スライム共



「ほんとーに猫耳だねぇ」

「あんま、触んなよ。くすぐったい」

「だってぇ」


ロビーから美子と俺は一層を散歩していた


「しっかし有名人になっちゃったね。ロビーで叫ばなければ気付かれ無かったかもなのに」

「仕方ないだろ……こんな事初めてだから」


そう、ロビーで驚きのあまり声を上げた結果

その場に居たほとんどの人が俺の方を見た。

猫耳もだ、だからロビーにいたほとんどの人は猫耳のプレイヤーがログインしてる事を知っている


「このダンジョン的にも史上初らしいよ。他のダンジョンだったらたまーにありえるらしいけど」

「んな事は分かってる」


問題は猫耳がメリットになるかデメリットに

なるかである。もしかしたら猫みたいなジャンプ力を得られるかもしれないし、デメリットだったら……眠くなるとかか?


「でもロビーの人達が優しくて良かったねぇ

直ぐに運営に連絡してくれたし」

「しないで欲しかったんだがな出来れば」


さっきから美子は大きな足取りで剣を片手に歩いているが、まさかコイツわくわくしていないかもしや


「なあ美子」

「なに?耳触らせてくれるの?」

「お前……もしかしてわくわくしてないか?」

「うぐっ!」


途端、目を丸くした美子を見て俺はビンゴと

思った。まあそうだろうな、逆の立場だったら俺もそうなるし


「まあ耳触らなきゃ別に良いけどさ」

「え……マジ?」

「マジだよ」


また、俺の耳に手を伸ばそうとした美子に

釘を刺す様に言うと美子はかなりそれがショックだったらしく腕をだらんと下に向け、しょげてしまった


そんな美子を慰めもせず、歩いている俺

の前に現れたのは


「スライム……か」


ゲル状モンスターのスライム、ここの中で最弱の生物だ。と、言ってもそれはそこそこレベルが高くなってからの話


「ほっとく……のあぁああ?!」

突如、顔を塞ぐ冷たい何か。これはまさか


「ス、スライムが顔に?!気づかなかった」

「それはお前がしょげてるから……だろが!離れろ雑魚!!!」


すぐさま、俺はスライムを引き剥がし、地面に叩きつけた。びっくりしたのかスライムは

風の如く消えていった


「倒せば良かったのに……」

「あんな雑魚、倒したとこで大した経験値も

得られんわ!さっさと行くぞ!もう」

「でもほら」


美子が指さす方にまた三匹のスライムがぴょんぴょん跳ねていた。今度は油断しないで剣を構え……スライムに襲いかかった


「あ!早い!!スライムの癖に!」

しかし、振り下ろした刃は空を切りすぐさま後ろから俺の頭に飛びかかったスライム


「やめ……やめろ!美子、助けてくれ!」

「はいはいな」


思わず美子に助けを求めると、すぐさま美子はスライムを顔から除けてくれた


解放されて、ふぅと俺はため息をついた


「ど、どうしてあんなにスライムが早いんだ?いつもは一撃なのに」

「それは多分……耳のせいだと思う」

「猫耳で?!」

「うん」


またしても俺の耳に伸ばした手をばしりと

払い除けた


「スライムだって私と同じ、その耳が好きなんだよ。ふわふわなその耳がね」

「迷惑な話だ、それでスピードupか!」


奴らスライムには初心者特攻という謎の

システムがある。ダンジョンでのレベルが

2以下の場合、一定確率でスピードとパワーが10倍に跳ね上がるのだ。しかし、さっきの

スピードは10倍どころじゃ無い、ざっと50倍だ


「困ったねぇ……次にスライムが大量に出現したらどうにか出来るかな」

「やめろ、縁起でもねぇ」


まさかな……と思って俺は目の前を見た。そこにはなんと


「スライムがこんなにいっぱい!?」

「ね、猫耳パワーここまで!?」


一層をワープゾーンまで埋めつくしたスライム、恐らく数万匹。なんという事でしょう


だが、怯む事は無い。俺は剣を構えて叫ぶ


「上等じゃねぇか……そんなに猫耳が好きなら命賭けてかかってこいや!おらぁ!」


その数万匹の海を船を漕ぐオールの様に剣だけを頼りに進んで行く!斬って、斬って、斬りまくる


「美子!ぼさっとしてないで手伝えや!お前もやられちまうぞ!」

「あ、ああそうだ!猫耳は……私だけのもの!!」


美子も魔法で応戦する、て言うか他のプレイヤーはこんな時に何してんだ!やめ

飛びつくなあああ!おらああ!!!


>すうじかんご


流石に息も乱れて来た。しかし、残りはあと

数百匹、これを乗り切れば


「って!嘘だろぉ!?」


な、な、何と目の前のスライム達は突如一つの巨大な塊となり、俺たちの前に立ち塞がった

有り得ない、都市伝説だってこんな事書いてなかった。ここのスライムがまさか合体するなんて


「だが、所詮は雑魚……行くぞ美子!」

「え〜もう諦めた方がいいんじゃん?」

「やるの!耳触らせてやるから!」

「ふぉ!!やりますぅ!」


果たして結果は如何に……?









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