第29話 同時攻撃【※※※和彦視点】
和彦は春樹に叫んだ。
「いくぞっ、同時攻撃だっ」
「ああ、それしかないみたいだねっ!」
そして二人同時に呪文の詠唱を始める。
「暗黒の翼よ、空を裂け! 次元の彼方で源と源を戦わせよ、その火花をこちらへ呼びよせよ! さあ火花よ、我が意のままに舞い踊れ! すべてを爆発の向こう側へと! 」
「神よ! 聖なる言葉を我に教えたまえ! その言霊は悪なる存在を貫き通す! 神聖なる言葉よ、わが敵の魂に響け! 」
魔法使い系最強の攻撃呪文、
ラスボス戦のために練習しておいた、とっておきの攻撃。
いかなるモンスターでも、この攻撃を防ぐことなどできやしないはず、であった。
だが。
「
「
その長い詠唱を終え、呪文を発動させた瞬間であった。
和彦たちの目の前の天井がパッカーン、と開いた。
天井、とはいうが、実際は地下9階の床もかねている。
そして地下9階には、二千体のゾンビがぎゅうぎゅう詰めに押し込められていた。
そいつらが、ドサァツ! と一気に落ちてきて、和彦たちの前にまさに腐肉の塊となって山になったのだ。
腐っているとはいえ、人間二千人分の質量は、その攻撃呪文の効果を防ぐの十分なものだった。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
叫び声とともに燃え上がり、崩れ落ちていく二千体のゾンビ。
しかし、これでは、ゾンビの山の向こうにいる慎太郎たちにはとてもじゃないが攻撃は届いてないだろう。
「くそがっ、もう一度だ!」
ゾンビ二千体分、どういう魔力をもって召喚したのかはわからないが、すくなくとも連続して召喚できる量ではない。
魔力は無限ではない。
無限に魔力を補充するすべなどはない。
実際、和彦たちはこのラスボスの玄室に突入する直前にMPを回復させたが、それには超レアアイテムである祈念の指輪を消費しなければならなかった。
何らかの代償、もしくはそれなりの休息をとれるだけの十分な時間――時には週単位の――が必要になるのが魔力やMPの回復なのだ。
もう一度、同じように防ぐことなどできるはずはなかった。
「暗黒の翼よ、空を裂け! 次元の彼方で源と源を戦わせよ、その火花をこちらへ呼びよせよ! さあ火花よ、我が意のままに舞い踊れ! すべてを爆発の向こう側へと!
「神よ! 聖なる言葉を我に教えたまえ! その言霊は悪なる存在を貫き通す! 神聖なる言葉よ、わが敵の魂に響け!
ゴトン! という音が聞こえた。
それは、地下9階の天井、つまり地下8階の床が開いた音だった。
そして同じように二千体のゾンビが降ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます