#2 避難、そして戦闘

私はメディさんに連れられ、医療箱や最低限の食料が入っているであろう箱がある緊急避難所のような、なにもない殺風景な場所へと来ていた


「ここは...?」

「村の中で問題や、さっきみたいな襲撃があった時に避難する場所です。最低限生活出来る物資などはここに保管されてあります。」

「なるほど...」


やはり緊急避難所だったらしい。しばらくすると、沢山の人が入ってきた


「メディさん、この人たちももしかして...」

「はい、もれなく皆さん全員『異形』です。警戒なさらなくても、みーんな『異形』なので心配いりませんよ」


なんとここにいる沢山の人達全員が『異形』らしい。『異形が暮らしている村』と言うばかりに、50人はくだらない数のように見えた


「あとは、ヘインさんが何とかしてくれるまで待機しましょう。」


さっきしていたとても心配そうな目をして、そうメディさんが言った。


「...強い、とは言っても、心配なものは心配なんですね。」

「...なんだ、バレてましたか。...はい、とても不安です。強いのは事実ですし、彼のことは信頼しています...ですが、心配なんです。ダメですよね、こんなの...信頼していないみたいな...」


メディさんはさっきまでの元気な感じとは打って変わって、元気なさげに、顔を俯かせた


「...なにもダメなことはありませんよ。信頼していても、心配するのは当たり前のことです。それに、心配すること自体は何も悪くないですよ。」

「...メイプルちゃん...」


メディさんは顔をあげ、少し潤んだ瞳でこちらを見た


「...一緒に祈りましょう。彼が、無事に帰って来れるように」

「...はい、そうですね...えへへ、ついさっき初めて会った子に元気づけられちゃいました。ありがとうございます♪」


メディさんはさっきの元気な感じを取り戻して、そしてドアの方向を見ながら手を祈るようにして


「無事に帰ってきてくださいね...ヘインさん...」


と、そう、呟くのであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

俺は診療所から轟音が聞こえた方向へと急いで向かう


「...さあ、どこまで行ってやがるかな。」


ここに来る直前に、何個か生命反応を感じた。普段は魔獣や森の中に住む獣だったりするのだが、今回ばかりは感じが違った。生命反応の他に「魔力」を使った痕跡が残っていた。そして俺はそれに対して既に検討がついていた


「チッ...なぜバレた。まあいい、生きて帰さなければいいだけだ。」


俺は今回来た種族のことを忌々しく思っている。そこに俺自身の私怨はない...とは言いきれない。というか、私怨はある。


「今回来たやつは誰一人として絶対に逃さない。」


向かっているうちに、今回侵攻してきた種族達が見えてきた


「やはりか...めんどくせえヤツらだ。」


俺は、先頭のやつの前に降り立った


「貴様は...『スパイク』!」

「スパイク?誰だソイツ...俺の名前か?」

「貴様以外に誰がいるというのだ!」

「あぁ、そうだったな。」


どうやらこいつら『人間』は俺たち異形に変な名前を区別するためにつけているらしい。中でも俺は帝国内で重要指名手配なのだそうだ。


「全員、攻撃の陣形をとれ!奴を始末しろ!」

「冷静だな。複数人だからか?」


普通は指名手配されているような人間が自分の前にいたら恐怖するはずなのだが。そんなことを考えていると、前列の2人の兵士が俺に対して斧槍を振り下ろしてきた


「殺せ!」

「...バカどもが。死ぬのはお前らだ」


振り下ろされた斧槍を俺は両腕で弾き、その持ち主を俺は自身が持つ異形で心臓を貫いた。


「さ、こんな風に串刺しになりたいやつがいたら来な。相手になってやる。ま、どちらにしてもお前らは殺すつもりだがな。」


兵士たちはさっきの威勢の良さから一変して、たじろぎ始めていた。


「はっ、最初だけかよ。」

「何を!全員、こいつを仕留めろ!」


分隊長らしき人物がそういった後、兵士たちが雄叫びにも似た叫びを上げてこちらに向かってきた


「味方を指揮するのはいい事だ。だがな分隊長さん。」


俺は分隊長へ、こう言葉を投げた。


「お前が冷静じゃなくちゃ、この戦場じゃ誰が冷静でいられる?」


俺は向かってきた兵士を1人、また1人と殺していく、ある者は刺され、ある者は首が飛び、1人、またひとりと殺していく度に、兵士が恐怖していくことが、分かりやすくなっていった。


「雑魚どもが。実力の差すらも分からなかったのか?お前らにとって危険なヤツらにゃ勝手にそっちで名前をつけてるくらいだ。それくらい普通わかるだろ。」

「ふざけるな...話と違うぞ...!なんなんだよ...お前は一体なんなん───グシャ」

「お前らもよく知ってる異形さ。ただのな。」


俺は1人ずつ恐怖に陥れながら殺していった。1人ずつ殺していくにつれ、辺りに血の生臭い匂いが漂う。そして、ついに分隊長1人になったときには、腕も血塗れ、血なまぐさい匂いが辺りに充満していた。


「さて、お前で最後だ...と言いたいところなんだが、お前にゃ聞きたいことが山ほどある。色々情報を吐いてもらわないとな。」

「く...おのれ...!はあっ!」


分隊長が剣を持ち、俺に対して振り下ろす。俺は横にズレて避ける。だがそれを呼んだのか、完全に地面に切先が着く前に、横に剣を薙いだ。


「おお、やるなお前、そこら辺にころがってる死体共とはわけが違いそうだ。」

「仲間を...侮辱するなァっ!」


分隊長が今度は激しく剣を振るう。だがそれも俺には届かない


「相手が悪かったな。さ、1度気絶しとけ。愚か者が。」


俺は瞬時に分隊長の背後を取ると、手刀で相手のことを気絶させた。


「さ、安全になったと伝えるか...」


そして俺は、仲間たちがいる方向へと踵を返したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る