第5話厭な酔人

彼は3杯目を飲んだ。しかも、焼酎の水割りを。

彼女はびっくりして、

「先輩、成長しましたね。3杯目に焼酎飲むなんて」

「えっ、これかい?もう、今夜はとことん酔っちゃおうと思って。自宅は同じ方向だから、タクシー使えばいいさ。今夜は飲むぞ!」

彼女は、ハイボールの4杯目をごくごく飲んでいる。そして、

「先輩、話し戻しますが、わたしとお付き合いしてもらえませんか?」

彼は、カエルの小骨をツマミながら、

「ダメダメ、こんなオッサン相手にしちゃ。会社には、もっといい男いるだろ?僕なんか、デブだし酒は弱ぇ~し。ちょっと、獣の匂いがするんだよ!君が僕の彼女になる確率は天文学的数値だよ!」

彼女は、5杯はテキーラをショットで飲んでいた。

「先輩の匂い好きですよ!ちょっと、タバコの匂いがして。それに、臭くないし。やっぱり、統合失調症の女の子は嫌いですか?」

彼は、ちょっと胃から酸っぱいものご込み上げるのを我慢し、

「そ、そんな訳ではない。ただ、君の彼氏にはなれないよ!」

彼女はしゅんとした。


「じぁあ、取り敢えず飲み仲間になろうか?そして、お互いを知り尽くした後に、付き合うか、どうか?決めよう」

彼女は生気を取り戻し、

「はいっ!」

「ウップ、と、トイレ行ってくる」

彼はトイレで盛大にリバースした。指を喉に突っ込み、胃の中を空っぽにした。

トイレから戻った彼は、ハァハァ言っていた。

「先輩、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫!案ずるな!」

「涙、出てますよ」

「あ、欠伸だよ」

「今夜は、先輩の家にお邪魔していいですか?」

「うん、いいよ。……な、何ですって?ダメダメ」

彼女はテキーラをもう一杯ぐいっと飲み干し、

「泥酔した、先輩が心配ですので、家に先輩が着いたのを確認したら帰ります」

「……ウップ、と、トイレ!」

彼は酎ハイ2杯と、焼酎水割り1杯で死にそうになった。

お会計の際、彼女が支払おうとすると、手で遮り、彼が全額支払った。

「先輩、今夜はご馳走様でした」

「楽しかったよ!」

「まだ、二次会があります」

「えっ?飲むの?」

「先輩は、ソフトドリンクでいいです。わたしはストゼロ飲みますんで」

「君は僕が家にたどり着くのを確認するだけじゃないのか?」

「ま、細かいことは気にしないで下さい」

2人はコンビニへ寄り、タクシーで彼のマンションに向かった。

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