第3話

「思ったんですが」


「はい」


 月下先輩に連れられて、瑠璃学園の廊下を堂々と歩く俺。普通にこんなに堂々と大丈夫なのだろうか?


 だって、ヒロインは当然女の子しかいない。ということは、必然的にこの瑠璃学園は女子高ということになる。男居たらダメでしょ。


「俺こんな堂々と廊下歩いてて大丈夫なんです?」


「春休み中ですので、寮でのんびりしている子が殆どですよ。教室の方まで来るのは余程の訓練狂だけです」


「えぇ……」


 訓練狂……いるんだ。後、普通に春休みの概念あったのね。


「それに、今は校舎の定期点検をしているため立ち入り禁止という嘘のメッセージが全生徒に回っています。校舎外には人はいても、中には居ませんよ」


「そこまでやります?」


「バレたら大変なことになりますからね……着きましたよ」


 月下先輩が言い、顔を上げるとそこには学園長室とちょっと豪華そうな気の札に力強く書かれていた。


 ノックを三回やった後、扉の向こうから「入ってよし」と女の人の声が聞こえる。失礼します、と月下先輩が声をかけ、ドアを開けた。


 月下先輩が入ったのを確認してから、俺もそそくさと後から入り、部屋を見渡す。


 部屋はめちゃくちゃデカい。何畳あるかは到底見ただけでは分からないが、大体学校の教室二つ分位の大きさ。しかし、置いてある家具は手前側にテーブルが一つ。そして、それを囲むようにソファが四つ。


 そして、奥側にはいかにも校長先生とかが座ってそうな豪華の机。そこに、学園長は何故かゲン〇ウポーズで俺を迎えてくれた。


「初めまして少年。瑠璃学園学園長の長月美冴ながつきみさえだ」


「小鳥遊裕樹です。初めまして」


 挨拶をされたのでぺこりと頭を下げる。どうしよ、俺あんまりマナー詳しくないから大丈夫かな。失礼なことしないように気をつけなければ。


「花火。別に退室しても構わんがどうする?」


「いえ、私も小鳥遊さんの検査結果は気になるので、折角なので聞かせてもらいます」


「分かった。それでは単刀直入に言うぞ少年」


「はい」


 これから俺の処遇が決まる。処刑か、監禁か。


「お前は人間だ。良かったな」


「そうですか、では無抵抗で殺され────え?人間なの?」


 え?そうなん?こんなに圧倒的不審アビスなのに?


 俺のそんな様子を見た長月学園長は、フッと笑った後、ゲンド〇ポーズを解いてから机を叩いた。


 すると、部屋の明かりが無くなり、カーテンが自動で締まり、長月学園長の後ろの黒板が光出した。


 あれ、電子黒板だったんだ。


 光出した電話黒板は、1回暗転した後に俺の体を映し出した。わかりやすいように、レントゲンだった。


 その中で一際目を引くのが、俺の心臓横にある小さな穴……いや、点と表現するべきか?とにかく黒いのが小さいけどある。


 あれは……なんだ?


「さてと、どれから話すべきか……」


 ふーむ、と首を捻らせた学園長。悩んでいる学園長に、月下さんが手を挙げた。


「では、何故小鳥遊さんが人間なのか。それを聞きたいです。小鳥遊さんを最初に発見したヒロインからは、背中からアビスと同じ触手を出していたと報告もありましたし」


「なるほど。ではそこから話していくか」


 たんっと学園長がまた机を叩くと、レントゲンに写ってる黒い点にフォーカスが当てられた。


「まず、少年の心臓の横にあるこの黒い点なのだが、まぁアビスだな」


「え……」


 え?アビスって人間の体内に潜むこととかあるの?寄生されてますやん!


「だがしかし、このアビスは所謂休眠状態であると、彼女が言っていた。全くもって害はなし。二度と活動することはないので、安心しちゃって下さいとの事だ」


「えぇ……」


 いや全くもって安心できないんですが……心臓の横部分だよな。レントゲンの位置的から見て……この辺────


「あぁ、引っこ抜こうだとかは思うな?恐らく、お前が胸に風穴開けようが、位置ごと吹き飛ばそうが、再生力の方が高い」


「………」


 いや、やろうとしたことバレテーラ。引っこ抜くのがダメだったらこの辺吹き飛ばそうとしてたんだが……だめかー。


「アビスによる暴走の危険性がないから、人間判定をした。これでいいか花火」


「じゃあ、触手はどうなんですか?あれは、明らかに俺の背中から────」


「少年のではなく、少年の体内に居たアビスからだ」


「──────……そうなるんですか?」


「そうなるだろう?なら、私の目の前で今すぐに触手を出してみた前。少年がアビスなら余裕だろう?」


「ふむ」


 少し試してみることに。うおおおお!出ろー!!と心の中でめちゃくちゃ気合いを込めて念じてみる。気分はスーパー〇イヤ人。


 しかし、どんなに念じても出てこない。よくあるイメージ系かとあたりを付け、脳内で触手をイメージするも反応無し。


 ……人間、なのか?俺は……。


「出ないか?出ないならそういう事だヨシ。花火、これでいいか?」


「えぇ。ありがとうございます学園長」


「と、なると……次はあれがいいか」


 一つ、説明し終えた学園長は、机をもう一度タンと叩く。すると、またまた画像が変わり、今度は内臓のイメージ図みたいなような物が映し出されたのだが、全体的に青い。


「これは、そこの少年の内蔵機能を表しているのだが……見たとおり、殆ど機能を失っている」


「エッ……」


 マ?そんなんほぼゾンビじゃん。


 まさか、俺はアビスではなくゾンビだった……?

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