3、魔女狩りヘンゼル&グレーテル

 見た? ねえ今の見た? 見ました? 血沸き肉躍るさいっこうのショーだったじゃねえか!

 ヘンゼルのドタマ吹っ飛ばしからの赤ずきんの両腕切断、臓物引きずり出されながらのキャットファイトで首筋に咬みついて相打ちとは恐れ入る!

 さすが赤ずきんと双子だぜえええええええええ!!!!!!!!!!!!!!


 っと、失礼。

 いささか興奮してしまいました。


 いやあ、いいショーでしたね。

 そうそう、こういうのですよ。こういうのを皆さん期待しているのですよね。


 七匹の子ヤギ兄弟のやられっぷりにも目を見張るものがありましたし。

 やっぱり怯えて隠れている獲物を一匹ずつ追い詰め仕留めていく様にはロマンすら感じますよね。

 様式美と言いますか、最後の一匹が機転を利かせてグレーテルに傷を負わせた辺りも実に童話らしい展開で胸アツでした。

 で、その傷が最後のキャットファイトで効いてましたからね。


 後は、そうですね、ブレーメンの音楽隊は期待したほどではありませんでしたが、ラプンツェルは悪くありませんでした。


 なんせあの怯えた表情、ぐっと来るものがありませんでしたか? そう思いますでしょう? ねえ?

 深窓のお姫様というのを一人投入しておくのも悪くありませんでした。

 そう思いますよね?


 ええ、緩急が大事なのですよ。

 誰も彼もが戦闘狂ではね。

 いやあ、実にエキサイティングな一幕でした。


 いっそ生かしたままひん剥いてオーディエンスの中に放り込んでやってもよいかと考えていたのですが、それは止めてよかったです。


 いやいや、これ、そもそも童話世界ですからね。

 お子様方も安心安全の全年齢対応ですから、そういう色事は他所でお願いしますよ。

 なんせ赤子はコウノトリが運んでくる世界なんですから。


 まあうっかり野獣のような者がいたいけな娘をなんかこう、そういう悪いことを致してしまって?

 それがうっかりモニターに写されてしまって?

 それをオーディエンスの皆さんがご覧になってしまっても?

 当方としましては一切その責を負うものではありませんが。


 いえいえ、いやいや、はっはっは。

 ああ、もちろん。ここだけの話ですが、ちょっと弾んでいただければ、カメラワークのひとつも都合することやぶさかではございませんよ?

 さらに弾んでいただければもちろんお好みの娘を都合いたしますとも。ここだけの話ですが。


 ええ……え、人魚?


 あ、ああ……いえ……ただ随分と特殊な趣味をお持ちだな、と……。


 まあ、いることはいますが、あー、まあ用意はできますよ。ええ、できますとも。おやまあ、こんなに。


 いいでしょう!


 ちょっと今オーディエンスにいらっしゃいますので、少々おまち……いえいえ、失礼なんでもありません。

 気になさらず楽にしてそのままお楽しみになってください。

 だいじょーぶだいじょーぶ。はーい、大丈夫ですよー。

 ここは安心安全の童話世界。

 みんなハッピー、みんな幸せ。だぁれも死なない殺さない、はーい、はっぴー。


 おっけー? おっけーですね?

 はい、いい子いい子。


 あ、ちょうど人魚姫の都合が付きましたので、ぜひぜひお楽しみくださいませ。せっかく大金叩いたのですから。


「はーい! 紳士淑女のクソ野郎ども! 男女子供に老人家畜の吹き出る血に興奮する鬼畜ども! 次に何が見たいか知ってるぜ! 化け物の殺戮だろおーけーお前らの望みを叶えるお姫様のご登場だその腐った目えかっぽじって見やがれ! 『人魚姫』VS『野獣』のエキシビジョンマッチだああああああああ!!!!」

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