こだわり

 僕には少し変わった友人がいる。

 彼にはこだわりがあり「自分で選んだ」ものでないと愛着が持てないというのだ。

 彼が言うには、両親を幼い頃に火事で亡くした影響によるものらしい。


 新年会のビンゴで彼に流行りの大きなクッションが当たったことがあった。

 彼はニコニコと笑いながら受け取っていたが、帰りのコンビニで粗大ゴミ回収用のシールを買っていた。


 彼が熱帯魚を先輩から押し付けられたことがあった。

 水槽や周りの設備ごともらった彼だったが、半月後に僕が遊びに行った時には水槽ごとなくなっていた。


 彼のことを大好きな後輩が、半ば無理やりに彼と付き合ったことがあった。

 1ヶ月もしないうちに二人は別れ、後輩は自殺未遂まで起こしたが、彼は特に気にしていないようだった。


 そんな彼だが、友人である僕には本当に良くしてくれる。

「自分で選んだ」相手には、どこまでも優しい人間なのだ。


 それでも、考えてしまう時がある。

 もしかしたら、彼は嘘をついているのではないか。

 彼がこだわりを持つようになったのは、原因不明の出火で両親を亡くした後ではなく、前だったのではないか、と。

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