15話 ぷるるんが剣を鍛える!
「よし! 鍛冶するぞ!」
【剣闘市オールドナイン】の炉の前に座り、僕はまず【月光呪の白石】を取り出し触れる。すると
:月光呪の剣……【月光呪の白石(インゴット)】×4:
:月光伯の大剣……【月光呪の白石(インゴット)】×7 【白石の伯爵】×1:
:月光呪の戦斧……【月光呪の白石(インゴット)】×5 【血錆びた戦士の魂】×1:
:月光ナイフ……【月光呪の白石(インゴット)】×2:
「【月光呪の白石】以外にも必要な素材があるのか……ん、【白石の伯爵】は精錬しなくてもそのまま素材として使用できると……ふーむ」
とりあえず今作れるものから始めるか。
僕は【巨人の
すると2つの【月光呪の白石★☆☆】は縦に連結して四角柱になる。それからうっすらと光る線のようなものが現れ、それはナイフの形を
んん……謎だ。
あっ、こんなときはリスナーさんに聞くのがいいのかな!
まずは配信しないと。
「記録魔法————ぼくの瞳に思い出を」
:お、また鍛冶か?
:やっほー魔王ちゃん
:配信待ってたよ~
「みなさんこんばんは。今日は武器をつくります! で、今こんな感じです」
:説明がwww雑すぎるww
:何つくるん?
:使うインゴット量を見た感じ小さい武器か?
「あっ、はい。ナイフを作ろうかなって」
:ふーむ
:まずはインゴットを炉に入れて硬さを調整する
:そんで叩いてナイフの形に整える
:最良の形を目指すんだ魔王ちゃん!
:そういや冒険者の知り合いが言ってたけど、金属を一度打つ毎に
:あ、それ俺も聞いた。命値がゼロになるとマジで死ぬらしい
:なにそれこわw
:脱水症状とか過労死ってやつか?
:しばらく休めば、
「ふーむ。
その分、ぼくは300もあるので300回も打てる!
慎重に形を整えていくぞ~!
まずインゴットを炉に入れ、そして取り出すと……赤い光色を帯びる。温度のログなどが流れない、となるとインゴットの発色具合のみでどれほどの熱量がある状態なのか判断しなければならない。
これは扱うインゴットの特性を熟知してないとなかなか判断に困る。だが、僕はこのインゴットを何度も精錬したからだいたいの色味で、どれほどの熱量を持っているかわかった。
「この夕日色に似た状態は……炉の熱量は120度前後か。これはだいぶ柔らかい状態だな。ならばここは慎重に……」
背負った【巨人の
背?
僕はいざハンマーを振り下ろそうとして気付く。
あ、めちゃめちゃ【巨人の
なにせ車のタイヤ4つ分ほどの巨大さはある。や、確かにこれは巨人が使ってそうなハンマーだし、一番性能がいいから買ったけど……さすがに、いざこれで武器を鍛え打つって……難しい?
武器として振り回せばそれなりにリーチも長いというか……面での攻撃範囲は広くて有用そうだけど。
うーん……とにかく僕はカツンと軽くインゴットを叩いてみる。
ベキョリッッ!
「あっ……」
:インゴットが大きく基準線を超えました:
:【月光呪の白石】×2はロストしました:
「ええ……ぺちゃんこじゃんね……」
:魔王ちゃんwwwww
:まさかの不器用説ww
:いや待て。なんか滅茶苦茶でかいハンマーを振り下ろさなかったか?
:錯覚……ではなかったなw
◇
素材の喪失という痛い経験を味わった僕だけど、試行錯誤の末に鍛冶の腕を順調にあげてゆく。
3度目にもなれば【月光ナイフ】をしっかり作れるようになったので、今回は【月光ナイフ】より形を整える範囲が2倍も多い剣に挑戦だ。
4つの【月光呪の白石】インゴットを炉に入れれば、一本の延べ棒に変化する。
「まず初打ちは、範囲に定評のある【巨人の戦槌】でそっと、そっと——」
コツン、コツン、と繊細なガラス細工を扱うようにインゴットの形を大幅に整える。
試してみてわかったのは、【巨人の戦鎚】は広範囲を一気に変形させたい時に用いると良い。そう、
「だから【鉄のハンマー】に持ち替え、こちらも軽く、軽く——」
先ほどよりはやや強めに、だけども握る手にほとんど力を入れずに打つ。
どうしてここまで慎重に打たなくてはいけないのか。それは僕のステータス力に原因があった。
やはり力300の数値は桁違いっぽい。
【鍛造】の際はハンマーの持つ【鍛錬値】と、ステータス力によって金属の変形の度合いが大きく変わる。それに加えて炉の熱量も関係している。
ちなみにハンマーが持つ共鳴率とは、ジャストな形に近い打ち込みをすると一定の確率でドンピシャの形成を実現するという、ラッキーパンチ率って感じだ。
そして鉄を打つ度に
これだけチャンスがあれば整えられるさ。
:すっかり集中しきっている魔王ちゃん
:きっと配信してるなんて忘れてるぞ
:さっきからほぼ無言か独り言だもんなw
:す、すげえ……
:何がだよ
:魔王ちゃんが鉄を打つたびに……ぷるるるるるんって
:ああ。まさに国宝だよなぷるるん
:すごい、今度は激しいぞ! 小刻みに揺れてる!
:くううううう、魔王ちゃんが刻んでくるううううう
:まじで無言配信でも一生見てられるわ
:なんか俺の聖剣が硬くなってきた
:まさかこんなにやわらかいプリンプリンで硬い剣を作り出すなんてな
:俺たちの聖剣が元気だぜ
:魔王ちゃんによって、いったい何本の聖剣が鍛えられたか……
:これが見るASMRか
:やばい迫力だな(胸が)
:いや待て待て。普通に剣の方も見てみろよ
:なんかやばくね?
「ふううううー……できたかな」
そうして僕は出来上がった剣を誇らしく掲げる。
白く透き通る刃先は不気味に光り、その鋭さを如実に語っている。名前に月光を冠す剣は、静かな光を帯び、確かに何かを魅了する呪いの類が込められているような気がした。
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【月光呪の剣 ★★☆】〈レア度:U〉
〈タイプ:片手剣〉
〈必要ステータス:力6
〈ステータス補正:力+5
〈★……力+1〉
〈★★……【
天候:月夜の場合、斬りつけた対象に【白染め】を付与する。
【白染め】……1分間、対象が発動する
〈★★★……
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「これは……なかなか面白い武器……?」
思わず口元がゆるんでしまう。
初めて剣を作ったにしてはなかなかの快挙を為し遂げたと思うし、自分で作ったっていうのが妙な達成感と愛着がわく。
というのも★2の出来栄えは初だったからだ。
【月光ナイフ】作りでインゴットの柔さをだいたい把握できたからってのもあるだろうけど、剣を作るときはインゴットもできるだけいい物にしたくて★2インゴットを素材に使っていた。
その辺も関係しているのかもしれない。
「状態異常【白染め】の付与か……これって重複するから、二刀流とかで何回も切りつけたら、相手の攻撃
天候:月夜でないと発動しない効果とはいえ、なかなかにいい効果だと思う。
さて、そうとなれば★3武器を作って、
僕は気合を入れて巨大なハンマーを握りしめた。
◇
※現在 最強クラスの片手剣
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【ゴブリン
〈タイプ:片手剣〉
〈必要ステータス:力8〉
〈ステータス補正:力+5 命値+1〉
※ドロップ品なので★なし
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