伝説の暗殺者、異世界で勇者になります

蔵品大樹

異世界への転生

 俺は暗殺者だ。

 「コードネーム『モーガン』、聞こえてるか?どうぞ」

 「あぁ。聞こえてる。どうぞ」

 「どうやらボスのチェフは会議室にいると言う情報が入った。どうぞ」

 「了解」

 俺はすぐにボスのいる会議室に入る。

 しかし、そこに暗殺対象であるマフィア組織『アリアン』のボス、チェフ・ロシツキーはいなかった。

 「いない…」

 「かかったな」

 「なっ」

 俺は頭から麻袋を被せられ、意識を失った。




 「くっ………ここは」

 「お目覚めかい?モーガン?」

 俺がいたのは、地下の暗い部屋。目の前にはチェフがいた。

 「チェフ…」

 「ケケケ。お前は組織に裏切られたんだよ」

 「組織に?」

 「あぁ。いまやお前は組織内でトップの暗殺者だ。ボスのウィリアムは自分の地位をお前に譲りたくないそうで、俺と組んだんだよ」

 「くっ、ボスが俺を見捨てたのか…」

 「お前は『伝説の暗殺者』って言われてたが、こんなに呆気ないラスト最期になるなんてなぁ」

 「人間誰しもミスはある」

 「じゃあ、死んでくれ」

 チェフはピストルを構え、俺の頭に鉛玉を貫かせた。




 「ここは…なんだ?」

 次に目覚めたのは、よくわからない所であった。

 地面は雲で、周りは黄色い。

 「どこだ?ここ?」

 「ここは天国である」

 俺に声をかけたのは、禿頭の髭を生やしたおっさんであった。しかし、おっさんはなぜか上半身しか見えなかった。

 「天国ねぇ…こんな俺でも天国は行けるんだな」

 「私は神だ」

 「へぇ、神様って実在するんだねぇ」

 「それでは、お前のプロフィールを読む。本名、根室芳和ねむろよしかず。死亡年齢46歳。職業は殺し屋組織『ジェミー』の暗殺者。ジェミーではモーガンという名で活動していた。死亡日、2023年、5月24日。午前0時43分。死亡の原因は組織がモーガンを裏切り、チェフという男が頭に銃弾を撃ち込んだから」

 「それだけか?」

 「お前は人間を何人も殺すという大罪を犯した」

 「それで、俺は地獄に行くのか?」

 「いいや、ここに地獄という物はない。地獄は人間が造り出した創作物なのだ」

 「じゃあ俺はどうなるんだ?天国か?」

 「否、貴様は転生の刑じゃ」

 「転生の刑?なんじゃそりゃ?」

 「まぁ、味わえばわかるさ」

 すると、俺の身の回りが黒くなり、そのまま落下した。

 「うわぁぁぁぁぁ!」

 俺はまた、意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る