第40話 ストレッチパワーは鉄骨を消して、
「ふぃー、なんてモン持ってやがる。学生が扱っていいもんじゃないだろそれ、免許持ってんのか?」
三宅さん、いや、三宅さん『らしきもの』が、額の汗を拭った。
「とはいえ、ついに俺は、生身の肉体を手に入れたぞ! ギャハハ!」
「み、三宅さんがおかしくなっちゃいました……」
わかが、笑い狂う三宅さんの姿に怯えている。
「憑依されてるんだ」
国木田さんが臍を噛んだ。
「まずいね、三宅さんにビームを打つわけにはいかない。まるで人質……」
三宅さんに取り憑いた体育の神は、軽く四肢を振ると、
「さて、久しぶりの体だし、少しストレッチするか」
と、僕たちなど眼中にないように、ゆっくりカウントしながら、体側を伸ばし始めた。
「いーち! にー! さんー! しー! ごぉーー!」
僕たちが呆気に取られてそれを眺めるなか。
体育の神は立位に戻り、柔軟した箇所を僕たちに指し示す。
「ほら、ここに、ストレッチパワーが溜まってきただろう」
「……いや知らないですけど」
「ストレッチビームッ!」
彼女が体側を前に突き出した。
すると、そこから黄色い光線が飛び出して旧校舎へ飛んでいき、最上階の角を、まるでパンチで穴を開けたかのように、ぽっかりと消滅させた。
鉄筋コンクリート造の大質量が、一瞬にして灰燼に帰したのだ。
そこにいる全員が、唖然と言葉もなく、その惨状を見上げる。
「風通しが良くなったね……」
国木田さんの呟きに、全員が口を開けたまま振り返った。
この人、ピンチになったら冗談を言わないと気が済まないんだろうか……
「うーん、良い具合だぁ」
体育の神はさらにグッグッと手足を伸ばすと、
「小手調べに、まずはこの学校という恨めしい施設を完膚なきまでに叩き潰すかな」
と言って、グラウンドに敷かれたトラックを走り始めた。
「どどどど、どうしましょう!ストレッチであの威力なのに、運動とか絶対ヤバいです! どど、どうにか止めないと!」
わかが国木田さんに取りすがって叫ぶ。
半狂乱である。
「つっても、まずあの体から霊を剥がさねぇと、こっちは何もできねぇぞ?どうすんだべ」
地面に直接あぐらをかいた姫が、頬杖ついてぼやく。
柳女さんはその隣で土下座の姿勢をとっていた。すでに助命の方向に舵を切っているらしい。
「塩は?」
僕はダメ元で提案してみた。
が、
「スポドリで進化するような奴だよ。効かないどころか、強くなるかも」
国木田さんに冷静に一蹴される。
「うわぁん!」
わかの泣き言が木霊した。
「この世界はもうおしまいですー!」
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