第25話 料理動画 その後

 結局、次の日も俺は彼女の家でオムライスを作ってもらって、動画に使えそうな素材を入手することができた。


 二人で食事をしている最中にマネージャーから連絡があった。姉がしばらく話した後、マネージャーが俺に変わってほしいと言ったようで俺は姉のスマホを耳に当てる。


「あ、優くん?ちょっと昨日の動画さ~。不自然なカットが入ってたよね」

「はい。カットした部分があります」

「いや、怒ってないのよ。多分カメラ落ちた位置が悪くてパンツが見えたとかだったんだと思うしさ」

「それだけですか?」

「そのハプニングって結構、動画的には見どころになるしまだ消してないんだったら見てみたいなって思って。もちろん使うときは全面モザイクとかつけるし」

「…………」

 俺は深く考え込んだ。いくらモザイクの編集がなされているとはいえ、彼女のスカートの中を動画という形で残してしまってもいいものなのかと。


「スカートの中は流石にセンシティブに引っかかりませんか。入る直前までのデータを渡すのでその後はイメージ画像なんかでいい感じに演出してください」

「そうだね。っていうかこれってナナちゃんは知ってんの?」

「知らないと思います。彼女にデータを見られる前に消したので」

「え?言っておいた方が良くない?」

「すみません。俺からは言いにくくて。そちらから伝えてもらえますか」

「ええ~。撮ったのは君なんだしさぁ。というわけで、よろしく」


 マネージャーはそう言って連絡を切った。


 昨日自分がしてしまった過ちもあるため、自分の口からそれを伝えるのは正直かなり嫌なことだった。


 しかし、どうにもならないので姉にそのまま伝えることにした。彼女は少し恥ずかしそうにしながらも「別にいいよ、悪いのは私だし」と言ってくれた。俺は結局動画は消していなかったものの、それを聞いて動画は消去した。


 マネージャーには誤って動画を削除したということにしておいた。マネージャーの反応はそっかという平凡なものだった。


 結局、料理動画は色々撮った結果、最後にできたものをほとんど使うことになった。ほとんど毎日彼女の家で、同じ料理を食べていたのだが、それは全く苦痛ではなかったし、楽しいものだった。


 動画の反響もまずまずのもので、好意的なコメントが多かった。掲示板には男ができただの散々なコメントもあったが、あそこはそういうものなので特に気にしていない。


 それ以降、俺と姉の関係はより近いものになってしまい、家に行く機会も少しずつ増えていった。前まではわざわざ理由をつけたりしていたものが、特に理由もなく、『今日来る?』や『明日空いてるよ』といった短いメッセージだけになっていた。


 同じ事務所に所属しているVtuberのメイさんからも、「もう兄弟って言うよりも恋人みたいだね」なんて話もされるくらいになってしまっていた。


 そんなこんなで、二人で夏休みに関西に行き甲子園を見に行ったり、流行りのスイカゲームを延々としていたり、天皇賞(秋)を東京競馬場に見に行ったり、色々なことがあった。


 ただ、それはあくまで姉弟としてのものであった。色々とエッチなハプニングなどもあったものの、R18な展開は(当たり前ではあるが)一度もなかった。


 このころになると既に俺は姉への恋心ははっきりと自覚していた。しかし、それを口に出したことは一度もなかったし、態度にもなるべく出さないようにしていた。


 ちなみに、チャンネルは順調に伸び続けて、11月の末についに77万人を突破した。そして、お祝いの会を二人だけでしようという話になった。


 いつものように家で何かをするのかと思ったけれど「せっかくだしちょっといいところに行こう」という話になって、姉が週末にお店を予約してくれることになった。



___

(最終話は12月9日土曜日の12時前に投稿します)

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