第6話 ジェネラルは強そうだな

 ゴブリンの森に入った。

 森とは言ってもメインの通路は一本道が続いており。その両脇には木や草がおいしげってるって感じだから道に迷うことはない。


 出現するモンスターはゴブリンの森と言うだけあってゴブリンばかり。


 そんな森の中を歩きながらミーナが話しかけてくる。


「なにかいますねこの森」

「ん?」


 俺は脳筋だから分かんないんだけど、ミーナにはなにか分かるらしい。


「気をつけてください。ゴブリン以外のなにかがいます」


 そう言って一段階姿勢を低くして敵からの視認性を少しでも下げる。


(へー。こんなことすぐにできるんだ、優秀だな、この子)


 すぐにできるのはさすがは孤児ってところか。


 面白いよね。


 俺も真似してみよう。


 ……しばらく歩いてると腰が痛くなってきたのでやめました。


 それでもずっと同じ体勢をキープしてるミーナを見てると年の差だよなって思う。


 腰痛くないのかな?これ。


 と思っているときだった。


「これはなんでしょうか?」


 ミーナの言葉で俺も彼女が見てる方に目をやった。

 そこにあったのは


「ひでぇな」


 動物が肉を食い荒らされたあとの死がい。

 なにかがここで食事をしたんだろうな。


 そんなことを思ってると


「隠れて」


 そう言って俺の手を引っ張って茂みに連れ込むミーナ。


 いきなりなんだって思ったけど、なんで隠れたかはしばらくすると分かることになった。

 

「グルルルルル」


 俺たちの前の通路を一匹の巨大なウルフが通る。


(おぉ、でけぇ。こわ)


 そう思ってたら俺たちに気付くことなく通り過ぎていくウルフ。


「もう大丈夫ですよ」


 ミーナがまた俺の手を引いて茂みから出ていく。


 そんなミーナを見て思う。


「へー、おもしろいじゃん。今のウルフの接近があんなに早く分かるんだな」

「【気配察知】と【聴覚強化】のスキルですよ」


 そう言って魔力を手から出してそれを霧のようにして周囲を漂わせるミーナ。


 俺も学ぼうとしたことはあるけどできなかった技術だ。


(うらやましい)


 ちなみにこれ、冒険者になるなら必須と言われている技術でもある。


 冒険者にとって生き残ることは最重要課題であり危険が近付いていたら回避しなければならないためだ。


 まぁ、俺はそんな初歩的なこともできないんですけどね。


「やるじゃん?」

「スラムで生き延びるのに必要でした。危険な人物がいないか、とか。調べてるウチに身につきました」


けっこう優秀に思えるけど


「でも団子は食べるんだね」

「あ、あれは、たまたまですよ。おなかがすいてて、迷わず飛びついちゃいました」


 ふーん。


 まぁいいや。いじるのはここまでにしておこう。


「これからはあんなもの食べるなよ?それと先に行こうぜ」


 そう言って先に進んでいく。


 それにしてもあのウルフには注意したいね。

 見た目からしてめっちゃ強そうだったし。


 ミーナが戦わずに茂みに隠れたところからして、かなり強いやつだと思う。


 そうして歩いていると


「ギィィッ!!!」


 一匹のザコゴブリンが茂みから飛び出してきて。


「【スタブ】」


 ミーナがゴブリンの懐に潜り込んでナイフをその首筋に突き刺して倒していた。


 ドロップアイテムは


(【ゴブリンの牙】か)


 たしか買取が20ゼルとかだったが、俺はドケチだからな。


 無料でもらえるものはもらっていく。


 森の奥を目指して進んでたら言ってくるミーナ。


「アイテムドロップですがすべてイカロス様にお渡しします」

「うん。わかった」


 いくら奴隷と主人の関係でもそのあたりはハッキリさせておいた方がいいよな。


「まぁ俺がいらなかったり、ミーナに必要そうなものは渡すからそこは安心してよ」

「よ、よろしいのですか?」


 驚いたような目で見てくるミーナに答える。


「とうぜんじゃん?」

「あ、ありがとうございます」


 お礼を言ってきたミーナ。

 別にお礼を言う必要なんてないんだけどな。


 俺はあたりまえのことをしているだけなんだし。


 さて


「ジェネラルゴブリンのとこいくか」

「はい」


 そろそろジェネラルゴブリンをやりにいく。


 そうして道を歩いていると左右にあった木や草が途端に途切れた。


 俺たちが踏み込んだのはだだっ広い円形の空間。


 この場所にはなにもない。


 しかし、俺には分かっちゃうんですよね。


「ここだろうなぁ、ジェネラルゴブリンと戦うのって」


 だってあきらかにボスと戦ってくださいと言わんばかりの空間なんだもん。


「どうして分かるんですか?」

「超能力者だから」


 すると。


 ガサガサ。

 俺たちの視線の先、対面にあった草木をかき分けて一匹のバカでかいゴブリンが姿を表した。


 あいつの正体は見たらすぐにわかった。


「【鑑定】スキルにより得た視覚情報を共有します。【共有】スキル発動」


 ミーナが情報を共有してくれる。

 俺がこういうスキルを使えないのを察してやってくれてる、優秀だよな。


 すると俺の視界にも浮かび上がるゴブリンのステータス。



名前:ジェネラルゴブリン

レベル:125


弱点:頭 首



「ギガァァァァァァァァァァ!!!!!!」


 ゴブリンはバカでかい声を上げてその手に棍棒を持っていた。

 それを肩に担ぎながらずんずんとこちらに向かって歩いてくる。


 それを見てミーナが後ずさる。


「な、なに?この個体、レベルが。普通高くても50なのに」

「たしかに強そうだな。攻撃はしなくていい。ターゲットだけとってくれ」


 コクッ。と首を縦に振ってミーナは走り出した。


 俺も落ちていた木の枝を拾い【武装強化】


「ギガァァァァァァァァァァ!!!」


 ブン!


 ゴブリンが棍棒を振り回しながら近くにいるミーナを追っていく。


「うまく、懐に入り込めない」


 命令以上のこと、つまりゴブリンに攻撃を当てに行こうとしているらしいけど懐に入れない様子だ。


(やっぱ一人じゃ無理だよな)


 俺も走って、ゴブリンとの距離を詰める。


(相手はゴブリンの中でも強い個体だ。的確に背後から弱点を奇襲する!)


「【スラッシュ】」


 飛び上がってから、木の枝を振りゴブリンの首を斬った。

 すると。


 ボトリ、一撃で胴体と頭が離れるゴブリン。


「え?」


 おどろいた。

 だって一撃でゴブリンが倒れたから。


(なんだこれ。どういうことだ?強そうなのは見た目だけで弱い個体だったのかな?ま、まぁラッキー)


 そう思いながらミーナに目をやると。

 ミーナがその場でぺたんと座り込んで俺を見てくる。


「どうした?そんなびっくりしたような顔して」


 木の枝をその場に捨てて聞く。


 その木の枝を視線で追いかけるミーナ。

 もう一度俺と木の枝を交互に見てから悲鳴をあげた。


「え?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!!」


 なんだなんだ?

 なんでそんなにおどろいてるんだろうな?


 俺も一撃で倒した時は少しおどろいたけど、そんなに声を出しておどろくことでもないだろうと思が。


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