第29話

大量の数列を前にして、必要なのは、コンピューターでも高度なプログラミング知識でもない。方眼紙とボールペン、そして根気だ。


まず、私は文字通り、数字たちと格闘を始めた。一旦、SとかPとかの意味不明な記号は無視して、方眼紙を用いて簡単なグラフを作ることにする。


どうやら用紙は順序があるようで、右上に通し番号が打ってあることに気づいた。一番若い数字がNo.1、最後がNo.4082。最初は素直に、No.1から作業を始める。


目盛りは等間隔に、0・05・10・15・20・25・30・35・40だ。これは、縦の軸(つまり、Y座標)になる。さて、言うまでもなく、横の軸(つまり、X軸)の値が決まらないと、グラフは書くことが出来ない。座標平面上での、位置が確定しないからだ。


しかし、困ったことに、紙には、数字と矢印しか記載がない。仕方なく、X軸は仮置きで進める。今回は、適当な間隔を設けて、それを所与しょよの条件とした。


机の隅には、続々と方眼紙の束が積みあがった。まずは、No.1から10枚、方眼紙上の点に置き換えて、それらを線で結ぶ。これでグラフの出来上がりだ。


今度は、それを横一列に並べる。場所を取るので、私のささやかな書斎では無理だ。仕方なくリビングに移動して、方眼紙を順番通りに並べる。紙は場所を取るが、一覧性に優れる。その利点を生かすことにする。


何らかのルールがあるならば、たとえ一部を抜粋したとしても、その片鱗は見えてくるはずだ...と思う。


しかし、長大な折れ線グラフは、仔細に観察しても、別段浮かぶアイディアはないし、遠目で見ると、単なる山と谷にしか見えない。


念のため、№100からの10枚も同じように、作業をしてみる。しかし、状況はまったく変わらなかった。


やっぱり、何か見落としがあるとしか思えない。そう考えた私は、一旦作業を中断した。作戦の練り直しが必要なのは、明白だった。

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