第2話 村を征服した 


 魔王ディバルディアスとしての俺の人生は、まだ始まったばかりだ。

 まずは手始めに、フリンク村という村を征服することにする。

 この村は、周辺地域の魔物も弱く、村自体の戦力も低い。

 なので、子供の俺率いる魔王軍でも、楽々征服できると考えたのだ。


 なぜ、そんな村の戦力状況などを知っているのか、それは俺が『ファンタジック・コンクエスト』というゲームを骨の髄までやり込んでいたからだ。

 フリンク村は、主人公である勇者の視点からして、最初に攻略する村だった。

 ゲームで一番最初にクリアするようの村、つまりそれは、簡単に征服可能な場所ってことだ。

 まあ、魔王領からは少々離れていて、移動の便は悪いがな。


 魔王軍といっても、その戦力はまだまだ足りていない。

 だからいきなり強力な領地に攻め入っても、返り討ちにあうだけだ。

 どんな領地でも攻め落とせるほどの戦力があるなら、そもそも先代である父が世界征服しているわけだからな。

 人間側の領地も、まだまだ手ごわい。

 正直、今のところは人間側の領土と魔王軍側の領土で、半々といったところ。

 戦力は拮抗していた。


 だからこそ、正攻法でやってはいきなり世界征服などは無理だろう。

 本来のゲームでは、ゲーム開始時に魔王軍が8割征服完了している感じのスタートだ。

 俺が魔王として普通にやっていけば、ゲームの史実通り、だいたいそのくらいになるのだろう。

 だが、それだと不十分だ。


 人間側の領土が残っていれば、そこから勇者が生まれてしまう。

 そうなれば、俺はゲームのとおりに殺されてしまうだろう。

 だから、目標はあくまで世界征服。

 完全なる世界の掌握でなければならない。

 主人公の生まれる地点は、ランダムで、リプレイ性の高いゲームだから、どこか特定の地域を攻め滅ぼせばいいというわけでもない。


 目標は完全なる世界征服、それだけだ。

 そして、その足掛かりとなる第一歩が、このフリンク村というわけだ。

 フリンク村ならまず攻略しやすいだろうということで、俺はそこを選んだ。

 俺はいくつかのモンスターを引き連れて、フリンク村へ進軍する……!


「行け……! 人間どもを蹂躙せよ!」


 俺はモンスターたちに命令する。

 うちの魔王軍はホワイト企業だから、モンスターたちも喜んで手を貸してくれる。

 ホワイト化によって効率的になったうちの軍は、最強だった!

 人間を殺すことに、ためらいがないと言えば嘘になる。

 

 今は魔族の身でありながら、俺はもともとただのしがないサラリーマンだ。

 だけど、俺がこの世界で生き延びるためには、やはり世界征服しか道はないだろう。

 村を蹂躙していると、次第に罪悪感も薄れていった。

 それはやはり俺が悪逆非道の魔王だからだろうか。


 俺は、自分が生き残るためならいくらでも悪行に身を染めよう。

 だって、俺は魔王なのだから……!


「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 人間どもは果敢に向かってくるが、うちの魔王軍のほうが一枚上手だ。

 オークたちが村の男どもを蹂躙し、つるし上げる。

 そして前衛部隊は村長の家に押し入り、首領の首を獲る!


「よっしゃあああ! 村長撃破ああああ!」


 前衛部隊の隊長、オークのオルグレンが勝どきをあげる。

 『ファンタジック・コンクエスト』のゲームでは、ルールは単純明快。

 相手の領主の首をとった方が勝ちだった。

 どうやらこのゲーム世界でもそういう法律ルールらしい。

 村長の首がとられた瞬間、男たちは武器を捨てて降伏した。


 みな戦意を失ったようすだ。

 そうとなれば、こちらも無駄に殺すことはしない。

 まあ、人間も駒として使えるからな。

 すべての人間を殺してしまえば、この村を運営できなくなる。


 『ファンタジック・コンクエスト』の面白いところは、占領したあとの領地経営でもあるからな。

 今いる村人は、せいぜい奴隷扱いしてこきつかおう。


 さあて、首領である村長の首をとったということで、代表者との停戦協定が結ばれる。

 停戦協定のための会議がはじまった。

 内容はすぐにまとまった。

 村は俺に全面的な降伏をするのだという。

 これにて終戦、俺はフリンク村を征服し、手に入れた。


 さあて、こっからどうしようかな。

 ここからが『ファンタジック・コンクエスト』の面白いところなんだよな。

 征服した村をどう統治し、どう使うかはすべて俺の自由だ。


 魔王軍と違い、村の領地経営はホワイトにするつもりはない。

 人間からは搾れるだけ搾り取る!

 だが、働かせ過ぎて死なれたらそれはそれで意味がないからな。

 最大効率になるように、ブラック企業ぎりぎりをせめる。


「クックック。よし! まずは男どもは一日10時間の労働だ……! 鉱山でしっかり働いてもらうからな……!」


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