第3話 捜査情報
僕は第一発見者ということで、警察署へ連れて行かれた。倒れていた人は、その場で死亡が確認されたのだ。
春日たちは、僕が第一発見者だと刑事に伝えて、
「悪いが、僕たちは先に帰ってるから」
と言って、とっとと帰ってしまった。
入れ替わりに、明石が駆けつけてくれた。僕が救急車を呼んだ後、明石に電話したから。
警察署の会議室で、僕と明石は事情聴取を受けた。こういうのは
僕が刑事に死体発見時の
「明石君が来てるんだって?」
その人が言うと、僕たちを事情聴取していた刑事が立ち上がって言った。
「田中管理官、お疲れ様であります」
田中管理官と呼ばれたその人は、刑事に向かって頷くと、僕たちに向かって歩いて来た。
「君が明石君?」
僕に尋ねたので、
「いえ、僕は三上です」
「ああ、ワトソン君ね。じゃあ、君が明石君だ?」
明石は黙って軽く会釈した。
この人が
結局明石があの事件の謎を解いて、その夜に電話で連絡したので、早期解決になったんだけど、あの後明石は県警にスカウトされたんだっけ。
「あの
「いや、まだ情報が手に入ってないので」
明石は無表情に話しているが、県警のスカウトを嫌がっていたから、内心は快く思っていないのかも知れない。
「死因は
田中管理官が学生に向かって情報を漏らしたので、刑事は驚いているぞ。
「後頭部を鈍器で叩かれたらしい。凶器は現場付近からは見つかっていない。死亡推定時刻は今日の午前0時から2時の間。被害者は
重要な情報まで漏らし始めたので、刑事はオロオロしているぞ。
「同僚に出世争いで敗れたそうで、だいぶ荒れていたらしい。最後は酒場から追い出されたそうだ。それが昨日の午後10時頃。ただおかしなことに、遺体の発見現場は被害者の家とは反対方向だ。現場に出血痕がほとんどなかったことから、殺害されたのは別の場所だったと考えられる。今のところ、掴んでいる情報はそんなところだ。君はどう思う?」
「殺害現場があそこじゃないというなら、靴や衣服に引きずられた後はあったんですか?」
明石が問うと、
「いい着眼点だ。引きずられた跡はなかったな。ということは、帰る途中で襲われて、殺害された後に車であそこまで運ばれて遺棄されたと思われる」
明石は黙って考え込んでいたが、やがて言った。
「警察の分析が正しければ、事件は程なく解決に向かうでしょう。ですが、もし間違っていれば解決までは長引くことになります。いくつか別の仮説も考えておいた方がいいでしょう」
田中管理官はニヤリと笑った。
「やはり君は面白い。その仮説を聞かせてくれ」
「いや、まだ考えを整理している段階です。仮説は実証して初めて真実となりますから」
それ、『ガリレオ』のセリフじゃなかったっけ?
「大学に帰って取り組んでみますので、ちょっと時間をください」
「わかった、君の考えがまとまるのを待っているよ。ぜひ連絡をくれ」
「あっ、それからもう一つ」明石は右手の人差し指を立てて言った。「被害者の身長と体重、それと家族構成を教えてください」
「えーと」田中管理官は、メモ帳を取り出した。「身長は165センチ、体重は50キロ、家族構成は妻と大学生の娘と高校生の息子だな」
「・・・わかりました。それでは一旦これで失礼します」
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