第2話 女子トークがヒントに


「それじゃあまた帰りにね―――放課後、楽しみね?」

「ソウデスネ」


 教室に到着すると、カレンは友人の女子グループへと向かう。

 カレンとはクラスも同じだが、学校の中ではあまりからまない。

 もう俺たちも中学までとは違う。いつまでもべったりな関係ではなかった。


 俺は俺でそそくさと自分の席に座る。

 教室の一番後ろの窓側。最高の席を入学当初のクジで勝ち得ていた。


「0、8、0、2、0、0、4、0、1、1、0…………」


 電話番号、あるいは何かのパスワードのように数字を読み上げる。

 一番後ろの席なせいで、クラスメイトたちの数字が嫌でも目に入ってくる。

 0が割と多いな。それにみんな1桁だった。


「ういっす、ゆうき」


 気だるげな声が隣から聞こえてくる。

 こいつは山田太郎。ベースをこよなく愛するバンドマン。中学からの友人だ。


「おっす、眠そうだな」

「昨日のバイトが終わってから、バンドメンバーと朝まで、な」

「まったく寝てないのか?」

「1時間は寝たぞ」

「ほぼオールじゃねーか」

「まあな、先生来たら起こしてくれ」


 机に突っ伏す太郎。律儀にもタオルを敷いて枕替わりにしてやがる。

 そんな太郎の数字は2だった。


「太郎、2っていう数字に何か思い当たるところはあるか?」

「んあ? 2……オレ2月生まれだぞ」

「なるほど……なんでもない、寝てろ」

「おう」


 誕生月じゃないよな。0がいるし、3桁だっていたし。

 本当にこの数字はなんなんだよ。

 そもそも、なぜ突然数字が見えるようになったんだ。

 だけど、それよりもを知りたくてしょうがなかった。


 そんな時、2つ前の席で集まっている女子3人組の会話が耳に入ってきた。


「ねえねえ彼氏と最近どうなの?」

「ひ・み・つ」

「いいじゃん教えてよ~」


「実はGWにね、旅行に行く約束をしたの」

「えーっ、もしかしてお泊まり!? 嘘ぉ~」

「やるじゃ~ん。ホテルとか予約できたの?」


「そこは大丈夫。カレのお兄さんとその彼女さんとも一緒なの」

「4人?」「うん」

「部屋はどうするの?」「別々で取ってもらった」


「やっば~。こっちは映画デート。私の彼氏、映画ばっかりでワンパターンなのよ」

「ウチもGWに彼ピと遊園地行くけど、あいつ奥手だからなぁ」

「えへへ」


 明日から始まるGWを前にして、彼氏との話題で盛り上がる3人。

 まだ入学したてで名前が分からない。仮にA子B子C子にしておくか。

 とりあえず数字を確認する。

 映画に行くA子が0、旅行に行くB子が4、遊園地に行くC子が1だった。


 うん、やっぱり何もピンとこない。


 隣でイビキをかき始める友人をよそに、窓の外を見て時間を潰すのだった。




 ――――――――――――――――――――




 大型連休のGWが終わり、久しぶりに学校へ通う。


 GW中はカレンに付き合わされて買い物に行ったりもしたが、だいたいは家で寝て過ごした。


 あれからも数字は消えなかった。

 しかも、未だに数字の意味が分からない。

 表示される数字に変化も無い。親父は12、母さんは2、カレンは1のまま。

 俺の周りにいる他の人の数字にも一切変化が無かった。

 何か変化があればヒントになるんだけどなぁ……。


 いつものようにカレンと登校し、教室で別れる。

 席に着き、HRが始まるまで窓の外を見ていると、例の3人組の女子から会話が聞こえてきた。

 ふと視線を移して女子3人組を見ると―――彼女たちの数字には変化があった!

 

 彼氏と映画に行ったA子は、0から1に。

 旅行に行ったB子は、4から6に。

 遊園地に行ったC子だけは1のまま変わらず。


 A「ねぇ、GWどうだった?」

 B「楽しかったよ~。カレのお兄さんも優しかったの」

 C「いいなぁ~。ウチは相変わらずキスもしてこない。もう別れようかなぁ」


 B「えー、キスもまだなの? もう付き合って半年でしょ?」

 C「……うん」

 A「もう自分から誘ったら?」


 C「ムリムリ。そんな勇気ないよぉ~」

 B「でも、いつまで経っても先に進まないよ」

 A「そうそう。こっちは思い切って誘ってみたら、上手くいったし」


 BC「「えっ!?」」

 A「あっ……」


 B「彼氏と進展したの?」

 C「そうよ、教えなさいよぉ~」

 A「実は―――しちゃった。お互い初めてだから大変だったけど」


 BC「「えええええええええええええ」」

 A「ちょ、ちょっと、静かにして!」



 B子とC子が大声を上げてため、クラス中から注目を浴びている。

 それに反省したのか、それ以降はひそひそと会話をしているため、もう聞こえなくなってしまった。



 ―――俺は女子3人組の会話を聞いてが頭に浮かんでいた。


 ―――もしかしてこの数字って、なのか……?


 彼氏と初体験をしたらしいA子の数字が0から1になっているのが根拠だ。


 もしこの数字が経験人数だと仮定すれば、思い当たるフシがある。


 例えば、以前見かけた幼稚園児の列。あの子供たちは全員0だった。

 また、比較的若い人の方が数字が小さい。特に小学生以下はほぼ0ばっかり。

 『キレイ、カッコいい=数字が大きい』訳ではなかったが、それでも数字が大きい人はだいたいオシャレな人が多かった気がする。


 点と点が線で繋がる感覚。


 この仮説は当たっているのではないか。そんな気がしてきた。


 ―――なら、するべきことは検証だろう。






 ―――――


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