第5話 冒険者ギルドでの治療

私は治療行為を行うにあたり、契約書を作成した。


【・佳代子は冒険者1人を治療すること

 ・治療を受ける冒険者はポーションの代金を支払う能力があること

 ・治療が成功した場合、ギルドの一角を佳代子に提供すること


 ・治療者が死亡した場合は見舞金を支払うこと

 ・治療者が良好な状態に回復した際は報酬を支払うこと      】



この契約書に私とギルドマスターはサインをした。その後、ギルドは1名のけが人を募集した。結果参加表明したのは傷を包帯でまいただけに見える男性の冒険者だった。


私はその冒険者とも契約書を交わす。報酬はポーションの代金を支払うとそれ以上は残らないということだったので魔力譲渡を行うことにした。


私は契約書に魔力1割を譲渡と書こうとしたところでミリーナちゃんから2割と変更するように言われた。


理由を聞くと


「この冒険者は魔力の量が少ない。今後も治療を行っていくなら佳代子の魔力量の向上は急務だし、平等に魔力を支払ってもらうためにこのくらいは貰っておくべき」


とのことだ。私は反対意見がなかったため相手にも確認して2割で契約書を作成した。


ちなみにこの世界で魔力譲渡という行為は存在しない。神が審査を行っている契約書だからこそできる行為なのだ。そのことを知っていたロジーナは一体何者なのかはまだ分からない。


契約書にサインを貰ったことで私は闇魔法のパラライズを発動し、傷口の痛みを麻痺させた。つもりだったがまだ魔力の操作が甘かったらしく右腕が動かなくなるまで効果が出てしまった。


まあ、治療には影響がないため、ウォーターで傷口を濡らしながら包帯を外していく。包帯を外し終えると、皮膚の下には膿が大量に溜まっていた。私はミリーナちゃんからナイフを借りてファイアの魔法でナイフを炙る。


ギルドマスターが口を出そうとしてくるが、ミリーナちゃんがそれを阻止する。


その間に私は素早く膿が出来ている皮膚の一部をどんどん切り取っていく。慣れた手つきで膿を全て摘出した後はポーションで傷口をふさぐだけだったのだが、ここでギルドが提供したポーションに問題があった。


「このポーション。もしかして古いですか?」


「ああ。よくわかったな。在庫処理のためポーションは古いものから使うことになっている」


「これだと今の治療が全て無駄になってしまうのでここにあるポーションを全部持ってきてもらっていいですか?」


ギルドマスターは受付嬢に眼で合図して100本はあるポーションを全て持ってきてくれた。


私はそこから新しい順で20番目程度のポーションを取り、冒険者の傷口に振りかけた。


そこで契約書が燃えた。治療を受けていた冒険者は急に魔力を奪われた影響かふらついたが倒れはしなかった。


ギルドマスターとの契約書はまだ燃えておらず、ギルドマスターがすこし苦しんでいるように見えた。


私は


「ギルドの何処を私に提供してくれるのでしょうか?」


と尋ねると


「そんな場所などない」


とギルドマスターが叫んだ。と同時にギルドマスターは意識を失った。


契約書には契約不履行の場合については何も書かれていなかったが、今後はこの部分も気を付けなければ死人が出かねないことをこの場で体験したのであった。

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