第8話婚約者

「え、えっと、ユウリさんちょっと見てもらえるかな?」

「はい?」

「いくぞぉ!はぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


いきなり昨日婚約者になったばかりのアクト様が、人差し指を天に掲げてそう叫び始め、急に叫び始められた事に少し怯えていると、アクト様の人差し指から小さな光の玉が打ち上がり、それは大きさは小さかったが綺麗な炎の花が咲き誇った。


「はい、打ち上げ花…火………」

「す、すごい!」


まさか過去に自分が失敗した魔法をやり方などは違うが、それを私とは違って生まれ付き魔力量の少ない婚約者が、最も簡単にニヤリと笑いながら行使した事に驚き、素直に口から賛辞の言葉が零れ落ちた。


そしてそれと同時にアクト様は、顔色を悪くしながらそのまま私を押し倒すかの様に倒れて来た。


「きゃっ!あ、アクト様大丈夫ですか?」


そう言ってアクトの顔を見たユウリだったが、その顔色は青を超えて真っ白になっており、口からは泡を吐き全身痙攣していた。


「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」


あまりの出来事に12歳の少女の頭ではすぐにキャパオーバーになり、驚きと恐怖で自然に涙がボロボロと零れ落ち泣いていると、その泣き声を聞いたゲイルが急いで駆けつけ、アクトが単に魔力切れを起こして倒れた事を説明された。


「うちは生まれ付き総魔力量が多いけど、逆にホワイト家は生まれ付き魔力量が少なくてな、アクトくんは実家でもほぼ毎日の様に魔力の殆どを一度に使い切って、倒れる事が何度かあったらしいんじゃ。だからそんなに気にせんでも良いぞ、それに魔力切れとは言っても数時間寝たら魔力も回復するから、流石にこの後泊まるのは無理そうじゃから、迎えが来たら帰るがそこまで気にしなくても大丈夫じゃぞ」

「……本当?後遺症とか残らない?」

「大丈夫じゃ、安心せい」


そうしてうちにホワイト家の執事の人が、またか……みたいな顔をしながら、気絶しているアクト様を片手で担ぎ上げると、そのままアクト様を馬車へと押し込めるとそのまま頭を下げて帰って行った。


それをお父様と一緒に見送った私は意を決してお父様に相談した。


「お父様!」

「ん?どうかしたか?」

「私に魔法を教えて欲しいの」

「お?おお!ど、どうした急に?わしは全然良いが本当に良いのか?」


過去の事件を知っているお父様は本当に大丈夫かと聞いて来たが、私はアクト様が見せてくれた小さな花火を見た時に、昔の魔法が好きだったあの頃の思い出がフラッシュバックして来て、過去のトラウマを超えるほどの魔法を使いたいという欲求が再燃して来た。


「うん、大丈夫!私がこんな所で立ち止まってたら、それこそ彼も喜ばないと思うし、それに何より私も婚約者としてアクト様の見ている景色を一緒に、隣に立てる様な人になりたいから」

「そうか………………わかった。だがそこまで言うなら途中で投げ出すんじゃ無いぞ」

「はい!」


――――――――――


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