#18 二度目の勧誘

私たちは花園を後にしたあと、集落へと戻っていた


「おかえりなさい♪満足いく結果は出ましたか?」

「まだ一日目だぞ。そう簡単に出るものでもない。まあでも、筋がいい奴はたくさんいた。これからが楽しみだ。」


帰ってくるなり早々にメディさんが出迎えてくれて、ヘインが今日の成果を報告した


「ふふ、よかったです。そういえば、レツハさんが話したいことがあるそうですよ。この先で待っていますから、行ってあげてください」

「あぁ、わかった。」


ヘインは足速に、テントの奥へと歩を進めた


「どうです?鍛錬はキツかったですか?」

「結構きつかったですね。教えるのが苦手なのにヘインから指名されて今日来た人たちを教えていましたし。」

「ふふ、そんなことがあったんですね。お疲れ様です♪」


いまだにメディさんに対してはタメで喋ることができない。会った時の名残か、メディさんの言葉遣いが丁寧だからだろうか。メディさんからはいつも、敬語じゃなくて、タメ口がいいです!って言われてるのだが、いつまで経っても出来そうになかった


「でも、なんだかんだ楽しかったですよ。新しいお友達もできましたから、これからが楽しみです」

「あら、そうだったんですね。メイプルちゃんにお友達が…ふふふ、なんだか、自分のことのように嬉しいです♪」


そしてメディさんはちょいちょいと手を振り


「さ!上がってください!結構大事な話だそうですから、私たちも聴きに行きましょう!」

「わかりました」


そして私はテントの中へと歩を進めるのであった

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フードを深く被った男は笑う


「ははは、まさかここまで強うなるなんてなぁ!」


男は心底おもしろそうに、楽しそうに笑う


「ここまで仕上がってるとはおもいもせえへんかった。天下の『無間』様はどう考えてはるんや?」

「そうだな!面白い奴らだと思うぞ!お前の報告では、ここまでの『闘波』は感じなかったはずだ!お前も同じ感想か?『大叫』!それとその様呼びで呼ぶのはやめてくれ。」


快活な男が笑いながらそう言う。


「せやなぁ。あらかたアンタとおんなじ感想や。鍛錬始めたらしいんやけど、それでも一ヶ月でこれは仕上がりすぎな気もするけどなぁ。」

「そうか?まぁ成長が早いのはいいことじゃないか。俺も、やる気を出さねえとな。」


そう快活な男がそういうと、もう片方は呆れて


「アンタはこれ以上強くなって何するつもりやねん…」


と、嘆息をついた


「勧誘するのか?少なくともチャンスがあるのならしておいた方がいいぞ?」

「わーっとるわ。でも今、テントの中へ入ってしもたからなぁ…」

「なら中へ入ればいいじゃねえか」


『無間』と呼ばれる人物がそういうと『大叫』と呼ばれる男の方は嘆息を吐き


「アンタはとことん倫理観とか、そう言った奴が欠如しとんなぁ…」


と呆れて言う


「せやけどまぁ、それくらいしか良さげな方法はなさそうやな…しゃーない、中入るか…アンタはついてくるんか?」

「どちらでも構わないぞ。お前が勧誘失敗する様を見届けたい気持ちもあるが、実際にどんな才覚があるか、俺自身の目でもみてみたい気はする。」

「流したけどさらっと最悪なこと言うなや。マジで性格悪いなアンタ」


そうして男がまあええわ、といい


「行くならついてきぃや。ワイは行く。」

「いってこい」

「いやついて来へんのかい」


そういい、男はテントの中へと入っていった


「さぁ、成功するかしないか…どっちだろうな。任せたぞ。『大叫』」

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私は、レツハさんの話を聞いていた。なんでもここ最近、森の中に奇妙にも人間の死体があちこちに転がっているらしいのだ。しかも決まって私たちの鍛錬場の近くに。最初はヘインがやったのではないかと思われていたのだが


「俺はつきっきりでこいつらをみてる。それに抜け出せば一発でわかるからな。俺じゃないことは誓える。」


といってた。確かにつきっきりで見てるし、抜けるなら抜けるで空間に亀裂が入る。そう言う兆しも全くなかったし、おそらくヘインではない。


「なんとも奇妙な話だよなぁ…考えていても仕方がないことなんて分かってはいるんだが、どうしても気になってしまうんだ。」

「奇怪だな。だが分からないことをいつまでも考える方が時間の無駄だ。俺らの害はないわけだから、放置で良くないか?」

「まぁそうか。ならべつにい「その答えなら知っとるで」

「「「「!?」」」」


その突然の声、この場にいる誰もが知らない声が聞こえて、全員がとてもびっくりしていた。


「みなさんどうもこんにち…わっ!?」

「誰だお前、知らない顔だな」

「ちょちょちょ!いきなり危なすぎやろ!殺す気なんか!?」

「返答次第ではその可能性もある」


突然現れたその男に対して、ヘインはすぐさま棘をその男の喉元に突き立てた


「単純に今アンタらが話してるその内容についての答えを知っとるって言うただけなのになしてそげぇことするんや」

「人の住居の中に勝手に入ってきてもの言うやつに対して警戒することはおかしいことか?」

「せやな。おかしいことやない。むしろえらいことやと思うで。殊勝な心掛けや。でも敵意はないんや!信用してくれへん?」

「無理だと言ったら?」

「それまでやな」


その答えを聞いたヘインは驚き、喉元に突き立てた棘をゆっくりと下ろした


「理解してくれたんか?」

「信用はしていないが、話を聞く価値はあると思ってな。」


男はホッとしたように焦った様子から次第に落ち着きを取り戻していった。


「で、そのさっき話題の答えなんやけど、それワイの仕業や。」


聞き覚えのある声で、男はそういう。


「…目的は?」

「アンタらの鍛錬を邪魔させたくなかっただけや。困るやろ?邪魔されたら。それに、ワイらの目的の一環でもある」


思い出した、隠れ里のところいた時に勧誘しにきた男の人だ。邪魔させたくなかった。この言葉はこの男の本心にも思えるが、全くもって、真意はわからなかった。


「へぇ…なるほどな。ところでメイプル、お前、こいつに会ったことあるだろ」

「え…あいや、まぁ、会ったことはあるけど…なんで突然?」

「お前の反応だよ。わかりやすすぎ。」


反応をずっとみてたってこと?結構観察してるなぁ…


「せやな。そこの嬢ちゃんには会ったことあるなぁ。隠れ里のところだったかいな?」


その言葉を聞いたヘインが棘をまた突き立てる


「なぜ隠里のことを知っている?」

「わわわ、だから勘違いやって!俺らも一応あそこの里長とは面識あるんやって!信用できひんのなら確かめてきてもええから!」

「ヘイン、棘をおろせ。話を聞かねぇと先に進めねぇ」


レツハさんがヘインに対して少し語気を強めてそう言う。すごいギクシャクしてる…


「…」


ヘインがフードの男に対して睨みながら棘をおろす。


「あ、ありがとな兄ちゃん。流石にビビったわ…」

「本題を話せ。俺もアンタを信用してるわけじゃねぇ。」


ヘインほどではないが、やはりレツハさんも強く警戒しているようだ。


「結論急げっちゅうことやな…しゃーない。簡単に言えば、アンタらを『異形衆アンダース』に勧誘しにきたんや。」

「『異形衆アンダース』?聞いたことのない組織だな。」


ヘインがそういうと男は笑い


「そりゃそうやな。知らへんのも無理ないわ。わりかし最近結成された組織やからな。別に断ってもええで?」

「…なぜ俺たちを勧誘してきた?」

「それはワイらにもわかりませんわ。全部ボスの意向やからな。」


なにそれ怪しすぎるんですけど…流石によく分からない組織の勧誘には乗れないな


「なら、断らせていただくとする。

その組織も怪しすぎるし、第一にお前のことはどうも信用できない。」

「まぁ断られる思うとうたわ。しゃーないわな。信用させることができるものとか一つも持ってないんやから。」


すると男は後ろに向き


「また勧誘しにくるわ。アンタらが首を縦に振るまで勧誘するからな!それまでにもっと強くなるんや!」

「ちょ、待て!」


その言葉が届くことはなく、男は颯爽とその場を去っていった


「…『異形衆アンダース…か」

「情報収集もかねて俺らは行動するぜ。お前らは鍛錬の方に集中してくれ。」


どうやらまた、これからのことについて話さないといけないようだ。でも、レツハさんたちが調べてくれるのなら鍛錬に集中しても良さそうだ。そんなことを思いながら、今日という日が終わりを迎えるのであった

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「お、戻ってきたな。どうだ?成功したか?」

「この感じを見て成功してはるん思っとんならアンタのお目目は腐りきっとるってことやんな?」

「ははは!そんな酷いことを言わなくてもいいだろ!」


快活な男は上機嫌に、方言混じりの男は不服そうにそう言った。


「まあでも、これからの楽しみが増えたってことにしとった方がええかもな?」

「『異形衆アンダース』にもまた期待の新人が入ってくると思えば、確かにそうかもしれないな。」


今回はどちらの男も笑いながら


「さ、今回はそろそろいくとしますかね」

「もう行くのか?」

「しゃーないやろ。それに、一段と強くなった姿を見るのもまた一興やと思わん?」

「はは、確かにな!」

「ほな、もうそろ戻るで。早めに戻ってボスに報告して1日ダラダラするんや」


男は笑い、姿を消すと、もう片方の男は呆れ


「お前はそれが一番の目的だろ。ブレないな、全く」


そう言いながら木々の中から忽然と姿を消した。

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