第2話 白銀の狼との初邂逅

「はぁはぁ……ようやく出れ…………」


始まりの森から脱出しようと光のあった方へと走り、そこで見つけたのは白銀の毛を持ち身体中には謎の黒い紋様が刻み込まれた、堂々とそこに鎮座している1匹の巨大な狼


ユニークボス【白銀のフェンリル】であった。


「なに…あれ?絶対今の私が会っちゃダメなやつだよね?」


そんな事を言いながらもユニは、物陰にからその巨大な狼を凝視した。


白銀の狼LV285


「にひゃ……!?」


あまりのレベルの高さに大きな声が出そうになった所を、ユニは口を手で押さえる事で大声を出さずに済んだ。


「な、なにあのレベル?私が始める前に調べた感じだったら、プレイヤーの最高レベルって確かLV100が最高だったはずなんだけど……LV285?な、何でそんなバケモノが始まりの街の近くにいるの?もしかしてバグ?」


ユニは絶対にバレない様にしようと心に決め、立ち上がった瞬間背後からスライムのたいあたりをくらい、白銀の狼の目の前に転がり出た。


「痛った!ちょっと何するのよ!…………あっ」


大声でスライムの方へと向き文句を言った所で、ようやく今自分がどこにいるかを思い出し、ゆっくりと白銀の狼がいた方へと向き直った。


すると先程までは静かに鎮座していた白銀の狼は立ち上がり、体から何故かバチバチと雷を発生させコチラをじっと見つめていた。


「あ、あの違うんです!わ、私はバレない様に帰ろうとして、そしたらアイツに後ろから押されたんです!」


そう言ってユニは先程まで自分が隠れていた、そして今は自分を背後から押してくれたスライムがいる場所を指を指した。


すると次の瞬間そのユニが指を指した所に巨大な雷が大きな音を立てて降り注いだ。

そして雷が落ちた所にあった草木は黒焦げになり、スライムは跡形もなく消し飛んでいた。


その様子を間近で見ていたユニは一瞬で全身に鳥肌がたち、今すぐにでもこの場所を白銀の狼から離れなければならないと思い、勢いよく立ち上がると来た道を全速力で叫びながら走り出した。


「いやぁァァァァー!!!」


すると後方から先程よりも大きな雷が何度か落ちると、コチラへと何かが走って追いかけてくる足音が聞こえた。


「誰か助けて!!!」


そう叫びながら逃げていると、その声を聞いたのかたまたま近くに居たのか、数人の全身完全装備したプレイヤーが数人ユニの目の前に現れた。


「大丈夫か?その装備からして君初心者だよね?」

「は、はい」

「わかった!ならここは俺らに任せて君は逃げても大丈夫だよ!」

「で、でも……」

「大丈夫大丈夫!俺たちこれでもLV30はあるから!」

「そうよ、それに私達も始めたばかりの時は助けて貰った事もあるから任せなさい」

「あ、ありがとうございます!」


そう言ってユニは心優しきプレイヤー達を置いて逃げ出した。

そして背後からは、「な、何だこいつうわぁ!」「私の魔法が効かない!?」などの先程の心優しきプレイヤー達の断末魔が聞こえて来た。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」


その後も何度か心優しきプレイヤー達が無惨にも散って行き、ユニはその度涙ながらに謝罪をした。


だがそれもここまでだ。


「い、行き止まり……」


そう、ユニは結局のところ始まりの街に戻る事は叶わず、周りが崖に囲まれて袋小路に追い詰められたのであった。


「ど、どうしよう……これって絶対絶滅?」


そんな事を言いながら振り返るとそこには、グルルルルルと喉を鳴らしてコチラを睨む白銀の狼が、身体から雷を轟かせながら佇んでいた。


「そ、そうだ!ログアウト!ログアウトすれば……」


そう言ってユニは急いでメニューを開き、ログアウトボタンを押すが、[現在戦闘中な為ログアウト出来ません]というメッセージが出て来た。


「やっぱりダメか……こ、こうなったら!今まで私の為に散っていった、心優しきプレイヤー達にも報いる為に、私は今ここで白銀のおまえを倒す!喰らえさっき覚えたばっかりの、必殺ファイヤーボール!!!」


ユニの突き出した魔導書から、球体状のメラメラと燃え盛る炎の塊を、白銀の狼の方向へと勢いよく射出した。

ユニのファイヤーボールは轟々と暑苦しい音を鳴らしながら白銀の狼にぶつかった。


「やった!」


自分の攻撃が白銀の狼にぶつかった事に喜びの声を上げた次の瞬間には、今までに聞いたことのない様な大きな音と同時に目の前が真っ白になった。


「へ?し、死んだ?あれ?何で?どうして?ま、まぁいいかリスポーンしよ」


ユニの攻撃が当たったのと同時に何故か死んだ事に疑問を持ちながらも、まぁあんなに強いモンスターならそんなもんだろうと勝手に納得して、クエスト完了した事を報告する為にユニは始まりの街にリスポーンした。


だがユニの不幸はこれだけでは終わらなかった。


「な、な、な、なにこれ!!!!!」


リスポーンしたユニの右腕には白銀の狼の体にあった謎の黒い紋様と同じものが付いていた。


「刺青みたいで嫌なんだだけど……これ取れないの?」


そう言ってユニは謎の紋様を取ろうとメニューから自分のステータス画面を開いた。


【ユニ】

基礎LV.2

職業〈魔術師〉LV2

種族〈エルフ〉

HP 41/82

MP 64/128

STR:5

INT:18

VIT:7

AGI:13

DEX:12

装備:初心者用の魔導書 初心者用の魔術師のローブ 小さなアイテムポーチ

スキル:炎魔法LV3 聖魔法LV1 回復法LV1 採取LV2 白銀の狼のマーキングLV EX

所持金372G

満腹度0%


「白銀の狼の呪LV EX!?何これ?どういう事?私こんなスキル取った覚え無いんだけど!と言うか何この効果」


・白銀の狼の呪

:白銀の狼との戦闘時白銀の狼に対して物理攻撃力と魔法攻撃力を上げる代わりに、白銀の狼から狙われやすくなる

:白銀の狼とのランダムエンカウント率がUPする

※このスキルは白銀の狼を討伐するまで解除不能


「て事はこの変なマーク取れないの?最悪なんだけど……。手を隠せる防具とかってあるかな?」


腕の紋様が恥ずかしく魔術師のローブで腕を隠しながらギルドへと向かって、クエスト完了した事を受付さんに伝えて、その日は色々あった事で疲れたのか眠気がしたので、そのままギルド内でユニはログアウトした。




ファンタジーオブニューワールドからログアウトした結衣は、VRギアを頭から取り外し時計を見ると23時を指しており、大体4時間ほどぶっ通しでプレイしていたことがわかった。


「ん〜!!疲れたぁ……」


そう結衣が呟くとそれと同時に、くぅ〜と可愛らしくお腹が鳴った。

そういえばファンタジーオブニューワールドに夢中で忘れていたが、晩御飯を食べていなかった事を思い出したので、そのままの足で台所へと向かうと晩御飯の残りをレンジで温め直して、その後はお腹いっぱいになるまでご飯を食べた結衣は、そのまま部屋へと戻るとその日は眠りについた。

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