第6話 過去と未来

【まいったなー、どうなっちゃったんだろ?】


ユキは手を繋いでいたが、涼の姿はない。

涼はこの世界のどこかに飛ばされたと推測。

TAに連絡を取ってみる。


【ユキです。今起きたのはレベル3の消滅ですか?】


【そのようだ、小規模消滅だ。無事だよな?】


【はい、ただ一緒にいた涼さんが不明です、

そちらから、何か解りますか?】


【何も解らない。消滅だが大きくない。ユキの場所は変わってない】


【解りました。こちらで探してみます】


どうも涼とタイムパラドックスは密接に関連するようだ。とりあえず暗闇が消えて通常の景色になってきた。


ユキは周りを見回すと、


【ユキ、無事!?】


るいが走ってこっちにきた。TAからサポートの連絡が入ったとのことだ。頼りになる高能力者るいの

サポートは有り難い。


【涼さん、どこに行ったんだろ?るい、何か感じられる?】


【涼ちゃん、飛ばされたの?】


【るい、やっぱり涼ちゃんって呼んでるの?もう解るよ、涼さんのこと気になってるの。親友だから隠さないで】


【……ごめん。ユキ】


【何があったの?涼さんと】


【…怪我しそうなって、そこで抱きかかえられて、るいのこと守ってくれたの、それで】


【好きになったの?涼さんを?もう起こったりしないけど、未来の彼女のこと邪魔しちゃ駄目だよ】


【解ってる、それに涼ちゃんと付き合うとか本当にないから。私の身勝手でタイムパラドックスなんて起こしたらどうしようもないでしょ。それにもしもタイムパラドックスが起きても付き合うとしたら、ユキ、あなたです。私はその資格ない】


【ありがとうね、るい。とりあえず涼さんを探そう。手伝ってくれる?】


【もちろん!こんな姿だけど、中身は大人。そしてTAでトップの高能力者だからね、念のためこういう場合は過去に行くこと多いよね、そもそも未来ってタイムパラドックスで消滅してしまって、これから作られる訳だからね】


【じゃ、おそらく涼さん、過去に戻ってる可能性高いね。本人は解ってるはずだから、その前提で確認してみる】


それにしても、今後このようなレベル3が頻繁に起きたら、とてもじゃないけど、守りきれない。


タイムパラドックス…これは時間の逆説ってのが

知られてるけど、涼さん、キーポイントになってるような気がする。


涼さん、全ての行動や言動をこの世界の過去に

起きたことを守らないと今回みたいなことが起きるとなると、これはとても難しい。


人の記憶なんて曖昧だし、記憶の改ざんもよくあること。私は涼さんと一緒だったことも記憶の改ざんなのかな?


【るい…私は涼さんと一緒に暮らしていたよね?】


るいはキョトンとして、


【なんで、急にどうしたの?涼ちゃんと一緒だったよね?そこに行ったことないけど、いろいろ聞いていたよ、のろけ話とか。ちょっとムカつくこともあった。だから覚えてる】


【ごめんね、のろけ話とかムカつくよね】


【違う違う!ユキ、涼ちゃんに尽くし過ぎ。ユキなんて涼ちゃんにあんなに尽くすのか解らない。確かに素敵な人だよ。優しさと適切な判断出来る頼りになる人、でもおっちょこちょい!そこが可愛い!って…これ無視して、冗談だから】


【るい…もう大丈夫だからさ、遠慮やめよう。るいが涼さんのこと気になってるの、本気なの解る。涼さんのことでお互い遠慮しない!】


ユキがるいの頭を軽く撫でて、微笑みかけた。


【ユキ〜〜〜、もうその優しさ、最高だね!】


【涼さん、私の全てだったの。涼さんとの記憶、自信持つね、ありがとう、るい。ちょっと涼さんの家に行ってくる。もし戻っていたら最初に行く場所だと思うから】


ユキは走って、涼の家に向かった。


【すみません、涼さんいますか?】


涼の母親が涼を呼んでくれている。戻ってるんだ、あー、良かった。ユキはほっとして座り込んだ。


【ユキです、ちょっと外で話をしていいですか?】


涼はうなずいて、二人は外に。


涼はすかさず、聞いてきた。


【レベル3…って何?】


ユキは涼がどこまで理解しているか確認した。


【覚えているの?なんで?もしかして時間軸…】


ユキの話を遮って、涼もが、


【時間軸調整課のユキって自分で言っていたじゃん】


ユキは決心した。話さないとならないことを。


【ちょっといい?学校行っている場合じゃない!!】


涼に全てを話そうと、ユキは順に話しだした。


【レベル3:本来過去の消滅を意味します。ところが消滅どころかさらに過去に戻りましたね、それも覚えていますね】


【ああ、幼稚園児ね】


えっ、涼さん、やっぱり過去に戻ってその記憶もあるんだ。


【その後すぐに未来に飛ばされましたね】


ここに戻ってきたってことは、その過去の経験は短時間か…そう思って涼を見つめていると、


【同じ小学生だけどね、少し未来っていうか俺から見れば同じ過去】


涼さんは大丈夫、もう全て理解できるはず。

ユキはすかさず、


【やり直しなんです、全て。でも過去はもう別の過去になってしまっている】 


タイムパラドックスだもんね、仕方ない。

何がどこで起きてるか、過去の影響もあるかも知れない。


【???過去そのものに戻ってきただけで別物だろ?】


涼さん、そろそろ限界かな?それにしてもここまで飛ばされていたのによく体力持つなー、涼さん能力者なのか、もしくは目覚めたのか?


いずれにしても、涼さん、やはりこの縦の繋がりの世界の記憶はある。


もう話そう。涼さんの未来は絶対に変えないようにするから。


涼さん、あなたを困らせることはしない。

でも、伝えさせて。これくらいはせめて。


ユキはしばらく目を閉じて、それから一言、


【私は未来のあなたの恋人です】


えっ、これもタイムパラドックス?なんで?

涼さん、それほどあなたに影響あるの?


その後、少しして、涼が倒れた。

倒れる瞬間、ユキが支えた。


【涼さん、大丈夫?】


涼はユキに包まれるように、そっと地面に横になった。その涼をユキは抱えている。


涼さん、あなたのこと、諦めるの?

涼さん、あなたの未来は幸せな結婚生活なの?


もし、許されるなら、あなたを連れて元の世界に戻りたい。


涼を抱きかかえたユキは涙がとまらない。











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