勇者のおまけで異世界召喚された俺は、勇者よりも強くなってこの世界に復讐する

吹雪く吹雪

第1話 異世界

《異世界転移》


 それは突然異なる世界に飛ばされる現象。


 異世界なんて存在しないフィクション、空想のものであると誰もがそう思っている。


 2年前までは俺もそう思っていた。


 そう2年前のあの日、

 あの出来事が起こるまでは...。




 それは高校1年生、春の終わり。

 部活終わりにいつもと同じ帰り道を幼馴染みの千夏と一緒に歩いている最中だった。


 千夏が長い髪をなびかせながらこちらに振り返る。夕日に照らされた千夏の横顔は息を呑むほど美しかった。

俺は一瞬見惚れてしまったが、慌てて首を振って誤魔化す。だが、千夏は俺の動揺を見透かしたかのように小さく微笑んだ。


 そして、千夏が俺に向けて何かを言うために口を開けた瞬間、それは起きた。


 突然、隣にいた千夏を中心として円状に足元が光だし俺たちはそれに呑まれた。


千夏の顔は驚愕に染まり、その瞳には恐怖の色が見える。


 俺は千夏を安心させようと距離を縮める。


だが、それがいけなかったのか更に光が強くなり、視界が全て白で埋め尽くされると同時に頭の中に文字が流れてくる。


─────────────────────

《異世界召喚》


 異なる世界のスキルを持つ者を呼び出す魔法


 対象者のスキルを確認

 →スキルの反応なし


 結果 : 失敗

 ─────────────────────



 これは一体?

 異世界...召喚...魔法...スキル...失敗って?


 突然流れ込む文字の羅列を読み取ろうとするが一瞬で消えていく。短時間で単語を拾い要点を整理したが今の短期間の出来事に対して記憶に靄がかかりもう殆ど思い出せなくなっている。


 必死に思い出そうとするが頭がズキズキして、これ以上考えられない。


 俺が考えを放棄するのと同時に千夏の身体が眩い光を放つ。


 千夏を掴まなければ!


 直感でそう感じた俺は咄嵯に手を伸ばして彼女を引き寄せようとする。


 しかし、遅かった。


 俺の手は僅かに届かず、何も掴めず空を切る。俺が千夏に触れることはなく、光り出した千夏は光の粒となり、最後には眩い閃光をあげ突如として俺の目の前から姿を消した。


 何が起きたのか理解できず、思考が纏まらなかった。


呆然と立ち尽くすことしかできない俺だったが、次第に足元の光が収まるにつれ、現実を直視しなければならなくなった。



 たった数分で千夏は跡形もなく消えた。


 ありえないが目の前でそれが起こった。俺は僅かな希望を見出す為に辺りを見渡して千夏や千夏を探す手がかりを探した。しかし、何も見つからなかった。


 千夏は消え、俺は何故かその場に残った。


 あの文字が正しければ千夏は異世界に飛ばされたのか? それじゃあ、もう会えないのか?

俺は千夏が異世界に飛ばされるのを防げなかった?


 頭の中がぐちゃぐちゃになり頭がおかしくなりそうだ。


 どう整理をしても非現実的な現象によって千夏が消えた。その事実に辿り着く。


 そして認識した途端、恐怖や後悔で胸が一杯になり涙が出そうになる。


ただ今やるのは泣くことじゃない。


泣きそうになるのをぐっと堪えて、俺は状況を整理し、自分ではどうすることもできないと判断して帰宅した。



 帰宅後すぐに千夏が消えた瞬間のことを家族や千夏の親に話した。しかし、非現実過ぎる内容だったため、俺がショックを受け混乱しているものだと思われて誰にも信じてもらえなかった。


 結果、大人達は俺の言葉を一切聞き入れることはなく誘拐事件として千夏を探し始めた。


 当然、千夏が見つかることはなかった。


それからずるずると捜索は続いているが現状は変わらない。


 だがら、俺は1人で千夏が消えてからずっとあの現象について考え調べ始めた。


手がかりは頭の中に流れ込んできた異世界召喚とスキルという文字。これを頼りに俺は異世界について調べた。ラノベ、漫画、聖書、Wiki、他にも同様の事件があったかどうかなど沢山読んだ。でも結局、何処からも優良な情報は得られなかった。


 もう千夏は戻らないと俺は強くそう感じた。


 それから俺の日常は変わることなく、千夏を返してくれと、強く願っても、何も起こらず二年という月日が経ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る