マッチングアプリで出会った男

 これは、まだYさんが大学生だった頃のお話。

 当時、出会いを求めていたYさんはマッチングアプリで恋人を探していた。

 そんなYさんはマッチングした男性の中でメッセージのやり取りから意気投合した男性と初めて直接会う事になった。

Yさん「おはようございます。O駅前に到着しました」

男  「おはようございます。僕ももうすぐ着きます。見つけられるように服装を教えてくれますか?」

Yさん「白いワンピースを着ています」

男  「O駅までは電車で来ましたか?」

Yさん「最寄りの駅なので、車で来ました」

男  「そうなんですね。実は僕もO駅が最寄りなので、車で向かっています。車種と車の色を教えてくれませんか?」

Yさん「お話から、近所に住まれてるのかなって思ってましたけど、最寄り駅も一緒だったんですね! 車種は〇〇で、ピンク色です」

男  「・・・・・・」


― 十分後 ―


Yさん「あの、あとどれぐらいで着きますか?」

男  「・・・・・・」

 男からの返事は無いが、既読のマークは付いていたのでYさんは男が自分の送ったメッセージを読んでいるにも関わらず無視をしていることに不信感を抱いた。

Yさん「お返事頂けないようなので、今日は帰ります」

男  「分かりました。では、家まで付いていきますね」

 Yさんは男から送られてきたメッセージを読んで、全身に鳥肌が立った。

Yさん「どういう事ですか? 〇〇さんはO駅に居るんですか?」

男  「最近、退屈だったんです」

男  「だから、遊び相手が欲しいなって思って」

男  「帰るんですね。ついていきます」

 男からのメッセージが怖くなったYさんは、急いでパーキングに止めた車に乗り込むとO駅から離れた。

男  「R市方面に住んでいるんですね。一緒です」

 メッセージを読んで、嫌な予感がしたYさんは自分の車の後ろから黒いワンボックスカーが付いてきている事に慌てふためいた。

 間違いない、あの男が付いて来ている。自分の住んでいる家を特定するつもりなんだ。

 確信したYさんは、慌ててウィンカーを自宅の反対側へ出すと高速道路に入った。

男  「どうして、高速に乗るんですか? 僕に嘘を吐いたんですか? 返事ください」

 そこから、Yさんは後ろを付いて来るワンボックスカーを振り払う為に、ひたすらに高速道路を走った。

 どれだけの時間が経ったのか、一心不乱に運転していたYさんが気が付いた時には後ろにワンボックスカーの姿は無くなっていた。

 思わず安堵のため息を吐いたYさんは、二つ隣の市から帰宅した。

 それ以降、Yさんはマッチングアプリをアンインストールし、二度と使わなくなったとのこと。

 アプリを消す直前、男からの大量の恨みや憎悪を綴ったメッセージが来ていた事を思い出すと、今でもYさんは鳥肌が立つと言う。

 もし、あの時普通に帰宅していたのなら、自分がどうなっていたのか……。

 考えると恐ろしくてたまらない。

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