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@bankman

遭遇編

金沢にて .1

-俺はメカニックだ


瀬谷衛せやまもるは自分のことをそう認識していた。


自分について認識する場合、他者との比較が必要になる。衛の周囲を見渡せば、魔術の駆動装置である≪回路≫を設計する者や、実際に構築する者がいて、さらに視野を広げると、魔術の根本原理を研究している者たちもいる。


そういった魔術に関わる全ての人種の中で、衛は、自分が最も魔術をうまく使と思っていた。


これが自惚れであるのを、彼はまだ知らない。



雪が降りしきるJR金沢駅に、衛は降り立った。


乗車してきた新幹線は、東京発の最終便であり、あと少しで日付が変わろうとしている。幸いにして、新幹線の中で、少し仮眠を取ることが出来た。何しろ、今夜は一晩中かかる大仕事が待っている。


衛は改札を出て、タクシー乗り場へ急ぐ。道すがら、違和感に気づき、立ち止まる。


金沢には何度も来ているので、目の前には見慣れた風景が広がっている。いや、少し変わったか。別に北陸に限った訳ではないが、駅前の再開発でタワーマンションやらホテルやらがここ数年、立て続けに竣工して、慣れ親しんだ風景を変えていった。見慣れた風景に少しでも異質なものが混じると、途端に違和感が生じる。


そう自分を納得させて、衛は歩き出そうとした。その瞬間、背後から「瀬谷さん」と呼び止められる。


振り向くと、中年の男性が柔和な笑みを浮かべて立っていた。


加納かのうさん、どうしてここに」


「どうしてって、あなたを迎えに来たんですよ。非常事態だから、打合せを道中で出来るようにしたくて」そういうと、加納はポケットから車のキーを取り出した。どうやら事態は思ったよりも切迫しているらしい。


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