25日目:ボッチかな?ボッチじゃないよ?コミュ障よ?

 そんなこんなで本当に帰りの時間となる。

 名残惜しい温泉、そして毎朝準備されるバイキングたちとの別れ。。。


 ではなく、講義の締めとして、最後に各自のスピーチコーナーが催されることとなった。

 みんなそれなりに抗議で身についたことや、楽しかったこと、そしてお世話になった方々へのお礼など、至極真面目に、時に涙を誘いながら、いろいろなスピーチをしている。

 特に女性陣の中にはこれからの抱負やらなんやらと、それはもう夢のあふれるスピーチをする人もいる。

 そんな中にいて、「ボク」はというと、、、

 『 はい、え~お疲れさまでした。この5日間いろいろと話しかけていただいてありがとうございました。また、どこかで、お会いする機会が、もしあれば、その時ななにとぞ宜しくお願いします。』

 とまじめさのかけらもない。いや、もうみじめさしか見えない、皮肉たっぷりの締めのスピーチをしてしまう。しかもまぁ、短いのなんのって。

 だが、考えてみてほしい。同期が200人を超えているのである。まず間違いなく、他の研修で会うことはないし、会っても「ボク」を「ボク」と認識して話しかけてくれる人がこの中に何人いるだろうか?いや、いない。そして、「ボク」側から声をかけることは絶対にない。なぜなら、顔が覚えられないから。そんなわけで、根性の別れみたいなスピーチになってしまったわけだが、それに対し、

 『 そんな寂しいこと言わないで下さいよ~』

 と、笑顔で突っ込みを入れてくれる人がいる(班毎のスピーチなので簡単な茶々入れはありなのである)。Fさんである、、、いやぁ、いい娘。この娘、マジでいい娘。

 思えば、「史たん」を見初めてくれた子だし、こんな「ボク」にも話題提供をしてくれた。始めから終わりまで本当にいい娘のFさんであった。「史たん」のお嫁さんに欲しいくらい(え?気が早い?)。


 そうこうするうちに講義は無事に幕となるのだった。

さて、じゃぁ、帰るという段になると、それぞれ随所に固まり、楽しげに話し始める。

 バスの到着までまだ時間はあるらしく、しかも一台には乗り切らないということで、順次搬送ということらしい。が、それにしちゃぁみんな講義室から動こうとしない。

 どうやらこの研修でうまく親睦を深められた人たちも多くいたようで、名残惜しいとばかりに皆延々と話を続けている。

 そんな中を「ボク」はというと、、、もちろん、颯爽と突っ切り、荷物をむんずと掴むと、いの一番でバスの停車場所に移動しましたとも?

 ええ、誰ともお話なぞせず、あいさつも交わさず、何なら目を合わせることすらなく、一目散に動きましたとも?

 そして、時間がかかるとか言っていたのに、速攻できた一便目のバスにわき目も降らず乗り込み、無人の座席の前側の目立たぬ窓際に座って、隣の席はトランクケースで埋めましたとも?

 だって、研修でしょ?無駄話するために来たわけじゃないんだからね!

 そして、すかさずイヤホンをして、、、からのスマホのゲーム画面を注視!これぞアウトドア派な引きこもりの真骨頂である。


 え?それは流石にコミュ障に過ぎるって?

 ええ、ええ、知っていますとも。これがどれだけコミュ障な行動かなんてことはね?

 でもね、それ以上に「ボク」は「ボク」を知っているのですよ。

 何がって?だってさ、こうでもしないと、このリアルボッチ君こと「ボク」は、誰か声かけてくれないかなと無駄にそこらへんをうろうろして、見知った顔の人のそばに行こうとするんですよ?挙句、結局声すらかけられず、一人で恥ずかしくなって、そんな自分に嫌気がさして、結局ぎゅうぎゅうに近くなってしまったバスに片身狭く乗り込むことになるんですよ?そして、その心の傷を抱えたまま、やることと言ったら、今と全く同じ態勢になるんだから。

 ならば、最初から人とのつながりは断つ!

 これは立派な戦略であり、防衛本能のたまものでもあるんだよ!

 だから、だから、この行動は間違っていないのだぁぁぁぁ!

 

 という自らの心の声は聞かなかったことにして、ゲームに勤しむふりをする「ボク」でした。

 でもね、「史たん」よ、君はできれば、残ってわいわい騒いでいる側の人間になっておくれよ?

 多分そっちの方が、楽しいし、悲しい気持ちにはならないからさ。


 とまぁ、そんなこんなで、気が付けばバスはこの合宿の始まりの地に到着していた。

 そういえば、出発の時も無駄に一番に乗り込んだっけなぁ。などと、感慨深げにボーっとしていると、降車の波は大分落ち着いたようで、「ボク」もゆっくり立ち上がる。そして、とてとて車中を歩き、降車口近くで、運転手さんに向け、

 『 ありがとうございました。』

 と、最後のお礼をして降りる(「ボク」だってこういうことくらいはできるのさ。)。

 バスを出ると、ひんやりと夜気をはらみ始めた夕暮れの空気が頬かすめる。

さぁ、ここからがまた冒険だ。我が家までは更にバスと徒歩を駆使して、帰らなければならないぞ。と、内心で気合を入れる。

 何せ、前回の失敗がある。

 どうやら電車はあかん(あの後調べたが、結局どこで降りても駅からは5km以上離れており、その分歩く必要があるのだ。そんなの疲れる!)!ということは学んだ。

 よって、今日はバスで帰ることに前々から決めていた。

 決めてはいたが、うちの最寄のバス停の名前は分からずじまいな訳で、まぁ、有名な駅があるんだからそこ方面行きに乗れば、きっと通るだろうなぁんて思っていたのだが、、、安易だよ、安易すぎるよ「ボク」。

 今思うとそう呪わずにはいられない気持でしかない。

 結論から言おう、結局なってしまったのだ、迷子に。


 一本目に乗ったバスは途中までは良かった。順調に進み4㎞程進んだところで、突如想定したルートから外れてしまう。思った通りのルートに戻ることを祈って乗り続けるも、4つ目のバス停を過ぎたあたりで、

 『 こりゃ無理だ。』

 と、祈りを辞め、自らの足で復帰することに決めた。

幸い降りたバス停は想定ルートから大きくずれていなかったこともあり、ショートカットを企みつつ元の道へ戻ろうと、土地勘のない街をひた歩くこと、20分。。。が、なぜか(いや、ショートカットとか考えて知らん道行くからだろうが!という声はお静かに願いたい。)戻れない。

 それでも泣きべそをこらえつつ信じた道を更に15分ほど進むと、どうにかこうにか、予定のルート(さっきはぐれたバス停はいったい何個前の物なのか?くらい先に歩いてきたようだが)に戻れはしたようだ。そして、都合のいいことにバス停もある。

 だが、ここで「ボク」の弱い心は疑心暗鬼にかかってしまい、せっかく来たバスをまさかのスルー。次は15分後という無駄を省くために、バス停間をあるいて移動しようととぼとぼ歩くと、その間にバスに追い越されるという失態まで犯す始末。

 結局ちゃんとバスに乗れた頃には日はとっぷりと陰ってしまっていた。

 当初予定したバスに乗れれば、40分の道のり。

 だが、かかった時間は2時間半。

 まぁ、それでも前回よりは大分スムーズ(?)に、我が家にたどり着きましたとさ。

 めでたしめでたし。


 よ、よし、明日は「史たん」と「おかたん」をお迎えに実家に行くぞ!

 (迷子は大丈夫かって?平気さ、自家用車にはナビがあるんだもの!)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る