NTRされ男?#③ただフラレただけなんだが他人が入ると拗れる、コレは何にでも言える

 イケメンが今すぐ会いたいというので、その日の夜に会うことになった。

 

「お前が自殺したって聞いてよ…何日か前にドラムやってたアイツ…ロクタも自殺したんだよ…だから俺、もうどうしていいかわからなくてよ…本当に良かったよ…」


 俺の話がどうこうより、ドラムが死んだという事に驚きを隠せない…俺達が高校時代に組んだバンドは、特に普段から仲が良くて組んだ訳では無い。


 ギターの俺とドラムは昔から楽器をやっているから…きっかけは俺がイケメンをボーカルにバンドやろうとして、イケメンがドラムを勧誘してきたのだ。まぁイケメンと呼んでるが実際は確かにマコトだっけか…イケメン呼びに慣れすぎてよく覚えていない。

 だからバンドで繋がっている様な関係だった。


 色んなバンドのサポートをライブハウスでやっていた俺はその距離感が普通だったし、ドラマーもクラシックだかをやっていて同じ様な感覚でやっていると思っていた。

 でも、流石に死んだ…自殺っていうのは…

 

「マジで?アイツしんだの?いや、病院入ったってのは前聞いたけど…そうか…ショックだわ…」


「いやいや!?ショックだわ…じゃないわ!俺はお前も死んだと思ってたんだぞ!?分かるか?ロクタの家族から連絡あって死んだ…自殺したと言われ、お前の実家に連絡したらお前の姉ちゃんから死んだんでしょ?…アンタ達の間では自殺したんじゃないの?って言われた時の俺のメンタル!?俺も死ぬんじゃないかって思うだろうがよ?」


「ハハハ…漫画の見過ぎだよ。姉ちゃんもキレてるなぁ

…でもまぁ…アイツがなぁ…」


 あぁそうだ、確か名前がロクタだっけな…オレとアイツはお互いの名前も正確には知らなかったかもなぁ…後、姉ちゃん、何で死んだことにすんだよ…


 ただ、とにかくまぁ死んだから言うわけじゃないけど…アイツのドラムは上手いし格好良かった…俺じゃなくてアイツこそバンドでも…それこそクラシックでも続けるべきだったんだよなぁ…


「ヒロヤも死んだって聞いたからアレだけど…ロクタの遺書に俺達の事書いてあったらしいよ。2人は絶望しか無い自分の人生にあった、一瞬の燦きだってよ…だからアイツの母親から俺に連絡来たんだよ」


「ハハハ、アイツ…褒め過ぎだろう…」


「俺もそう思うよ…もっとベース真面目にやっとけば良かった…」


「いや、それはまた違う話だし、普段から真面目にやっとけよ…ロクタもドラム止めてガン見してたじゃん…」


「いや、俺は真面目なつもりだけどな?お前らが上手過ぎなだけで…それにちょっと下手な方がカッコいいだろ?」


「何それ?天国のロクタもドラム止めてガン見だよ…」


 周りやロクタの家族は…もしかしたら俺達の事を冷たいなんて言うかもな…

 でも俺達はこんな感じだった。卒業したら別の道を歩んだから。偶然会ったら良いな程度だ。

 俺は桐子との道を選んで…結局、その道は閉ざされたけどな。


「それでさ、まぁこんな時に言う事じゃないかも知れないけどさ…俺は今売れない役者まがいの事もしているのよ?それで役者の才能も無いからさぁ、事務所の人に昔やってたなら何か音楽とかやってみれば?って言われて…もし良かったらどうだ?」


「いや、なにが?」


「何が?じゃなくてっ!また一緒にやろうぜ!?バンド名変えてさ!お前はまだギター弾けるだろ?」


 突然の話に頭が追いつかなかった。俺が…またバンド?


「んー、いや良いけど…ヘルプ程度だよ?本格的にはもうしないから…」

 

 やれ解散だ音楽性が違うとか、それでも食っていく為に全力を出していた時とは違う。

 辞めると決めた時からその情熱も全部消えた。

 多分、気付いてしまったんだなぁ…桐子の為だったんだ。俺が音楽をやっていた理由。


「何か煮えきらないな…まぁ良いや何でも。とりあえず他に良いメンバーいたら教えてくれよ。ロクタみたいな奴はいないと思うし、事務所に言われてるとはいえ、俺はベースのままで良いから。弾きながら歌えないし」


 コイツの条件もやれる事も大概雑だと思うが…まぁどうしよ…それより気になる事がある。


「それは考えとくよ…それよりその…桐子はどうしたんだ?何か変な噂しか聞かないけど…何が姉ちゃんがキレてるっぽいし」


「あぁ…桐子ちゃんの事かぁ…あんまり…言いたくねぇなぁ…」


「勿体ぶらずに教えてくれよ?姉ちゃんがおかしな行動起こしそうで怖くてさ…復讐とか言うから不安で…」


 元カノとはいえ親族が復讐とか正直やめてほしいんだよなぁ。俺、生きてるし。


「俺も本人から聞いてないから何とも言えないけど…桐子はSNSで配信やっててよ、そん時に『彼氏が亡くなったけど頑張る』みたいなのがエピソードで出たんだって…んで、それをローカル局だけどテレビがニュースで取り上げてよ、この数日は狭い界隈で話題になってるよ」


 そこから知る最近の桐子…俺がネットの話をするとあまりいい顔しないから話題に出さなかった。


 しかし桐子は…何と言うかな…配信者として結構活動していたらしい。それも際どい感じで…

 マスクをして配信していたから可愛いで評判になっていたらしい。

 そうだなぁマスクしたら人は変わるからな…実際は姉ちゃんやら…ヒーさんなんかの方が一般的に綺麗だろう。俺はそんな桐子が好きだった。

 外見だけじゃない、一緒にいると心が安らぐ桐子が…


 アァ…しかしそれは駄目だろう…俺はネットがあまり好きでは無い…特に動画配信はやったモン勝ちな空気があるからだ…いや、違うなぁ…同じライブハウスで演ってた奴らが何人かネットで売ろうとして酷い結果だったからだな…


 とにかく嘘で…いや、嘘じゃないか…微妙だけどそれは駄目だろう…

 俺の知る桐子はそれでやりきれる程心が強い訳ではない…


「後、コレは噂程度だけどな…何か変なサークル入ってたろ?そこのリーダー的な人と付き合ってるらしいとか…ラブホから出てきたとか噂が…」


 ラブホってアンタ、桐子…もうちょい考えて行動しろよ…もっといくらでもやりようが…いや、今の俺が言うまい…俺はもう別れているらしいし。

 でも…どう考えも姉ちゃん知ってるよなぁ〜

 

「色々思う所はあるけど…ウチの姉ちゃんがそういうの一番嫌うのよ、だから…どうしようかなぁ…」


「俺も良く知らないけどヒロヤの姉ちゃん目茶苦茶怖いもんな…」


 思案していると一つだけ思いつく…俺のためにキレてるとしたら俺以外で止められる…話を聞いてくれる人…あんまり話したくないけど…


 俺は一枚の名刺を手に連絡した。そう、例の探偵事務所に。 

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