首狩神社

 これは、私の知人が聞いたお話。

 まず初めに、私は心霊スポットと呼ばれる場所や事故現場、自殺現場など人の死に関わる場所に好奇心で足を踏み入れる事をお勧めしない。

 何故なら、そういった場所は行くときは楽しいかもしれないが、行った後に後悔するケースが多い為である。

 決して、取り返しのつかない後悔だ。

 今回のお話は、愛知県のA市にある「首狩神社」という愛称で呼ばれる神社に行ったHさんの体験談だ。

 首狩神社は心霊スポットとして有名で、TVで取り上げられた事もある神社である。

 本当の名前は「浅間神社」であるこの神社が何故「首狩神社」と呼ばれる事になったのか、その所以は江戸時代まで遡る。

 長くなってしまうので、詳細は省くが簡潔に語るとこの首狩神社は関所の裏道に位置しており、関所で厄介事を避ける為に、険しい裏街道であるが人の通りが多く、特に女性の通りが多かったそうだ。

 女性や金品に目を付けた山賊が、女性を殺してはこの首狩神社の階段の一段目と三段目にその首を晒していたそうだ。

 そんな過去を持つ浅間神社はいつしか「首狩神社」と呼ばれるようになった。

 この首狩神社だが、階段の三段目を踏んではいけない。であったり、列で歩くと最後を歩いている人が消える。山賊に慰み者にされた女の霊が現れる等、様々な怪奇現象が噂されている。


 首狩神社に肝試しに訪れたHさんは、友人二人と一緒だった。

 Hさん達が首狩神社に行く事になった理由というのも、近所にある心霊スポットであったから、そして退屈だったからとその程度の理由だった。

 怪談が苦手なHさん自身は心霊スポットに行くことを反対したが、友人二人が行きたがったので仕方なく同行する事にした。

 首狩神社の噂は聞いたことがあるHさん達は、噂が本当か検証する為にわざと階段の三段目を踏んだり、列になって階段を上ったりしたそうだ。

 深夜の山中という事もあり、周囲も暗く十分怖いのだがしかし、女性の霊を見る事は無く、どこか拍子抜けしたHさん達。まぁ、心霊スポットなどはこういうものか。などと言って帰る事にした。

 帰りの車の中、運転していたHさんは後部座席から聞こえて来た着信音に驚いた。

 深夜の山道を運転しているだけで怖いというのに、急に大きな音が聞こえて来てHさんは心臓が飛び出しそうな程に驚いた。

「こんな時間に誰からだ?」

 そう言って、後部座席に乗っているHさんの友人が携帯を見ると、携帯に表示されている名前に「え?」という奇妙な声を上げた。

 携帯の着信音がずっと鳴り響いているというのに、一向に電話に出る気配の無い友人にHさんは気味が悪くなって声を掛けた。

「ねぇ? 誰からなの」

「Rから」

 Rさんから電話が掛かって来るはずが無い事を知っているHさんは、何を言っているのか理解が出来なくて聞き返した。

「何言ってんの? そんな訳無いじゃん、だって、Rは隣に座ってるはずでしょ?」

「あ、ああ。今も俺の隣に座ってる。おい、なんか言えよR」

 友人がRさんに声を掛けるが、Rさんは俯いたまま何も言わない。

 Rさんの様子が明らかにおかしい事に気付いた友人は声を荒げた。

「おい! 誰なんだよ! お前誰なんだよ!」

 その時、鳴っていた携帯電話の着信音がピタッと止まった。

 今までRさんだと思っていた人物が顔を上げると、その顔について。


 詳しい事をHさんは私に話してくれなかったが、「人では無かった」とだけ言った。

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