同じ目に
良子が自殺した。
そのニュースを聞いた時に最初に思ったのは、ニュースやSNSに私の名前がでるのではないかという焦りだった。
彼女に対するいじめの首謀者として名前が上がるとすれば私だっただろうし、他の生徒だってそう思ったはずだ。
しかし、学校からはいじめがあったという証拠は見つからなかったとの発表があり、私は安堵した。
何事もなかったかのように、皆が元の日々に戻っていく。
ただ一人、良子の母親を除いては。
良子の母親は事件以降、半狂乱で学校付近をうろついている姿が目撃されていた。
良子の家は母子家庭であり、母親にとっては唯一の家族を失ったわけなのだから、当然のことかもしれない。
生徒たちからの聞き込みの中で、おそらくどこかから私の名前が出たのだろう。
最終的には彼女は私のところにたどりつき、一言だけ言った。
「あんたも同じ目にあわせてやるから」
彼女の目には狂気が宿っており、恐怖した私は家へ逃げ帰った。
いつか道で刺されるのではないかと怯えながら暮らす日々が続いたが、それ以降彼女を見ることはなかった。
風の噂では、遠くの病院に行ったらしい。
それから10年が経過した。
私は不愉快な記憶の残る故郷を離れ、幸福な結婚生活を送っている。
きれいな新居に優しい夫、そして産まれたばかりの新たな命。
出産直後の私のところに、赤ちゃんを連れてきてくれる看護師さん。
「自分の子どもってかわいいでしょう」
そう言った彼女の顔には見覚えがあった。
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