイラも同じ……盛り上がるかなってちょっと合わせてみただけだからぁ、何も考えてませ~ん!」


 ハルデとトックが怯えびびっている中、国王が手を翳すと騎士達は揃って槍を下げて元に位置に戻って行く。


「――余の部下達が失礼した。古き伝承によれば『転生』と違い、其方のような『転移』された者達は生きたまま、この世界に召喚されると記されておる。住んでいた世界の記憶と知識を宿したまま……其方らが戸惑うのも仕方ない。またこちらの都合で招いたことについては詫びもしよう」


「しかし、この世界は勇者様達の世界と表裏一体であるともされています。つまりこの世界が滅んでしまえば、貴方様達の世界とて何かしらの影響を及ぼすことでしょう」


 ヨハイン国王に続き、セラニアも捕捉の説明をしてきた。

 確かに、アイリスも同じことを言っているわ。


「そ、そういうことなら仕方ねーな! けど俺ら普通の高校生っすよ? 何したらいいっすか?」


「ハルデ君の言い通り、俺達は何も知らされてないよぉ!」


 ん? ちょっと可笑しくない?


(アイリス、あんたこの連中を導いたんでしょ? どうして私のように説明しなかったの?)


『美桜さんは特別と言ったじゃありませんか? まぁそもそも貴女と弟さんを間違えてしまった、わたしのミスからなんですが……テヘペロ』


 ムカつくフェアリーね。

 握り潰したくなるわ……妖精アバターのこいつに実体があるのか不明だけど。


 ということは私の場合、真乙と間違われて召喚されそうになったもんだから、アイリスから接触を図ってきたってことね。

 おかげである程度の知識を持って状態で、こうして戸惑わずいられるというわけだわ。

 通常は女神と接触することなく《鑑定眼》と《アイテムボックス》だけ与えられ、そのまま転移されての放置プレイってところかしら?

 真乙が読んでいるラノベよりも杜撰ね……。


「これから其方らには各々でパーティを組み、各地を占領する魔王を討伐してもらいたい。その為の五人の勇者達なのだ」


「失礼ながらヨハイン陛下。ということは、わた、いえ僕達勇者は各自バラバラで行動しても良いということですね?」


「うむ、その通りだ。魔王らがどの国を占領しているかは、準備が整え次第説明しょう」


 ラッキー!

 この脳ナシ共と組むことはないとわかっただけでも安心よ!

 初っ端から足を引っ張り兼ねない連中ばかりだからね!


 私は心の中でガッツポーズをした。


「――では、これより勇者殿達のユニークスキル発現させる儀式、《特異能力強制覚醒スキル・アウェークニング》を行うことにする」


(ユニークスキルを発現させる? そんなことできるの? ちょっと聞いてないわよ、アイリス)


 国王の言葉に私は眉を顰める。

 確か戦闘を繰り返していく度に、レベル上昇と共に条件を満たした上で運良く発現できるスキルだと聞いたからだ。『強き念』を宿した者ほど、その確率が高くなるのだとか。


『はわわわ! わたしも知りません、そのような儀式があるなんて……おっかしいなぁ!』


 女神でも知らない儀式?

 なんか胡散臭いわね……。


「陛下、それってなんなのですか? 女神アイリスによる『神託』とは異なる儀式に聞こえますが?」


「うむ、勇者ミオよ。其方は随分と詳しいようだな。その通り、セラニアが独自に編み出した『秘術』だ。各々に宿す潜在スキルこと、ユニークスキルを条件なしで呼び覚ます儀式である。無論、覚醒後は使いこなすのに鍛錬は必要かもしれんが、これからの戦いの中で大いに役立つのは必須であろう」


 つまりセラニアって司祭のオリジナル魔法ってわけね。

 女神を差し置いて独自に編み出すなんて、相当な実力者のようだわ。


「ご用意する石板に手をお翳しください。それで儀式は完成されます。覚醒したユニークスキルはステータスに表示されますのでご確認ください。無粋ながら今後のため、わたくし達も閲覧させていだきます」


 セラニアは手を叩くと、奥から神官達が五つの石板を持ってきた。

 私達は指示に従い、石板に掌を翳していく。


 すると光を宿した魔法陣が浮かび上がり、光は掌を伝って体内へと注ぎ込まれた。

直後、何かが引きずり出される感覚に見舞われてしまう。

 痛みこそないが、無理矢理に嘔吐させられたような不快感に思わず表情を歪ませた。


「――陛下、勇者様方の覚醒いたしました!」


 セラニアが歓喜の声を上げ、《鑑定眼》で私達のステータスを確認する。

 私は《隠蔽》スキルにより、レベル1の能力値で表示されている筈だ。


 そして勇者達のユニークスキルが判明したことで、その場にいる誰もが驚愕し同時に歓喜の声が上げられた。



 まずは、ハルデ。

【ユニークスキル】

独壇場行軍モノポリーマーチ


〔能力内容〕

・眷属、あるいは味方とする者達の全能力値を5倍に上昇させる。

〔弱点〕

・効力は3分間だがハルデのレベル上昇と共に持続時間は30秒ずつ延長される。

・眷属以外の者で、ハルデと味方の間で不信感があれば効果を与えることはできない。


 つまり味方にバフ効果を与えるスキルね。

 おまけにハルデに対して不信感があれば効果を与えられないってことは、味方の振りして近づく者に対しての噓発見器にもなるわ。



 続いて、トックのスキルだ。

【ユニークスキル】

偽りの顔フェイクフェイス


〔能力内容〕

・触れることで、どのような者にも成りすませる擬態スキル。

・声質、臭い、癖など全てコピーすることが可能。

・眷属達も擬態することが可能(ただしトックが触れる必要がある)。

〔弱点〕

・記憶まではコピーすることはできない。

・アビリティはあくまで本人のままである。


 潜入や暗殺に特化した能力のようだ。

 能力者本人だけじゃなく、仲間も変身させられるなんて凄いわ。

 制約時間もないようだし自らボロ出すか尋問されなければ、ほぼバレることはない。



 次はマーボとなる。

【ユニークスキル】

肉体構築強化ビルドアップ


〔能力内容〕

・瞬時に肉体を強化させ、攻撃力・防御力・敏捷力+50補正。

・レベルが上昇すると共に+50補正される。

〔弱点〕

・強化される持続時間は約5分間。

・レベル1上がる度、次のスキル発動まで5秒間ずつ待機が必要。


 まさにそのままのスキルね。

 レベルが上がる度に+50ずつ能力値が補正されるのなら、レベル60で+3000補正か……。

 その反面、待機時間が5分と大きな弱点もあるわ。



 あとはコウキね。

【ユニークスキル】

奇術幻影マジックイリュージョン


〔能力内容〕

・あらゆる箇所に「魔法罠」を仕掛け任意あるいは自動や時限式で発動させる。

・攻撃だけでなく状態異常を引き起こすことも可能。

・物体だけでなく、生物にも「魔法罠」を施すことが可能。

〔弱点〕

・強力な罠ほど設置まで時間を要する(即行の罠だと見破られやすく威力も低い)。

・空中、あるいは無重力空間での罠は設置できない。


 待ち伏せなど伏兵っぽい能力だわ。

 おまけに生物に至るまで罠を設置できるなんて……相当エグイことができそうね。

 正直、私が欲しいくらいのスキルよ。



 ムカつくけど流石、勇者ね……。

 どれも強力で即戦力となるユニークスキルばかりだわ。


 さて、最後に私になるけど――。



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