第5話 幸せな一家

 長身でもちろんイケメンであり、精悍、そして野性的だけでなく、知性的でもあり、若い頃から女性にはモテていた。


 義雄と雪子が結婚を発表した時、どれだけたくさんの男性と女性が祝福と同時に失恋したかしれない。


 報道カメラマンという職業は、危険と隣合わせのものである。義雄は、自力で身を守るための技を身につけていた。


 空手は中学生から習っており五段であり、様々な大会で優勝している。剣道も父親が剣道場を開いていたため、やはり五段の実力である。


 リビングの棚の上には、たくさんの優勝カップや盾、メダルなどが実力を物語っている。


 モデルであった雪子が撮影現場で、何人かの男に絡まれる事件があった。そのときに、義雄が助けたのが交際のきっかけであった。


 雪子は165㎝と長身であるが、美紀はさらに高く167㎝あり、スタイルの良さは雪子を上回るほどである。


 来年卒業の美紀は、すでにモデルとしての登録がされており、活躍が期待されている。雪子が所属しているモデル事務所の社長からの強い頼みによるものだと聞いている。


 神介も美紀と同様に長身である。高一で既に義雄を上回り182㎝はある。しかし、頭の方は姉ほどではなく、ごく普通程度である。


 クラブには入っていないが、運動神経は抜群であり、何のスポーツをさせても他人に負けることがない。しかし本人には、まったくその気がなく帰宅クラブであり、運動クラブの助っ人に駆り出されるのが常である。


 特に武道関係は才能が著しく、空手・剣道共に五段である義雄でさえ、手に余すほどである。


 美紀が中学2年の時、不良5人に絡まれたことがあった。小学6年生の神介が駆けつけ、転がっていた棒を掴み5人を打ちのめした。


 そんな様々な武勇伝が後を切らない神介であるが、まったく奢ったところもなく爽やかな青年である。


 高校生ともなると血気盛んな若者たちがチームを作り、他の高校と揉めるなどの事件もおきている。


 神介の高校にも不良チームがいくつかあるが、チームリーダー達は神介に心酔してている。他校からの侵略時に何度も神介の力を借りて撃退しているからである。


 近隣の高校には、神介の名前は知れ渡っており、いまではちょっかいを出してくる者もいない。


 腕に覚えがある報道カメラマンの義雄、美女モデルであった雪子、才色兼備でやさしい美紀、強くて爽やかな神介と、幸せな一家であった。


 夏なのに湿度が低く、空気が乾燥している8月初旬の暑い夜であった。もう既に1時をまわっていた。10畳はある広いリビングでは、賑やかなアニメが流れている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る