第23話 ミウSIDE 解らない


泣きたい気持ちは解る。


何があったのか知らないが女の子が体や顔を焼かれていたんだ。


辛くない訳が無い。


こういう時は泣かせてあげた方が良い。


そう思い、そのまま泣かせてあげた。


「うわぁぁぁぁん、グス、グス…あっあの」


少し落ち着いてきたみたいだ。


「お腹空いている? もし食べられるなら食べて…ただ吐くといけないからゆっくりとね」



「あり…あとう、グスッ…スン」


ミウはそう言うと…


モグモグガツガツ


「ううっ…ハァハァゴクリ…ハァハァ」


凄い勢いで食べ始める。


まるで飢えた野生生物みたいだな…


だが、不味い…


「誰も取らないからゆっくり食べなよ…ほらっ」


「うぐっ…うぐっむふっうっうっつ!げええええええええええええええーーーっうぇぇぇぇぇぇぇぇーー」


やっぱり…


「大丈夫?」


空腹にいきなり食べたせいか盛大に吐いた。


「ごめんなさい…うっうっうえ…うえええええぇぇぇぇーーんごめんなさい、ごめんなさい…うぇうぇ、うわぁぁぁぁん」


「気にしないで良いから吐ききっちゃおうか?」


俺は背中を擦ってあげた。


具合が悪いんだから仕方が無いよな。



「ごめんなさい、ごめんなさい…」


「泣かないで良いから、此処は俺が掃除しておくから、お風呂に入ってきなよ…着替え用意するから」


「ううっグスッ…うん」


泣いているミウをお風呂に押し込み…


宿の従業員を呼んで、掃除を頼み、果物と果実水を残して下げて貰った。


ついでにゲロにまみれた衣服の洗濯も頼んだ。


勿論、こういう時のチップも忘れない。


あとの話はミウがお風呂から出てきてからだな。


◆◆◆


なんで此処まで優しくしてくれるのかな?


解らない。


本当に解らない。


こんな高級な宿に泊まっているんだから『盗賊』なんてするわけないし…


どう見ても、そういう暗い物と関わってない気がする…


だいたい、ミウの周りは『利用する為』だけの仲間しか居なかった。


そして、力の無いミウは『利用される側』だった…


たった1時間に満たない僅かな時間なのに…凄く幸せに感じちゃったよ。


多分、あれがミウが欲しくて、欲しくて…本当に欲しくて…それでも手に入らなかった生活なんだって…思うの…


物じゃないよ!『ミウ?大丈夫』そう言って私を労わってくれる、そんな人が欲しかったんだよ…多分ミウは…


顔は焼けただれて膿まで出ていた、あの時のミウは化け物みたいで…死にかけていた筈だよね。


そんなミウを『あの人』は綺麗に治してくれた。


湯舟に浸かりながら、じっくりと見た私の肌は本当に傷1つないし…


顔からつま先まで…綺麗に元通り…ううん古傷まで無くなっている。


こんなに綺麗に治すのは絶対に大変な筈だよね…


回復魔法の使い手なのかな?


だけど、教会関係の人ならミウの容姿を嫌う筈だから絶対にヒーラーじゃないよね…


だったら、どれ程沢山のポーションを使ってくれたのかな?


どう考えてもとんでもない金額の筈だよ。


それ程のお金を使って『こんな可愛くもないガキ1人治して』どう考えても損しかないよね。


仲間が欲しいなら、普通に作れそうだし…


奴隷が欲しいなら、私より真面な人間が沢山スラムに居るし…


お金持ちそうだから、帝国に行けばエルフだって買えるよね。


なぜ『ミウ』なのかが解らない。


上等な下着に上等な服…おいしいご飯…暖かい部屋。


ううん、それがもし無くても『助けてくれた』『治療してくれた』


沢山の恩がある。


ミウは、あの人に何を返せば良いのかな…解らない。


こういう待遇になる奴隷に少しだけ心当たりはあるけど…


愛人奴隷や性処理奴隷…だけど、それにしてもミウを選ぶ理由が解らない。


私は緑髪にブラウンの瞳…魔族に似た様なのがいるみたいで、凄く嫌われる容姿だもん。


そう考えたら、それも無いし…


もし、私を抱きたいなら幾ら抱いて貰っても良いし…


なにかして欲しいなら幾らでもしてあげるけど…


いや…『あの人』結構な美形だから、それじゃミウがご褒美貰った事にしかならないよね。


ないない。


あんな、綺麗な人がミウを抱きたいなんて無いな。


盗賊すら手を出さなかったブスだもん。


『スラムの人だって毛布被せて顔を見ないようにする』


そこ迄しなくちゃ抱きたくない位だから…ないよね。


幾ら考えても解らないや。


お風呂から出てから…話を聞くしか無いな…


うん…


まぁ此処までしてくれたんだ…したい事全部受け入れてあげれば良いのかな?


それしか思いつかないや…







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