第二章 6.楽しい食卓 私はセクハラ魔神?

「じゃあ、いただきます!!」

私たちは、料理を並べ共にいただきますと挨拶をした。

「今日は、本当なら、二人の歓迎会をしたかったのですが、残念ながら、邪魔な来訪者のせいで、たいした物を作れないで申し訳ありません……」

私は、刺身を一切れ食べながら謝った……

今日のご飯は、刺身に、野菜サラダと海老やイカのてんぷらだった。

「いえ!!この御魚も美味しくって……このてんぷらも、衣がサクサクして美味しいですよ!!」楓さんが、ニコニコしながら観想を言ってくれて、凪ちゃんは黙々と食べ……

「おかわり」と私に御茶碗を差し出す。

「凪!!自分で御茶碗にご飯ぐらいつぎなさい!!」

「良いんですよ、凪ちゃん、ご飯美味しい?」と聞くと……

首を縦に振って……

「美味し……い……懐かしい……感じ……が……する……」と言って、微笑んでいたと思ったが、すぐに無表情になった。

「確かに……そうですね……なんだか懐かしい感じのする……料理です……まるで……母さんの……」

凪ちゃんの懐かしい感じと言う言葉に、楓さんも同意した

「それは……たぶん、千影義姉さんの味ではないんですか?」

私は少し、濁した感じで話した。

「そうです……これは、たまに作る……お母さんの……でも……なんで?」

「それは……義姉さんが、家に来ていた時……良く私に、料理の仕方を聞いてきたんですよ。

食べさせてあげたい人がいるって……」

「つまり……朱鷺さんは……母さんの料理の師匠!?」楓さんが驚いた。

「そう言う事になりますけど……そう言えば……義姉さんが、家に来ているとき、楓さんたちはどこにいたんです?」

姉さんが、この二人をほったらかしにして家に来ているはずが無いから……気になっていたけど……

「それは……父の家にいました……」

「血縁者の?……」

「そうです……そこで私たちは、家事を強要され……」

私は眉をひそめた……

「でも、大丈夫ですよ!!だから、今の私がいるんですし!!

それに……母さんが……助けてくれなければ……今でも……ごっごめんなさい!!楽しい食事中に、こんな話……」

「いえ、良いんですよ、私が聞いたのですし……そんな悲しい事があったのなら、これからはもっと楽しみましょう!!」私は、微笑んだが……

「朱鷺……ご飯……まだ?」今にも飛び掛りそうな眼で……凪ちゃんが私を睨んでいた……

「あっ……ごめんね、すぐに、おかわりを持ってくるよ」

そう言って、立ち上がろうとしたとき……

楓さんが、食卓を見て吼えた……

「凪!!私たちが話している間に!!なんで、殆ど食べ終えているの!!」

今まで一人暮らしでいた私は、複数で食べる事があまり無かったから……

大皿から、自分の持ち皿に取る方針でいたが……

話しているときは8割あった皿が……1割まで食べられていた……

この日から、私はその方法は、凪ちゃんのいるときじゃ止めようと思った……。


「ごちそうさま」

「ご……ちそう……さま」

「御粗末さまです。」

私は両手を合わせる二人に言うと、食器を片付ける為に、皿に手を伸ばそうとしたが、

楓さんに皿を取られた。

「あの……なぜ皿を……取るのですが……もしかして、足りませんでしたか?」

と私がそんな事を言うと……

「なに、楓……あれだけ……あって、まだ……足りなかったの?」

凪ちゃんが驚いたように(たぶん、顔の表情に変化は無い)、楓さんを見る

「ばっ……馬鹿のなことを言わないでください!!わっ、私はただ食器を洗おうと思っただけです!!」

顔を真っ赤にして楓さんは否定した

「でも……家事は……私が……」二人に家事をさせずに、

のんびりしてもらいたいと言う、私の考えに反してしまうのに……なぜそこまで?

「言っておきますけどね、朱鷺さん!!確かに、家事が出来る人は凄いですよ!!

でも、何でもかんでも、自分で背負うのは、間違いですよ!!」

確かに、何でもかんでも自分でするのは、不可能がある……組織活動をしていれば、それを知っている。

現に、彼女たちを守る為に、他の人の手を借りているが……それが、今……

「家事だって、私たちがいるんだから、もっと協力しましょう!!

朱鷺さんには、作家に成ってもらわないと、母さんが天国で泣いてしまいます!!

それに……もう、家族なんですから、家事くらい手伝わせてください……」

そうだ……もう家族なんだ……守るべき大切な者で、頼っても良い……

「もし……そう考えているのが私たちだけなら……謝ります……だけど、私たちは、本当に朱鷺さんを……」

「そうですね……確かに、私たちは家族ですね……何を私は意地になっていたんでしょうね~

皿洗いぐらいで、すみません……貴方たちの事を思って、家事を引き受けたのですが、それが……貴方に重かったようですね~これからは、当番制にしましょう」

私は楓さんにそう微笑んだ

「朱鷺さん……わかってくれましたか!!」

「ええ……私が間違ってましたよ、当番制はどうしますか?どうやって決めます?……

ああ、そうだ、下着の洗濯は、自分で……お願いできますか?」

そうだ、いくらなんでも、私が、彼女たちの下着を洗濯するわけにも……

「朱鷺さんの馬鹿!!」急に、楓さんが、怒って部屋を出て行ってしまった……

「凪ちゃん……どうして、楓さん怒ったのかな?」

とりあえず、食器を片付けていた、凪ちゃんに聞くと……

「それは、朱鷺が……セク……ハラ……魔神だから……」

私の心にナイフが突き刺さった気がした……

またセクハラといわれた……急に現実から逃げ出したくなったが……私は泣かなかった……

泣きたくなかった……っていうか……今日で、私はどれくらい涙を流したんだろう……

大人になると涙腺が脆くなるのかなと本気で疑ったくらいだ。

「食器洗うから……道具の……場所……教えて……朱鷺……泣いて……いるの?」

いつの間にか背後に来ていた凪ちゃんが、私の話しかけてきたが……

「泣いてないよ……それより、明日はこの町を探険しようと思うけど……時間ある?」

凪ちゃんに聞くと……少し考え……

「楓も……行くなら……行く」と答え、食器についた汚れを水で洗い流しだした。

「ジ○イは目の前にあるから、そこのスポンジを使ってください。」

私は凪ちゃんにそう言うと凪ちゃんは頷いた。

凪ちゃんは、性格上……家事なんて出来ないと思ったけど、食器を洗う手順を見ていると、

家事をし慣れている感じがする……


「すいません……私から言った事なのに……急に怒り出して……」

楓さんが、気分が落ち着いたらしく謝りに来て……

「凪が、なんで食器洗っているんです?」

なぜか私を睨みつけてきた……

「いや……だって……さっき……そんな話に……」

私はその気迫に、恐れながらも答えると……

「はい、確かにそう言いましたけど……なんで仲良く二人で洗っているんです!!」

「それは……まだ片付ける場所とか解らないだろうから……一緒にしているんですけど……」

「楓……五月蝿い……洗物の邪魔……朱鷺……これどこに置けばいい?」

大皿を私に凪ちゃんが見せる

その大皿は、そこの棚です私は指差したが……凪ちゃんが、自分の背よりも高い棚に……大皿を持ち上げながら、その棚を見つめ……バランスを崩した!?

「凪!?」楓さんの声が聞こえたが……

そのとき私は、凪ちゃんの背後に回りこみ、抱き止めた

「大丈夫……ですか……大皿は、私が置くので……」私は、凪ちゃんから、大皿を受け取ると、大皿を棚に置いたが……さっきから……凪ちゃんに反応がない……

「凪ちゃん?」私は不安になり、凪ちゃんの顔を見るが……眼をパチクリさせていた……



「凪って、驚いてフリーズしたみたいですね~」

後ろから抱き止めたせいか、凪ちゃんは、私の方を見ようとはしていなかった。

「う……む……初日から凪ちゃんに嫌われちゃったかな……」

「大丈夫ですよ~ちょっと恥ずかしがっているだけですから~それにしても、無表情でも……凪ちゃんは女の子ですね~」

楓さんはクスクス笑った。

「それはそうですよ!!凪ちゃんは可愛い女の子ですよ」

と私は答えたが……楓さんの様子が変だった……

「そろそろ、凪について、話そうと思います」

急に真剣な顔になった……

「凪ちゃんの許可とか……大丈夫なのですか?」私は、食器を洗い終わり、フラフラしながら部屋に戻った

凪ちゃんのことを思いながらそう尋ねると……

「ええ、構いません……凪にも理解できるのですが……どうにもなりません……では、話します……」

私は……その話を聞いたとき……手に力が篭っていた……

「凪は……昔は活発で……元気な子でした……でも……母を失い……感情を表に出さなくなったのです……」

本来の凪ちゃんは……活発な子だったのに……千影姉さんの死で……こんなに変わるなんて……

私は……悔しかった……大切な人が困っていたのに……なにも出来なかった……

「凪は……いま……少しづつ……前のように感情を表すようになりました……朱鷺さんに出会ってから……」

「なぜ……私の影響だと……」

「それは……私たち……凪さんの事……よくお母さんから……聞いていたんです……料理の師匠とかは……初めて聞きましたけど……」

気恥ずかしいそうに、楓さんは、私に話してくれた。

「私の事を……なんて言っていたんです?」

私の事を……千影さんはどう思っていたんだろう……

「自分の夢を……自分の事を、よく我慢する人だって……誰かの為に、自分を犠牲にしてでも……助ける……そんな強さを持っていて……

やっと、自分の夢を大切にして、家を出て行ったって……」

私は、少し……胸が痛かった……家を出たのが……私の夢の為に出るとここまで喜んでいたのか……

「そんな……私は……強い人間でも……人の為に何か出来る人間ではありませんよ……」

私は力無く……そう言うが……

「違います!!朱鷺さんは……自分の夢をまだ諦めず……前に進もうとしているじゃないですか!!作家に成るために……頑張って……

こんな大きな家に住むくらいに稼いでいるのに……まだ夢を諦めていない」

私は……胸を押さえた……楓さんが……と……千影姉さんと……姿がだぶる……

「朱鷺さん?顔真っ青ですよ!?大丈夫ですか!」

楓さんが私の異変に気づいてしまう……

「だっ……大丈夫ですよ~ちょっと……疲れただけです……今日はいろいろありましたから……」

私はそう言って、呼吸を整え頭に血の気が戻るのを感じた

「そっ……そうなんですか?」不安そうな顔だ……私が見せたくない……千影姉さんの表情……

「大丈夫ですよ~確かに最近疲れてますし……今日はゆっくり休みますよ」

私は、そう言って部屋を出た。

***

部屋に鍵をかけると、私はパソコンを起動させた。

そして、組織に情報を収集してもらおうと、メールを送信した。

それから数十秒後……返信がきた……


皇 帝からメールを受信しました

パソコンにそう表示されたとき……自然と眉に皺が……よりにもよってこの人物から……返信が……

私は受信ボックスの中から、そのメールを見つけると


件名「休暇中」



私は、件名を見て……ため息が出た……とりあえず……内容を読もう



本文

嫌じゃ……妾は休暇中じゃ~働きたくないのじゃ~

妾に働いて欲しくば、組織に顔を出し、お願いすることが礼儀であろう。

つまらぬ事に、妾の組織を使うのじゃ……手土産を忘れるでないぞ


私は頬を引きつらせた……

あの妖怪婆め……手に力が篭る……

普通の人なら皇帝(こうてい)と呼ぶだろうが、

皇 帝(すべらぎ みかど)私の組織の長で、私が組織に入ってから、少しの変化も無い

小学生サイズの老婆だ


「はぁ……何か茶菓子でも買って行くか……」

私は、組織に顔を出す日時を、メールで送った。

すぐに返信が来た


件名「明日のおやつ時にケーキとかを持参で来るのじゃ」

本文なし


明日の用事を考え……私はため息をまた吐いた


明日の予定……

午前中 楓さんたちを連れて、商店街めぐり……

お昼は、あっちで考えるとして……今の状況で……楓さんたちを置いて……組織に顔を出すのは……


私は立花警部に明日の家の警護を頼む事にした。

だが……

「そうだ……今日は愛人の所に顔を出すって……」

今の時間帯から連絡したとするならば……私は顔をしかめた


お楽しみの最中か……


仕方が無い……楓さんたちは……組織の依頼者を保護するダミーの事務所に置かせてもらおう

私はそう考えながら、スケジュールを組み立てた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る