2023年5月21日

町へ出かけていくと、決まって雨が降ってくる。


僕はそういう運命にあるようだ。


僕が町へ出かけるから、雨が降ってくるのか。


それとも、雨が降ってくる予感がするから、僕は町へ出かけるのか。


どちらだろう。


予め対策を練っていたから、雨に濡れることはなかった。


傘を差す。


ビニール製の表面に打ちつけられる、水の音。


こういうのを、騒音、とは、普通言わない。


永久が分離する原理。


町はいつにも増して静かだ。


空は特別曇っているということはなく。


それどころか、沈みかけた太陽の影響を受けて、端から端まで赤く染まっている。


綺麗、とは感じなかった。


そんな単純な様相ではない。


単純な言葉を敢えて用いることで、ありとあらゆる可能性を担保するか。


それとも、言葉をいくつも並べて複雑を構成し、できる限りの正確性を追い求めるか。


果たして、どちらが良いだろう?


いくら言葉を並べたところで、それら一つ一つの言葉が、多用な可能性を秘めている。


という事実。


それでも、僕たちは、人が書いたものを理解できるし。


人が話すことを考慮できる。


それは、なぜか?


言外に潜む何かを感じる。


あるいは、言語という構造自体に潜む何かを思う。


強風に煽られて傘が裏返ったから、僕は慌ててもとに戻した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る