第二章 2.国家権力の正しい使い方

私は警察に連れて行かれるABCに手を振りながら、スーツを着て私を見ていた人物に、話しかけた。

「いや~助かりましたよ」私はその人に頭を下げ、礼を言うと

「これは、本官の仕事ですから、住民を守るのは本官の任務です」

びしっと通行人……いや、私服警官が敬礼する……そして、二人は笑い出した

「まんまと、成功したじゃねぇか~」警官はさっきまでの雰囲気を変え、私に話しかける

「それは、そうでしょう~全ては計画道理です。

それにしても、立花警部には、御世話になりましたね~」

「馬鹿、この姿で、俺の事を警部なんて言うなよ」

この警官の名前は、立花一巳(たちばな かずみ)警察の制服を着てはいないが警部だ。

数々の暴力事件を解決している名警部だが……

この性格や口調が、その名警部の噂を片っ端から幻滅させていっている


「それにしても、お前から連絡があったのは、久しぶりで、しかも手柄を立てさせてくれるなんて、感謝してるよ」立花警部は、上機嫌で私の肩を叩く

「いえ、私も助かりましたから……それにしても、いつもながらスーツが私服ですね……」

私は立花警部の私服=スーツをよく見て言った

黒スーツに紅いワイシャツ……さっきのヤーさんよりもヤーさんらしい服装……

「これにサングラスをかければ立派な、幹部ですね」

「サングラスか~あるぜ」サングラスをかける

「お~危険な感じがしますね」素直に感心した

「おうおう、俺が借りた3万円チャラにしてくれよ~」ここぞとばかりに、ふざけてきたな~

「ダメで……」私もふざけるのは好きだから、ふざけようとすると……私は無意識に、立花警部を突き飛ばし……後ろを振り向いた……

「朱鷺さんを離しなさい!!」背後には……フライパンを振り上げた楓さんが……フライパンを振り下ろしてきた……



***

「すいません……その方が刑事さんだったなんて……」

「いや、本官も、悪ふざけが過ぎましたよ」

楓さんが頭を下げ、それを立花は、笑って許している……

それが、私が気づいて目にした最初の光景だった……

「あっ、朱鷺さん目を覚ましましたか」私が目を覚ましたのに一番初めに気がついたのは、楓さんだった

「私は……なぜ眠っているんでしょうか?」

私は、よく自分の状況を確認しようと思考を働かせるが、頭が痛くて、上手く判断できない

家のリブングのソファーで寝かされているのはわかるが、何で眠っているのかがわからなかった。

「あ、きっと意識が困惑しているから言うがな、覚えているか?お前は、殴られたんだ」

殴られ……ああ、そう言えばそんな気もする……


「私は……誰に叩かれたのでしょうか?」

叩かれたのはわかるけど……誰に叩かれたのかまでは思い出せない

だけど、私のこの発言に……なぜか、楓さんは顔を赤くして、立花警部は大笑いをしている……

「だははははは、可笑しいぜ~嬢ちゃんどうする?ちゃんと話すか?」


しばらく笑い続けて落ち着いたのか、楓さんにそう言ったが……

「ふざけないでください!!そんな事を私に言う時点で、自白しかないじゃないですか!!」

私の頭がはっきりした

「ああ、そうだったな……庇って殴られたんだった」

私がそう言うと、楓さんが顔を抑えた……また自分のドジを笑われるのかと思ったんだろうが、あいにく今回は笑えなかった


「なんて危険なまねをしたんですか!!」

「え!?」私が怒ると思わなくって混乱したのか

「もし、本当に、ヤクザだったらどうするんです!!危険な目に会っているのかもしれないんですよ!!」

私は、楓さんの手を掴んでしっかり目を見る

「もし……貴方に怪我があったら……危険な目にあわせたら……私は貴方のお母さんに、どう詫びればいいんです!」

あの人のことを考えると、目が熱い……たぶんこう言ったせいで、楓さんは機嫌を損ねるかもしれないが、それでも、彼女に危険なマネをしてほしく無かった


「謝りますから……もう危ない真似はしませんから……」

そう思っていたのに、彼女は普通に謝った……変な感じがした……

普通の人は、勇気を振り絞った行動を非難されると、落ち込み……そう簡単に、素直に謝れない……

楓さんは素直だ……素直だけど……何か違う……

「あ……」

私はその事を聞こうとしたが……


「もういいじゃねぇか~楓ちゃんも反省しているみたいだし……」

立花警部が、私の肩に腕をのせ、私を止める

「いえ……私が悪かったので……朱鷺さんに……」

それは、不貞腐れた様な感情の混じった声……さっきまで感じた違和感が消えた……?気のせいだったのか?

「いや、私も言い過ぎた……そう言えば、凪ちゃんは?」

私が、眼を覚ましてから、凪の姿がない事に気がついた

「凪?誰だそれは?」

立花警部がそう言うところを見ると、私が倒れて、ソファーに寝かされるまでに姿を現していないのか!?

私が凪ちゃんは、楓ちゃんの妹だと話すと納得したが、それよりも……

「凪ちゃんは無事なのか!」

私は慌てて体を起こすが……

「ああ、部屋で凪はじっとしていますよ」

それは、奇妙な回答だった……

「部屋で……じっとしているのは良いけど……」

「凪は……」

楓さんは、凪ちゃんの事を話そうとしたが、立花警部を見て……

「すいません……今は話すことが出来ません」

拒絶した……

「俺が邪魔だったか……仕方ねぇな……じゃあ、そろそろ、家に帰るぜ~っと、その前に、朱鷺ちょっと、ついて来い」

去り間際に、立花警部は振り返ると、私を呼んだ

家を出る前に、楓ちゃんに留守番をお願いすると、私は家を出た



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