第7話 子役デビュー
私の役はピアニストのヒロインである一条
母に連れられてキャストとの打ち合わせこと美打ちに来た。
有名女優や俳優が沢山の中でど素人の私。滅茶苦茶浮いているじゃありませんか!!
気後れしていたら喰われる!背をシャンと伸ばして
「おはようございます!」
皆さんに挨拶する。
私を微笑ましく見る人や鬱陶しそうに見る人、無関心な人と様々だ。
私と母は指定された席に座る。
30分ほどすると全員が揃ったので、台本が配られる。
「ーーーーヒロイン一条
監督らしき人の紹介に
「北条瑠璃です。一生懸命役を
女優の北条瑠璃が挨拶した。
「ヒーロー役、金沢
「金沢
着々と挨拶がされる中で
「一条
私の番が来たので
「
ペコっと頭を下げる。
私の挨拶に何故か室内がシーンとした。
小さな声で
「あれで幼稚園児って年齢詐称してないか?どんな教育だよ」
と聞こえてきた。
まあ、子供っぽくないよね。中身ババアだからなぁ。第一印象大事!
こうして
子供の容姿をフル活用して全力で媚を売ったぞ!主演女優の北条瑠璃さんとは仲良くなれた。
シュタイヤー舞曲を隣で弾いてもらいスキル模倣で私も弾いてみた。感情移入が出来てないのでシュタイヤー舞曲の深堀をしていかなくてはならない。
私が初見でシュタイヤー舞曲を弾いたことでピアノ講師は喜んでいたが、映画で表現力がどこまで出来るかにかかっているのではないだろうか?
こうして曲の解釈を自分なりにして、表現をどうするか深堀して撮影に臨むのだった。
撮影当日、私は多少の緊張をしつつ撮影現場に母と一緒にやってきた。
「今日は宜しくお願いします。」
監督に始まり、共演する俳優、女優の皆さんやADの方達にもきちんと挨拶をする。
第一印象が大事だからね!
「
父親役の
「ばっちりです!
ニコニコと笑顔ではきはきと答える。
今日撮るシーンは父親役の
私は指示された立ち位置に付き合図を待つ。
合図が出た瞬間、私は一条
ピアニストの父親が大好きな幼い一条
「お父さん、今日は何処に連れて行ってくれるの?」
興味津々と父親の瞳をキラキラした
「そうだね、今日は山下公園に行こうか!」
「山下公園大好きっ!
父親は
「じゃあ、お父さんと一緒に滑るかい?」
悪戯っ子のような問い掛けをする。
「お父さんが抱っこして滑ってくれるなら良いよ。」
ちょっとおませな感じでおねだりする
「ああ勿論だよ。公園まで歌でも歌おうか?」
笑顔を浮かべて提案した。
「じゃあ、ミラクルみみちゃんの歌が良いなぁ~」
ふんふんと歌い出した
そんな幸せも続かず通り魔が
「
通り魔は父親を刺し、慌てて逃げだした。倒れた父親に呆然とする
「いやあああああ、お父さん!お父さん!」
真っ赤に染まる大地。横たわる父の姿に錯乱する
周囲から悲鳴が聞こえる。
「ああ、
彷徨う父の手を握り
「私は無事だよ、お父さん。血がいっぱい出てる。どうしたら良い?どうしよう…」
半場パニックになる
救急車のサイレンが遠くから聞こえる。
「お前が無事ならそれで…泣かないでおくれ。
「いつでも、何度でもお父さんのために弾くからっ」
ボロボロと泣く
「
父親は
「
安心させるように笑った。
「…
くしゃくしゃな笑顔を浮かべた。
「寝ないでお父さん!」
到着した救急隊員に父親から引き離された
しかし父親が目を覚ますことはなかった。
「カット!!」
監督の声に私は涙を拭った。
「
救急車の中にいる
「
「本当ですよー映像チェック一緒に行きましょ」
初心者だと言えば胡散臭そうな
「
絶賛してくれた。
「それは良かったです。監督が寄越してくれた演技指導者のお陰ですね。」
一発OKで良かったよ。NGを出し続ければどうなることやら…
こうして私のシーンを何回か撮ってその日の撮影は終了した。
後に『満月の珊瑚』を手掛けた
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