家での一幕


 魔法を使えるようになった日から、僕は毎日のようにエリーに魔法をかけていった。

 その効果は目にわかるほどで以前にも増して訓練中のエリーの動きはよくなっている気がした。


「今日も、頼む」


「わかった。先にベッドに行ってて?」


 最近、習慣になってきた回復魔法を使ったマッサージは晩御飯の後の時間に行うようにしている。


「お風呂の準備もしないと…」


 習慣になってきてわかったことだけどマッサージの後は運動した後くらいよく汗をかくのでそれを洗い流すためにお風呂に水を沸かす魔道具を入れ、準備を万全にしてからマッサージを始めるようにしている。





「……ん」


「ここ、多めにしとく?」


「そうだな…」


 僕も、ある程度慣れてきたからかエリーの反応や表情からどこに疲労がたまっているのかわかってきた。

 加えて、最初は体を触っていくだけだったけどマッサージも併用した方が効果が上がっているのがわかってきたのでできるだけそれが活かせるように工夫を凝らしていた。


「……」


「……」


 





「気持ちいい……」


「あぁ、そうだな……」


 魔法をかけ終えた後、ほとんど眠りかけているエリーに声をかけてお風呂に連れていった。

 最初は前と同じように一人で入ってもらっていたけど、エリーが何度もお風呂の中で寝落ちするのでさすがにいつか風邪をひくと思った僕が一緒に入ることにしている。


「背中、流すよ」


 僕とエリーの二人で少し狭いくらいのお風呂場には時々僕の首輪とお湯の音が響くだけだった。





 お風呂から上がり、僕としては後は寝るだけになった。


「ふぁ~あ。僕、もう寝るね?」


「あぁ。おやすみ」


 チュッとエリーの口にキスしてから僕は先に寝室にある大きなベッドに入って、自分の体に残った魔力分を消費するように回復魔法をかける。

 これもマリアさんから教えてもらったことで魔力は中途半端に残っていると逆に魔力の回復が遅くなるらしい。

 横になったとたん急激な眠気に襲われた僕はそのまま眠りについた。


「……」









「寝ているのか」


 寝室からユートの寝息が小さく聞こえてくる。

 音を立てないように寝室に入って、寝ているユートの頭をなでると女の私よりもサラサラの髪の毛の感触が伝わってくる。


「ユートを連れていくようになって半月…。みんなのユートに対する態度は問題なし。ユートに近づいてくるやつもいない、か」


 ユートを連れていくようになってわかりやすく私の周りにいいことが増えている気がしているし、団員たちからも最近『綺麗になった』と言われたりいいこと尽くしだ。

 それに伴い、言い寄ってくる奴らが増えて迷惑もしているが。



「前のあいつは本当に殺してやろうかと思ったがユートがより近くにいてくれるようになったわけだし、あいつにも感謝した方がいいくらいだな」


 私のユートを取ろうとしたあの幼馴染の女。あいつがいなくなってユートの一番近くにいるのはあいつから私になった。


「これから少しずつ、少しずつだ…」


 家から出さずに一生私だけしか見せないというのも捨てがたいが逃げられては意味がない。

 これから少しずつ関われる人間を減らしていき、ユートの目には私しか映らないようにすれば、ユートのすべてが私のものになる。

 

「ユート、お前を愛しているぞ」


 




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どの回でもいいので誤字脱字報告とかしてもらえると助かります。

あとがき部分はそのうち消します。

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