閑話✤1:2.5次元俳優、風呂に入る

 この世界に来て2日目の夜、羅楠は風呂を試すことにした。

 異世界物だとタライに湯を張り、体をふいたりするのが定石だ。

 大き目のタライであれば【イベントリ】の中にある中にある。

 これは洗濯用程度の大きさなのかなと確認しようと各種サイズを1個ずつ取り出してみた。

 すると、タライ特大は角型120Lで深さもありほぼ風呂サイズ、大は深さもある丸型75Lでよくおばあちゃんちで野菜が入ってるやつだ。

 中が丸型20Lでよく洗濯物で使うサイズ、小は10L、極小が風呂桶くらいのサイズだった。

 洗濯板は羅楠の服を洗うには丁度いい大きさで、しかも全部木製で出来ている。

 ちなみに二人用のお風呂タライは陶器製なのだが、4人用では?と思うくらい大きかったのでタライに決めたという訳だ。


「たしかギザギザは滑り止めだったっけ。汚れ落とし石鹸とか衣類用洗剤を混ぜてせっけん水を作ってから洗うんだったな」


 その辺は生活魔法で水を出せばいいし、使った後は浄化の魔法で水を綺麗にしてから捨てればいい。

 【洗浄】魔法はあれども、気分的に下着と肌着は洗って干したい羅楠であった。




「さてと。特大タライに生活魔法を掛け合わせて42度のお湯をだしてっと」

 

 1m四方のブルーシートを出し、その横にタライを置き、ドボボボボ!とお湯を出した。

 タライ極小を二つだし、一つを椅子替わりにした。

 ざばっとタライでお湯を救い、体に掛ける。


「ふあー。お湯気持ちいいなぁ」


 それからイベントリからシャンプー、リンス、ラベンダーのハーブ石鹸を取り出し、頭のてっぺんからつま先まで一気に洗い上げた。


「お風呂セット、アヒル隊長いるのずるいよなぁ」


 お風呂セットの中身はよくスパに行くときのメッシュ加工された小さなバッグ、それと手ぬぐいとアヒルの人形だった。

 ナイロン製のボディウォッシュタオルではないんだな、と羅楠は思う。

 あれもあれで好みが分かれるし、たまに洗い上りが痛かったりするので手ぬぐいなのは有難かった。


「ふい~」


 ゴクラクゴクラク、と鼻歌を歌いながら羅楠は上を見た。

 いつの間にか日は落ち、満点の星が瞬いている。


「異世界だと風呂問題があるけれど、これはこれでいい。それに、この解放感、クセになりそう」


 森の中、だだっぴろい居場所で一人、羅楠は風呂を堪能するのであった。


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