第24話 一方その頃なafternoon (ヴィオリーチェ&ジャンside)

「クラウス、一体どうしたのかしら…」

「珍しいね…。先輩のあんな様子は…」


 クラウスがアルカを引っ張ってミラーハウスへと入って行ってしまった後、取り残された二人は呆気にとられたように呟いた。

 しかし、ミラーハウスの入り口に突っ立っていると他の客の邪魔になってしまう。ミラーハウスのスタッフに入るの?入らないの?と促され、二人も一緒にミラーハウスの入り口に押し込まれてしまった結果、結局二人一緒に鏡で囲まれた迷路を歩きながら、ぽつりぽつりと先ほどの会話の続きを再開する…ということになった。


「…まあ、あの人…口は悪いけど悪い人ではないし、そんなに心配しなくても大丈夫だと思うよ」


 心配げな様子のヴィオリーチェを宥めるジャンの言葉に、ヴィオリーチェは小さく頷く。


「…そうですわね…。前回も彼と貴方に助けて貰ったようなものですし…もうおかしな誤解をするつもりはありませんが…」


「それにしても、ヴィオリーチェとアルカ、短い間に随分と仲良しになったよね。アルカは元からヴィオリーチェに憧れてはいたみたいだし、凄く嬉しそうだけどさ」


「…そうかしら?…アルカ、落ちこぼれなんて言われてはいますけれど、向上心は強いですし、魔法の勉強にも熱心だから…ついつい手を貸してあげたくなってしまいますのよね…」


「あはは。確かに!猪突猛進と言うか、なんかいつも全力だから、助けになりたくなっちゃうのはわかる」


「そう言えば最初にあの子に魔法を教えてあげたのはジャンでしたわね」


「最初は元気な子が入学してきたなーなんて思っただけだったけど、いつの間にかペースを握られてた感じだよね。なんか振り回されちゃうけど、嫌じゃないんだよな」


 ジャンは笑う。つられたようにヴィオリーチェも微笑んでしまう。

 目の前の彼も、自分と同じように彼女のバイタリティ溢れる人柄に絆されてしまったのだと思うと親近感も沸いていた。


「ヴィオリーチェも前より笑うようになったよね」


 そんな言葉には思わず目を丸くしてしまうヴィオリーチェ。彼女自身にはあまり自覚はなかったようである。


「そうかしら?」


「そうだよ。…そりゃ、もともと愛想は良かったけどさ。心から笑ってる訳じゃなく見えたと言うか…なんか、壁がある?と言うか…」


「……!」


「あ、気のせいならごめんだけど!…まあ、だからさ、最近アルカといる時は、そう言う感じがなくて、素直に楽しそうに見えたから、良かったなぁって」


「……そう、ですわね…。アルカは、あの子は…考えてみたら、わたくしにとって初めて本音を話せる友達になれた子…でもあるのかも知れませんわね…」


「あはは。それを聞いたらきっとアルカも泣いて喜ぶよ」


「ふふ。そうかしら?」


「アルカはヴィオリーチェのこととなると本当に目の色が変わるからさ…。今回のことだって───────と、あんまり勝手に話したら怒るかも知れないから、俺が話したってのは内緒な?」


 ジャンの悪戯っ子のようなウインクに、ヴィオリーチェはもう一度柔らかく微笑んだ。




「ところでジャンは、クラウスとはどんなきっかけで仲良くなりましたの?」


 そんな風にさりげなくもしっかりと、情報収集も忘れないヴィオリーチェだった…!

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