第3話クライバート領地

「お嬢様、どちらに行かれるんですか??」


「服屋さんよ!どうゆう服があるのかチェックしなくちゃ!」


「それは我々がご用意致しますよ?」


「自分の目でみたいの!」


アーニャは驚きの目をしていた。

今日、何回目かな?

それほど、エリスは外に出なかったし、外に興味を持っていなかったからアーニャの驚きも当然よね。


それにしても、ヨーロッパの様な街並み。

郊外の方には塀が作られていて物見櫓もある。


それはモンスターから街を守る為の物なんだけど、クライバート男爵領は正直そこまで大きな街でもないし、特産品があるわけでもない。


だから、お父様は王都で働いている。


たしか...


「お嬢様、あちらに見える噴水はご主人様がお作りになられたのですよ!」


そう!王都では技術開発局って所の副大臣を勤めている。


魔石を使用して魔道具の作成。

生活用品や武器も作っているのだとか……


きっと、下着を作ろうとしている事は前世の記憶だけじゃなくて、もの作りを担当している父親から受け継いだDNAがボクをつき動かしているんだと思う。



そして、ボク達は服屋さんに到着した。


「なにこれ……」


「ここは下着売場ですね!」


「それは知っているわ。何故、男性の物はしっかりとしたショートパンツのようになっているのに、女性の物は布を括りつけただけなのかしら?」


「それは...男性はモンスターと戦います。動きやすいように作られているのですよ。女は家に居ることが多いですから。洋服以外の下着はそんなに重要視してないのです。」


「え、女の子は洋服の中も可愛くしなきゃいけないのよ?それなのに...」


「みんな可愛い物は好きですけど。戦ってくれる男性に合わせて作られているんです!もちろん、女性でも戦う人はこのような下着をつけていますよ。」



そっか...

この世界では女性より男性が優遇されているのね。

でも、男性物も決して良いものでは無い。

戦闘優先……って所かぁ。



「布の資源も限られていますから。贅沢はできませんよ。でも、王都には下着を扱うお店があるみたいですけど、ここの領地ではそこまでの余裕はありませんね。」


「なら仕方ないわね。布とゴムを少し買っていくわ。その後は少し街を見てみたいわね。」


「分かりました、お嬢様。」



要するにお金が無くて衣料用品には手が回らないって事。

この事実は知っていた。でも、記憶にはなかった。

日常生活の基本を体感して思い出さなきゃだめね。



領地のお金問題を何とかしなきゃ、前世の自分が浮かばれない...


クライバート領特有なのか?

世界的にもそうなのか分からないけど、貧富の差があるみたいで、スラム街と呼ばれる所を発見した。


「ねぇ、アーニャ?どうしてスラム街が存在するの?」


「どうしてって...手に職を持たないものや、モンスターに親を殺されてスラム街に住むしか無くなった者たちがいるからですよ?」


「それは分かるわ。お父様は対策を打っていないのかしら?」


「それは、この国のスタンシアラ王国も外国の国も同じですが。長屋を建てて雨風を防げるようにしています。無償で寝床を提供しているのですから、素晴らしい事ですよね!」


「これで雨風を凌げるのかしらね?」



風化した建物は所々に穴が空いていて、とても雨風を防げるようには見えなかった。

たったそれだけの事で素晴らしいなんて言えるのかな?


「お嬢様。あまりスラム街をうろつくのは良い事でありませんよ?」


「どうして?」


「それは...危険だからです。決して治安が良い訳じゃありませんから。」


なんとなく、アーニャの言いたい事は分かるけど。

食べる物も気力もなく、座っている人達。

お腹を空かせている子供達を見ている事が忍びなかった。

生きるため...食べる為に犯罪を行う。

だから治安が悪くなる。


それは長屋を建てたからって解決される問題じゃないよね。


エリスの記憶では毎日3食はきちんとした料理が出てきていた。

貴族だからなのかも知れないけど、食の供給も急がなきゃダメ。


前世のボク……ごめんね。

片手間で下着作りはするから。

ちょっとの寄り道は許してね?




「アーニャ、あれは何かしら?」

「恐らく畑だったのではないでしょうか?」

「どうして放置??野菜作ったらいいんじゃないの?」

「お嬢様...もう、あの畑では野菜が育たないんですよ。そうゆう所はここだけではなく、沢山あるんです。スラムの人々は豊穣の女神様からも見捨てられたと...気力を失ってしまうのです。」


「え...ボクも詳しくは知らないけど...腐葉土とかで再生したらいいんじゃないの??」


「腐葉土??なんですか??」


「え……」


アーニャを連れてスラム街を抜け出して市場に向かった。



そこには歪な形の野菜。

小さな野菜が並んでいる...


「ねぇ...肥料とかはどうしてるの?」

「肥料ですか?なんでしょうそれは……」

「え?畑はどうやって作ってるの??」

「作る?種を巻いて育った所が畑になるんじゃないのですか?」



ん?


想像以上にこの世界ってやばくね?


よく見たら、レタスのようなものは服よりも値段が高いし、農業の基礎が知られていない??


だから、記憶の中の食卓にはモンスターの肉が並んでるんだ...



「水の管理とか、害虫対策はしてるんだよね?」


「ほとんどは魔法で管理してますよ。クライバート領でも魔法士が月に1回くらいで対応してると思いますよ?」



……魔法に頼りきって、専門的な知識を養う事を怠ってるんだ。


これじゃ...処刑される前にボク達も飢えちゃうよ。


でも、背に腹はかえられないわね。



「アーニャ!屋敷の庭にも畑を作るわよ!最初はボクの魔法を使うけど、その後はちゃんと知識を付けてスラム街の人達にも働いてもらうわ!」


「えっ?お嬢様??」



転生初日とは思えないほど、ボクは忙しい時間を過ごしたが、自分ではそうは思っていなかった。


それはきっと前世のブラック企業の恩恵なんだと思う。





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