第23話 メインヒロイン①
アリスが闇の彼方に消えた翌日、僕はなんとなく学園屋上に来ていた。
自宅で何もせず過ごすのもどこかバツが悪く仕方なしに学園に登校した。しかし学園に来たところでまともに授業なんて受ける気力はろくに無かった。
結局、行き場所を失くした僕はいつもどおり学園屋上にてモラトリアムを享受することに落ち着いた。
「あー隕石でも降ってきて世界が滅びないかなぁ」
我ながらなんとも女々しく情けないぼやきだ。普段であれば散々とこの世界に訪れる滅亡に非難轟々だったというのにこのざまだ。あまりにも惨めすぎて自嘲の笑みすら沸いてこなかった。
それでもこの場所に留まり続けるのはもしかしたらアリスにまた会えるかもしれない。そんな未練がましいことこの上ない思いがあったからだ。そんなどうしようもないことをずっとぐるぐる考えている。
僕ならこんな屑ゴミなんて御免だね。
来るわけなどないのだ。
彼女は覚悟をもって自ら進んだ。彼女の意思でその道を選んだのだ。
であれば
そう理解しているのに。何度もそう自分に言い聞かせているはずなのに。僕の脳内ではアリスとの会話が何度もしつこくしつこく再生されてしまう。
『貴方はいつも気楽そうでいいわよね』
初めて会った時のものだ。この時は本当に粗大ゴミを見るような目をしていた。
『私、パフェが食べたいわ』
彼女が不躾にも何度目か分からないほど屋上に足を運んだ時のものだ。唐突すぎて最初は我が耳を疑った。パフェは旨かった。
『モブリオン君、私とデートしなさい』
これには本当に心の底から驚いた。この少し前の出来事のせいで、気まずくなって距離を置こうとしたらこれだ。あまりにも彼女らしくて実は内心苦笑した。
『もう少しだけ私に借りられていてね』
満面に広がる星空の下。彼女は少しだけ照れ臭そうに微笑んだ。そんな彼女はあまりにも可憐で僕は思わず見惚れた。
そして僕は一瞬だけ彼女と呼吸を共にした。血の味がするあまりにも不器用で初々しもの。
あの時、彼女は何を思い何の意図を込めてそれをしたのだろうか。今更何を考えたところで無意味だ。
だって答えを問う機会は失われてしまったのだから。
僕に出来ることと言えば、未練がましくあの屋上の扉が開くことを期待するぐらいだ。
ガチャリ。
突然ドアが開く音が耳を貫いた。そこから現れた人物はーー
「なんだソレイユか」
「むむ~なんか凄い失礼な気がするんですけどっ!」
屋上に繋がるドアから現れたのはサクラ色の髪を揺らす小柄な美少女。この世界の元になったゲーム・ファイナルアビスのメインヒロイン。リッカ・ソレイユその人だった。
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