第4話 実力

 俺は地上に降りた。

 ファーナがアシスト役として付いてくる。


譚斗たんとさま。レベル1300では何かあった時が大変ではないでしょうか?」


「いや。あまり高くすると警戒されるかもしれないからな」


 彼女の話では、このレベルの概念は地上でも同じらしい。戦闘時は必ずこのレベルを見て判断するそうだ。


 俺たちは蛙王国シタガエールに潜入した。

 フードを被って正体がバレないように歩く。

 すると、1人の少女が群衆に呼びかけていた。あ、少女とは言ったけど、二足歩行の蛙のことだからな。


「人族と仲良くするっぺぇよ。争いはよくねぇだ! みんな仲良くが理想的だケロぉ!」


 ほぉ。蛙人族の仲にも平和主義者がいるんだな。


 しかし、そんな彼女は蛙人の兵士たちに捉えられた。


「この反逆者め! 人族は奴隷にしてこき使うのが当たり前なんだよ!」


「離せしてケロォ!」


「牢屋に閉じ込めてやる」


 やれやれ。

 見過ごすわけにはいかんな。


「やめろ。嫌がってるだろうが」


「なんだ貴様は!? その顔。さては人族だな! 奴隷の分際で生意気な! 殺してくれる!!」


 兵士たちのレベルは200程度か。

 これなら余裕だな。


「「「 死ねぇ! 」」」


 俺は体を軽く動かして、兵士たちの槍を躱した。そして、裏拳を決める。


バシンッ!


 兵士たちは遥か彼方にぶっ飛んでいった。


「す、すごいケロ! 蛙兵士をぶっ倒しちゃったケロぉ!」


 しかし、安心するのも束の間。

 俺たちは更に多くの蛙兵士に囲まれた。


「貴様! 何者だ!?」

「レベル1300だと!? こんな人族がいるもんか!」

「正体を現せ!」


 やれやれ。


 俺はフードを外した。


「俺は竜人族の 譚斗たんとだ」


 兵士たちは騒つく。


「竜人族だと!? おい、蛙王さまを呼ぶぞ!!」


 兵士たちは一斉にゲコゲコと泣き始めた。


 まるで田んぼにいる蛙だな。


 すると、ヒューーーーっと何かがこちらに飛んで来る音がする。

 そして、


ドシィーーーーーーン!!


 なんだぁ?

 巨大な物体が着地したぞ。


 それは体長5メートルを超える蛙人だった。


 他の蛙人の3倍以上はあるだろうか。

 明らかに特別な感じだ。


「ゲコゲコ〜〜。俺様が蛙王ゲロゲーだゲコ! 竜人族は食っちまうゲコーー」


 レベルは825。


 明らかに兵士たちより強いな。

 しかし、俺の敵じゃない。


「俺のレベルが見えてるならわかるよな? 降伏しろ。命は助けてやる」


「ゲゲゲゲーー! 今の俺様が本当の力だと思ったら大間違いゲコ! プラスフロッグ、ゲコ!!」


 なに!? 

 ゲロゲーの体が輝いてるぞ!?

 プラスフロッグ。もしかて、プラスドラゴンの蛙版か!?


「国王になる者は、 譚斗たんと様同様、同種族のレベルを集めることができるのです」


 なるほどな。

 ゲロゲーのレベルは5万8000まで上昇していた。


「ゲコゲコゲコーーーー! これで貴様の勝ちは無くなったゲコーー! 大人しく俺様に食われるんだゲコーー!」


「あ、そうだ。おまえ、転移の書って知らないか? 持ってたら助かるんだけどさ?」


「今聞くタイミングゲコか? ぶっ殺すゲコよ」


 よぉし。

 なら俺もプラスドラゴンで、


 と、その時だった。


 ゲロゲーの拳が俺の全身を捉えた。


 早い!

 とても避けられない。


 拳はモロに命中。


グシャッ!


 俺の上半身は粉砕した。


「フハハーー! バカゲコ! 余裕ぶってるから現実を教えてやったゲコお!」

 

 そ、即死だ。

 痛みを感じる暇もなかったな。

 流石はレベル58000。とても太刀打ちできない。


譚斗たんとさまーーーー!!」


 不思議なことにファーナの叫び声がハッキリと聞こえた。即死しているというのにだ。魂で聴いているとでもいおうか? 不思議な感覚だった。


 俺は残った下半身だけで起き上がった。


 上半身が熱を帯びて白い煙を上げる。

 自己修復能力で回復しているのである。


「ど、どういうことだゲコ!? 殺したはずなのに!?」


 俺の眼前には光る玉が5つ浮かぶ。

 上半身が完全に修復されると、玉は1つ消滅した。


「お、王魂です!  譚斗たんとさまは王魂を5つも所持されていたんです!!」


 なるほどな。

 先代は確か3つだったっけ。

 俺は5つ持ってたのか。

 その1つを使って復活した。


 だから、絶命しなかったんだな。


「ゲコッ!! バカな!! 命を複数所持してるなんて!!」


「残念でしたね! 竜族は最強種なのです! その王となる 譚斗たんとさまも最強なのですよ! 降伏なさい! あなたに勝機はありません!」


「ゲコーー! だったら、後4回殺してやるゲコ!! そうすれば俺様の勝ちは確定するゲコーー!」


 再び、ゲロゲーの拳が俺を襲う。

 しかし、


バシィイッ!!


 俺はその拳を受け止めた。


「何ぃいい!? 片手で受け止めただとぉお!? 貴様のレベルは1300だったはずゲコ!?」


 しかし、俺の額に浮いていたのは6万の数字だった。


「ゲロゲロ! どうして、そんなに!?」


「修復と同時にプラスドラゴンでレベルを上げたのさ」


「ウグゥ! ま、まだ上がってるゲロォ!! 7万、は、8万……。きゅ、9万だとぉ!? どこまで上がるんゲロ!?」


 勝ち確の宣言をしてくれたのはファーナだった。


「アハハハ! 残念でしたね!  譚斗たんとさまのレベルは10万まで上がるのです! あなたに勝ち目はありません!!」


「じゅ、10万だとぉ!? ま、ま、まだ上がってるゲコよ!? じゅ、15万……。に、20万……」


「え!? そ、そんな!? ステージ1の限界は10万レベルが最高のはず!?」


 竜の力をさ。

 限界まで足してやるよ。


「ご、50万……。ろ、60万……。な、70万ゲコォオオオオ!? まだ上がってるゲコよぉおお!?」


「あ、有り得ません! これは明らかにステージ2の領域……。ハッ! もしかして、命を失ったからステージが開放されたということですか!?」


 つまりそういうことなんだろうな。

 ステージ開放の条件は命を失うこと。

 これが俺の限界レベルだ。


「ひゃ、ひゃ、100万レベル……。ゲコ」


「し、信じられません。先代でも到達しなかった100万レベル」


 俺は手刀を掲げて、そのまま軽く振り下ろした。



ズバァァァァアンッ!!



 ただの素振りは巨大な真空波となり、大地を切り裂いた。その攻撃はゲロゲーの体を僅かにズレていた。


「ゲ、ゲ、ゲゲゲ……。ゲコォ〜〜」


「どうする? 戦うか?」


「こ、降参するゲコォ」


 うむ。


「んじゃあ、今日から蛙王国シタガエールはドラゴモニアスの傘下だな!」


 よぉっし、楽しくなってきたぞぉ♪




 


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