抗う者たち

「また侵入者か」

 私は無意識につぶやき、自分の内にひそむ攻撃性に少し驚いた。

 しかし、私の役割と上の意向を考えれば、これくらいの意識でも良いのかもしれない。

 彼らは基本的には無害な存在だったが、上の者たちはそうは考えていないらしく、私のような警備の数は年々増え続けていた。

 また、時期的なものなのか最近は侵入者側の数も増加傾向にあり、それに備えてこちらの数を増やしている。


 そうして両者の緊張感が高まる中、大きな問題へと発展するまでのカウントダウンはずっと前から始まっていたのだろう。

 こちらに最後の新人が配備されたことをきっかけとして、攻撃司令が発令された。


 多くの武器が投入され、吹き飛ばされていく侵入者たち。

 彼らからすれば青天の霹靂だったかもしれないが、こちらからしてみれば当然の帰結であり、準備が整ったから攻撃を始めただけといった感じだった。

 侵入者の排除、ただそれのみを目的として働く私たちには攻撃の手を緩める選択肢はなく、その目的を達成する頃には周りはすっかり荒れ果てていた。


「これで良かったんでしょうか」

 新人が少し疲れたように言う。

「大して害があるとも思えない相手をここまで攻撃して。その結果こちらの方がダメージを受けているのでは?」

「我々が考えることではない」

 にべもない私の返答に新人は黙り込む。

 実際問題、考えるなどという高度なことは私たちのような末端の仕事ではないのだ。

 私たちにできるのはただ与えられた役割をこなすことだけ。

 まだ3月も始まったばかりで、忙しい日々が続くはずなのだから。



「ハックション!」

 大きなくしゃみが出て、鼻水も止まらない。

 この季節、周りの人間が苦しむのを横目に自らの幸運に感謝していたコウタだったが、ついにその時が来てしまったらしい。

 明日からは学校にティッシュを箱で持っていかないと、目薬も一応用意するか、とコウタは各種対策装備を整えることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る